第四話 「新米探偵 奈々」
「お願いします・・・・!ここで働きたいんです・・・・・!!翔さん・・・・!!お願いします!!」と必死に何回も働かせてくださいと翔に願う奈々。翔も少し困惑ながらも奈々がここで働くことを許可した。
「分かった。ただし、探偵の仕事はいつも安全なばかりでない。危険な現場にも立ち入ったりするから、それを覚悟して頑張るんだぞ。」と翔が奈々を探偵事務所で働くことを認めると奈々は飛び跳ねるように喜んだ。
「やったあっ!!これで私も翔さんと綾子さんと同じ名探偵だ!!」奈々はテンションが上がって嬉しさ満開だ。
「それじゃあ、俺らの事務所に案内してやっから、ついてこい。」と翔は奈々に事務所を案内した。
「はい!よろしくお願いします!」そして事務所に着き、奈々は緊張しながらドアを開けて挨拶した。
「失礼します!私、六丁の目監禁事件で翔さんと綾子さんに助けてもらいお世話になりました!丸野奈々です!どうか私をここで働かせてください!!私も探偵にしてください!!」翔の姉の綾子も父の浩一も母の佐百合も突然の奈々の発言にぽかんと口を開けて驚いていた。

「奈々・・・・・⁉」
「突然どうしたのかしら・・・・・?」
「うちで働きたいだと・・・・・⁉」驚いていたのは奇薔薇家だけじゃなく、雇っている事務社員も驚いていた。奈々はそれでも堂々としながら立っていた。
「はい!私も探偵として人を助けたいんです!!危険な所でも気を付けながら頑張って捜査したいんです!!」奈々の覚悟の上の発言で、翔も姉や両親に言った。
「・・・・・・ようし、分かった。奈々の意思はよく伝わった。」
「その必死さ、覚悟はできてるみたいね。」
「丸野奈々を奇薔薇探偵事務所で働くことを認めよう!!ようこそ!!奇薔薇探偵事務所へ!!」と奈々が探偵事務所に務めさせることを綾子と浩一と佐百合の三人は認めた。
「はいっ!私も探偵として人の役に立ちます!!よろしくお願いします!!」奈々の目は輝かしく、嬉しい感情になっていた。
「これで頼もしい仲間がまた増えたな。若者大歓迎さ!!翔。奈々の教育係をよろしく頼んだぞ。」と浩一は翔に奈々に探偵事務所の仕事を教えるよう教育係を息子である翔に頼んだ。
「はい。親父。俺に任せてくれ。」と翔も返事した。
「それじゃあ、さっそく奈々に仕事を与えるか。はい、奈々これ。この書類をファイルにまとめてくれ。」と翔は奈々に指示をした。
「はい!分かりました!!初の仕事、頑張ります!!」奈々はテキパキと言われた仕事の作業をやっていった。これには翔も父の浩一も奈々の仕事の速さに驚いていた。

「初めてなのに、仕事が速えぇぇぇぇっ・・・・・・。」
「返事も立派だったし、流石だな・・・・・・。」その後の作業も多少転んだりもしたが、コピー用紙を補充したり、書類を作成したりと難しい仕事もこなしていった。そして時間はあっという間に昼になり、奈々は奇薔薇一家と話をしながら弁当を食べた。
「う~ん♡働いた後のお弁当は最高です~!!」
「お疲れさん。初めてにしては、中々やるじゃないか。これからも応援してるぜ。」と翔は奈々に、フォローした。「お疲れ様です。えへへ、仕事は中学の時の職場実習以来だったので、緊張しました。でも、翔さんや綾子さん、佐百合さんやみなさんのおかげで、仕事がうまくできました。」と奈々もお礼を言った。
「翔と同じ高校生なのに、ちゃんとしてるな~。翔、奈々を彼女にしたらどうだ?」
「そうね。中々こんなに礼儀正しい子、どこにもいないわよ。」
「よかったな。翔。」と翔と綾子の両親と姉の綾子が翔をからかった。翔は顔が真っ赤になり、怒りながら言った。「おい!勝手に決めんなよ!!まだ初めて会ったばかりなんだから!!俺の好きな相手は俺が決めるんだ。」翔はツンとしてそっぽを向いた。
「おやぁ~?ツンデレですかぁ~www」
「顔が真っ赤だぞwwww翔。安心しろ。もし奈々と付き合うことになったら、ヤクザ仲間も俺ら家族も全力で応援すっからさ。」と綾子は弟である翔をからかい、父の浩一は翔の背中をポンポンと叩き、励ましていた。
「私が・・・・・、翔さんと・・・・・・!もし私が翔さんと付き合ったら、翔さんが私のダーリンに⁉そして私はウエディングドレスを着て・・・・・・!!」近くで聞いていた奈々は翔とラブラブになっていることを妄想していた。

「奈々まで・・・・・・・。」と翔は奈々の方を見て少々照れていた。冗談など話しているうちに時間は1時になり、仕事が始まるチャイムが鳴った。仕事に戻り、作業を再開した。午後も依頼者の相談を受けたり、書類の整理や作成をしたりなどテキパキこなした。
「えーっと・・・・・、この依頼者の事件の相談の困りごとは・・・・・・・。うーん・・・・。」と奈々は依頼者のことが書いてある書類を探していた。そんな困っている奈々に翔はアドバイスをした。
「あ、その依頼者のことは、内容はこうだな。かくかくしかじか・・・・・・・。こういうことだ。分からないことがあったらいつでも呼んでくれ。」
「はい!教えてくれてありがとうございます!!引き続き頑張ります!!」と奈々は翔に教えてもらったお礼を言い、仕事の終わる夕方まで作業を頑張った。やがて時間は夕方になり、空も真っ暗になり始めていた。カラスも電柱に止まって鳴いている。
ー夕方ー
「ふわぁ~・・・・・・。仕事が終わった~・・・・。それにしても翔さんと綾子さんが働いている探偵事務所で働けるなんて夢みたいだな~・・・。よし、明日は学校もあるけど、頑張るぞ~!!」と奈々が独り言を言っていると、翔が自動販売機から買った缶のジュースを奈々の頬にあてた。翔の姉の綾子も一緒に来ていた。
「よっ、お疲れさん。」
「お疲れ、奈々。仕事はどう?辛くないか?」と奈々に聞いた。
「大丈夫です!!慣れない仕事だらけで少し疲れてますが、全然へっちゃらです!!ご心配ありがとうございます!!」と奈々は言いながら、ガッツポーズをした。
「仕事が楽しそうで良かった。頼もしい後輩がまた増えたな。翔。」
「ああ、そうだな。」と奈々が満足な様子に、姉弟揃って嬉しそうな顔をしていた。
「ところで、奈々の通っているグローバルドリーム学園は、どういう所なんだ?うちの弟も奈々と同学年なんだけど、馴染めなくて学校辞めちゃってさ。」綾子は奈々が通っている高校のことを奈々に聞いた。
「そうなんですね。翔さんも可哀想に・・・・・。はい、えーと、私の学校は不登校でも不良でもギャルでも通える校則自由の学校で、先生も優しい先生ばかりで授業も楽しいですよ。科目はそれぞれ分かれていて、福祉科コース、家庭科コース、流通コース、法務コースなど色んなのがあって、最近では、探偵になりたい人だけのコースも出来ましたね。」と綾子に奈々は答えた。どうやら奈々の学校はいろんな事情がある生徒が多く、翔でも馴染みやすい学校だ。綾子も頷きながら納得する。
「なるほど・・・。探偵のコースがあるなんて、まさに翔にピッタリね。翔も安心して登校できるわね。どう?奈々の学校の内容についての感想。これなら、クラスに馴染めそうじゃない?」翔は奈々の学校に転校するか、考え込んでいた。

「グローバルドリーム学園に俺が転校か・・・・・・・。俺、こんなんでも馴染めるかな・・・・・・・。」と少しプレッシャー気味に翔はなっていた。奈々と綾子が背中を押すように支えた。
「大丈夫。色んな事情の子も通っているし、そこには斗真も通ってるから学校生活も馴染めるはずよ。」
「そうですよ!翔さんに何かあったら、守りますからね!!」と綾子と奈々が支えるも、翔は考え込んでいた。そしてついに答えが返ってきた。
「分かったよ。俺、奈々が通っている学校に転校して、慣れるように頑張ってみる。姉ちゃん、奈々、励ましてくれてサンキュ。」翔の答えはグローバルドリーム学園に転校するということ。嬉しい答えが返ってきた奈々はばんざいと喜んで翔に抱き着いた。
「やったぁっ!!翔さんとこれからも学校で会える!!よろしくお願いしますね♡」
「わ、わー!!俺に急に抱きつくなよ!!!」翔は奈々に急に抱きつかれて顔が真っ赤になって驚いていた。
「良かったじゃない。翔に合う学校が見つかって。後で親父と母ちゃんに知らせるから。」綾子も姉として弟の翔が不登校からまた学校に転校して復活できるという嬉しさが出ていた。その後、翔と綾子は事務所に戻り、翔がグローバルドリーム学園に転校出来るよう両親に相談した。両親も快くOKし、喜んでいた。
ー奈々の家ー
「今日は最高な一日だったな・・・・・・。まさか私が普通の高校生から、探偵になれるなんて思わなかったし、素敵な仕事仲間ができたよ。翔さんも五日後に私の学校に転校してくる予定だし、ドキドキでいっぱいだよ~!!」とベッドに横になりながら一人で呟いていた。
「きっと明日もいい日になるよね♡これからも頑張るからね。お婆ちゃん。空から私を見守ってね。ふふっ♡」奈々は今は亡き祖母の写真を見てにっこりと笑った。
「さ、明日も早いことだし、早く寝ないとね。おやすみ。」と言い、電気を消してベッドの中に入り寝た。奈々のすやすやとしている時の顔は嬉しそうに笑っている様だった。
(翔さんに・・・・、また・・・・、会えるかな・・・・。夢にも出てきてほしいな・・・・。むにゃむにゃっ・・・・・。)

ー続くー