原作:幽刻ネオン イラスト:花の月様 ※アイキャッチGeminiAI AI学習禁止
※Attention この物語には一部流血、ホラーな描写があります。また実在の団体、事件とは一切関係ありません
Prologue
これは、一人の青年がとある怪事件を解決してから一か月たった物語。
山奥にそびえ立つ、一軒の古びた西洋洋館。
そこでは背がすらっとした一人の美しい貴族の男が手紙を書いていた。
彼の瞳は物悲しく、執筆する動きは風のようにすらすらと書き上げる。
漆黒の紅いマントを翻し金髪ショートヘアをなびかせる。
優雅であり気高く、人間離れしたような見た目だった。
そっと地の底から這い上がるような低い声で。
「この想いがどうか送り主へと届く・・・・・俺はいつまでも祈り続けるとしよう」
男は不気味に高笑いし、椅子から立ち上がり窓際の真っ暗な夜空を鋭い深紅の眼で見つめた。
Episode1

「もうすぐハロウィンか。秋を感じるぜ」
大学からの帰り、僕は少し寄り道して商店街を歩いていた。
世間はもう十月上旬でジャックオーランタンや蜘蛛の巣などの飾りでにぎわっている。
大学でもハロウィーンの講義をするのだが僕は別の用事があるのでパスした。
何故かって?昼間は普通の大学生でその正体は。
(あれからもう立つのか。事件は無事に解決できたけれど)
僕は、月城ゆな。
こう見えてしがない大学生だが、ひょんなことから『妖魔捜査官』として活動している。
まあ簡単に言えば、心霊事件や怪異絡みの厄介事を解決する探偵とはまた違った組織だ。
僕は、一応バイトとして働いており他の奴には極秘で活動。
最初はやりたくなかったけれど、霊感があまりにも強すぎるからその力を人助けに使うことにした。
後輩も上司も個性的な奴でね、僕は最初に任命されたやつ。
「ここんとこ、平和だったからな。ある程度はリリカさんに任せっきりだけど」
僕の上司、【心霊捜査官】こと黄昏リリカ。
彼女は怪異のエキスパートでどんな事件でも解決してしまう天才女。
では・・・・・妖魔と心霊は何が違うのか。
まぁ、それは怪異と出会うから妖魔。
配属が違うだけで。
人とのコミュニケーションも疲れるが、一番は怪異とのコミュニケーションがダルイ。
考え事をしている内に僕は、目的地へと向かう。
それは勿論仕事先だ。
(まさか、事務所内でハロウィンパーティなんてしてねえよな)
何事もなくいつも通りでいてくれることを信じて先へと進む。
すると、僕の背後から声が聴こえてきた。
『待っているぞ、我が妃よ』
流暢なイギリス英語で話してきた男の声に僕は思わず背後を振り向く。
「誰だ?」
案の定、誰もいない。
最初は僕に憑りついている怪異かと思ったがあんな声はしない。
僕には、優秀な(?)雪女と吸血鬼が憑いておりよく振り回されるが。
(そんなわけねえよな)
結構歩き、アンティーク調の一軒家が見えてきたところで進路を変えた。
あの声はいったいなんなのだろうか。
僕は、嫌な予感を抱きつつ商店街を後にした。
Episode2
「あ⁉招待状だとぉ?」
「そうよ。霊子の人望が認められて招待されたのね。おめでとう」
モデル体系でJKみたいな制服と警官帽子が似合う金髪ロングの女が、僕の上司だ。
僕と彼女しか書斎にはいなく、父親や二人の姿も感じられない。
そんなことより、僕は気に食わない出来事に巻き込まれていた。
「だからって、わざわざこんな手紙が届くのか?おかしいだろ!」
「本当にすごいのよ。本来であれば私が招待されるのだけれど。まさか貴女宛に届くなんてね」
イギリス人の貴族一家の財閥に呼ばれたという怪しさ満点のミステリー。
聞いたことない名前だが【貴族一家】という単語に引っかかる。
依頼じゃなくて、招待状が届くということは。
「なぜ僕がこんな豪華なパーティーに参加しなきゃいけねえんだよ。気に食わねえな」
「確かにあやしいわね。でも、手紙の内容は読んだの?」
はっと我にかえり僕は、封筒をぐしゃぐしゃに破り手紙を出す。
英語で書かれていたため、リリカが翻訳してくれた。
【月城ゆな様。突然のお手紙で申し訳ございません。実は貴女様にご相談したいことがあるのです。パーティーを開くのですがどうも参加者が全員体調不良で来られなくなってしまい誠に悲しく思います。そこで、貴女様を招くことにしました。ドレスコードは必要ありませんので普段通りの恰好でぜひともおこしください。貴女様の歓迎を心の底からお待ちしております。 ディミトリ・カルデア】
要するに数合わせってやつか。
誰かを連れてこいとは書いてなかったので、後輩は連れていけないな。
いくら初対面だからといって、リリカ宛に来たのだろう。
「それじゃあ今回は、佐久夜とクライヴをここで泊まらせてあげましょう」
「え?なんでだよ」
憑いている怪異は雪女の佐久夜、ヴァンパイアロードのクライヴだ。
彼らは僕がお札とロザリオネックレスを拾ったことがきっかけ。
すぐ気に入られて友達と花嫁候補にされた。
そんな厄介な二人を彼女はどうやって交渉するのだろう。
「怪異の力に助けられすぎ。本来であれば自分自身が解決すること」
「つまり、こいつは試練みたいなモノなんだな?」
リリカが頷くと、僕は手に持っていたお札とロザリオネックレスをリリカに渡す。
しかし、彼女はそれを拒絶し受け取らない。
「それは持っておきなさい。自分が拾ったものは最後まで持つべきよ」
「けどよ。これがある限り二人は僕から離れられないじゃないか」
「あなた気をつけなさい。このパーティー、ただ者じゃないわよ。楽しんできなさい」
どうやら彼女の目は本気だ。
物を持っていたとしても二人を制御できるだけの力が彼女にはある。
「わ、わかりました」
別に寂しくはないのだけれど、パーティー自体が妖しさ満点なのは変わらなかった。
~数日後~
山奥にそびえ立つ、一軒の古びた西洋洋館が見えてきた。
キャリーケースがギシギシと音を立てながら僕は歩く。
どのくらい交通費を消費したかも覚えていない。
「すげぇな。本当に洋館があるなんて。別荘かもしれねえけど」
まるでミステリー小説の主人公にでもなった気分だ。
今回は、あくまで捜査として来ているためお遊び目的じゃない。
鉄格子の門があり、頭上にはガーゴイルのような石像がふたつもお出迎え。
僕がこの中に入った瞬間から捜査がはじまる。
ふたりは悔しそうに行きたかったと言っていたため、世話はリリカに任せた。
今回は静かに穏やかに過ごせることを祈って。
「しっかりしろ。いつも通り過ごせばいいんだから」
自分に言い聞かせてはいるが、正直この洋館から異様な気配が漂っている。
とにかく僕は、中へと入っていく。
すると中から無数の蝙蝠たちが僕の目の前に突っ込んできた。
「ぐっ・・・・・・」
立ちはだかるのは、大きな年季の入ったドアだ。
廃校を探索した時もそうだったが、やはり重圧がすごい。
僕は深く深呼吸をしてドアを三回ノックした。
耳障りな音でドアが勝手に開くと目の前にいたのは、燕尾服姿の金髪の美男だった。
