#11 「空席」
あたしの名前は、風乃庵。志狼の幼馴染だ……
私の1日は山路家へ朝必ず行って
両目を失明している幼馴染を起こし一階にまで着かせることができたら、
路家を出て学校へ向かうところから始まる。
庵ちゃん、いつもありがとうね・・・
いいえ、それでは行ってきます
ただの幼馴染は、そこまでしないって
よく女友達に言われるけど果たしてそうかな・・・・?
原因はわからないけど小さな時から志狼が失明していたことは
知っていたし、いまも志狼と一緒にいる時間を
“つまらない“なんて思ったことは1度もない。
おはようー庵
おはよー
教室へ着くと、友達と昨日みたTVの話や恋バナの話が始まる。
私の番になると必ず幼馴染の志狼の話題になる。
庵は、ぜっっったい・・・
山路くんのことが好きだよねー?
ええーどうかな・・・?
好きじゃなかったら、毎日家に通わないってーー
それは、起こすためよ!
体が不自由なんだから・・・
本当にそれだけかな・・・・?
からかわないでよー
先生が来るまでの間、
みんなで他愛のない話に花を咲かせていると問題児のあの子がやってきた・・・。
みんなーーーーおっはよーーーーーー
土御門しゆり・・・・・彼女は、この学園の問題児として知られている。
いつも窓際の空席について話題に触れる・・・・
このクラスには、ほかのクラスにない“空席”が1つある。
それは・・・本来なら・・・・このクラスに新入生となり来るはずの予定だった
山路志狼の席だ。みんな、空気を読んでその席には触れないのに
土御門だけは違った・・・。いつもその席の机のなかに、何かいれたり
クラスのなかでもトラブルメーカーとして知られていた。
山路・・・どんな子なのかしらーーーー?
一度会ってみたいわーーー!!
土御門さん、静かにしてください
このクラスで1番モテる、男子生徒が忠告をしても
志狼の席に立ったり勝手に座ったり・・・みんな、うんざりしていた。
せきにつけーーー。
ホームルームを始めるぞ
数分後、担任がやってくる。
授業のこと・・・町内イベントのこと・・そして、あの空席について
担任は語った。
なんでも、あの空席は私たちのために志狼が学校に通わないことで
それを見兼ねた担任達が志狼がもし・・・この学校に通っていたら
31人だったから・・とお情けで席を用意してくれていたと・・・。
このクラスメイトにしか伝えられていなかったことだったけど
他のクラスの子が遊びに来る度、土御門が必ずあの席にいたりと
夕方、生徒が帰る時間になるとこの教室で怪奇現象が起こるということで
撤去することになったそうだ。
なぁーーーんだ、残念!!
あ、そーだ・・・
なら私・・・
山路の家に行って直接プリント渡しにいっきま~す!
山路は不登校というわけではなく、
この学園に在籍していないから
プリントを渡しに行かなくていいぞ!!
いいか、土御門・・・
くれぐれも余計なことはしないように!!
担任は、土御門を叱責すると授業を始めた。
それから時間は流れお昼休みになる
昼休みになると、土御門は必ずクラスを離れる・・・
するとクラスメイトの話し声がたくさん聞こえる・・・
これは毎日お昼休みにある光景だ・・・・。
ていうかさ~土御門、マジうざくない?
だよね~!!
あいつ、絶対山路くんに気があうんじゃない?
あ、それ俺も思ったわ!!
でもさ~いない人の席に立ったり
私物いれたり、ちょっとやりすぎじゃない?
誰が忠告したところで、やめないんだからさ・・・
席は撤去されても・・・
山路くんの家に行きそうじゃない?
え、やだ・・・
それストーカーじゃない・・・・?
怖いんですけど・・・・・
その話は、私の耳にも届いていた。
幼馴染として見逃すわけにはいかない
土御門の素行は普段の様子をみていれば
担任もわかってくれてると思うけど、
まだ志狼の家に何かしに行ったわけではない。
私は・・・下校時間になると土御門のあとをつけるようにした。
もし、みんなが言っていることが事実なら
危ないのは志狼だけじゃない・・・
三佳音さんや亜堂さんにも被害が及ぶ・・・。
私は、山路家のみんなにはお世話になっているので
ずっと恩返しがしたいと思っていた。
恩を返すのなら、いまだと思った・・・・
山路家を訪れると土御門の姿はなかった・・・。
私の尾行がバレたのか、後ろから土御門に声をかけられた
風乃ちゃん、何しているの??
土御門・・・。あなたこそ、何しているの?
ちょうどいい、いつも土御門に思っていたことを聞くならいまだ!と思った
私は土御門と会話をしたけど利害は一致しなかった・・・。
霞ヶ崎家
モニタリング中・・・・・
小恋と漣がミーティングをしていた。
小恋これ、まずくねーーー?
ええ・・・・私がとめに行くわ・・・・
新世界で、あの2人と面識がないじゃーーん?
どうするの・・・・??
私に任せて・・・
修羅場中の2人を止めに行ったのは、小恋だった。
その方法は、通りすがりを装い仲裁するという作戦だった・・・
小恋は家から出て2人の間を通った。
どうして、そこまで志狼にこだわるの??
顔も見たことないし、会ったこともないでしょ・・・?
だから、気になるんじゃない!!
家に遊びにいくからいいじゃなーい
わかってるの?志狼はうちの学校にいないの。
入学してないんだから
あなたがかかわることは間違っている
風乃ちゃんさー
自分が、山路の幼馴染だからって
いい気になってんじゃない?
なんですって・・・・?
2人の間は、バチバチとしており
犬の散歩中の人も幼稚園から園児を迎えにきた親すらも
ゾッとしながら危険な空気を作ってしまう。
ね、ちょっといい??
そこに、周りからすれば勇気ある女の子!と思われる小恋が介入する
はーーー?アンタだれ?
ただの通りすがりよ・・・。
あなたたち、こんなところでいがみあって・・・
周りの人たちに迷惑かけてるわよ??
小恋・・・頼むから・・・変なことはいうなよ・・・・
モニター画面から見守る漣
小恋に言われて、我に振り返り庵は自分の行動に反省したが土御門は逆上する。
すると見知らぬ子供に、土御門は指をさされ
カッとなりつつも、その日は帰っていった。
あの人こわ~い・・・
だめよ、あんなのでも人・・・
人を指さしちゃいけません!
土御門が帰ると、肩の荷が下りて安心する庵。
小恋は庵に話しかけ家に招く
疲れたでしょう?うちに来て・・・
美味しい紅茶と白桃を用意しているの。
ええ
2人の会話を聞いていた漣は驚き
家に散らかしていたビール瓶などをお急ぎで片付け
霞ヶ崎は家に、庵を招いた。
つづく