
タイトル画像は、画像生成AIを使って作成しました。
CLIP STUDIO(クリップスタジオ)を使って画像の編集をしました。
「……お父様、海の魔女さま。──お許しください」
人魚のお嬢さんが、そっと呟く。
海の魔女がいない時間を見計らって、薬品庫から人間になる薬をひと瓶持ち出す。
置手紙には、記入済みの人間になる契約書を同封すると、作業台に置く。
陸への好奇心が強くなった人魚のお嬢さんは、人間になる決意をする。
──父である王様にあれもダメ、これもダメと制限をされ続けた結果である。
海の魔女が帰ってくる前に人魚のお嬢さんは、魔女の住処を後にした。
人間になる薬を飲み、人魚のお嬢さんは人間になると、
海ではできなかった事を次々と始めた。
……まずは、歩く練習からである。歩く練習中に、貝を拾いに来た女性に拾われ、
とんとん拍子に事が進み、その女性と一緒に住むこととなった。
──薬草を摘み、すり潰す。大きな鍋で薬品をかき混ぜながら煮詰める。
出来上がった薬品を売りに行く生活。
たまには遊びに行っておいでと女性からお小遣いをもらい、ショッピングなどを楽しむ。
陸での生活は、彼女にいろいろ体験させてくれるので、とても刺激的だったようだ。
時折、海の魔女さまに手紙を送り、近況を報告する。
──海にはまだ帰りたくない。陸での生活はこんなにも楽しいんですもの。
人魚のお嬢さんは、陸の生活を心ゆくまで楽しむつもりである。
「──数日、この家を空けるわ。あなたを色々な人に紹介したいの。きっとみんな驚くわねぇ」
届いた手紙を片手にクスクスと笑う女性は、とても楽しそうだ。
──後に一緒に暮らしていた女性が『森の魔女』と知り、魔女集会で海の魔女と再会するとは、
彼女は夢にも思わなかったのである。