※アイキャッチ、立ち絵などGeminiAI AI学習禁止
Episode8
僕はこいつの顔をみた瞬間脳内に電流が走った。
思い出した、こいつ確か大学の講義でいたぞ。
「げっ・・・・・理久(りく)・・・・・?」
「そうだ。不幸事に巻き込まれるなんて俺らは運命共同体だぜ」
「知り合いなの?」
こんな事は言いたくないが、僕の元カレだ。
かなりのヤンデレ気質で僕のことを見た時から一目惚れして交際した。
ま、僕自らフラれ役をしてやめたけど。
「マジかよ。できれば会いたくなかった」
「そんな事言うなよ。こうして再会できたんだ。奇跡ってあるんだね」
簡単に言えば、こいつはシチュエーションボイスの台本の登場人物。
なぜか意思を持ってしまい、あなたという主人公を夜な夜な探しに彷徨う。
「ふーん。ゆなにも、ちゃんとしたお友達がいたんだね」
「そうだよ。優しくて頼りになる。理想のお友達だ」
(なんかすげぇ二人で意気投合してんな。こいつら)
しかも彼に関しては、僕が観た動画【助けた彼が恩返しをしてかえってきた】という呪いの動画だ。
それを直で見てしまった僕も悪いが、理久の存在感は半端ない。
これでも【まだ優しい方のヤンデレヴァンパイア】だ。
「麗華、こいつはいわゆる腐れ縁だ。気にしないでくれ」
「ふふっ。わかったわ。おにあいだね」
「協力しよう。この洋館が怪しいのは確かだ」
こいつの方が、リリカに取り締まりをしてほしいものだぜ。
でも僕が自業自得で生み出した怪異だから対処は難しいのだろうか。
(ま、あのふたりよりかはまだマシだぜ。こいつらには目的があるらしいからな)

絶対に口では言わないと心に決めた僕。
でも楽しいものなのか、探索って。
今だってこんなに、アンデッドと共に脱出を考えている。
考えていることは一緒なのだろうか。
「ふたりはその・・・・・不安じゃないのかよ? こんなところに閉じ込められるくらいだし」
「不安じゃない、と言い切れなければ嘘じゃないけれど」
「最初は迷い込んでどうしようかと思ったが、君が来てくれたから不安はないさ」
どうやら杞憂だったらしい。
僕が想っているほど、ここにいるキョンシーとヴァンパイアは平気そうでピンピンしている。
なんだか僕だけが恐れているようで恥ずかしくなってきたぜ。
「麗華、理久。少し頼みがあるんだが・・・・・」
僕がこれからディミトリに対してどう接したらいいのかを考えた。
そのためには、決してふたりを敵にしてはいけない。
「いいだろう、何でも応えてやろう」
「遊んでくれるならいいよ。なーに?」
ひとつの賭けをしかけ僕らしくない提案を言う。
「僕のこと、助けてくれないか?」
Episode9 前半
その夜、ディミトリが買い物から帰ってきて僕は何事もなかったかのようにリビングで過ごしていた。
外出している時の彼の表情は不服そうだったが、僕の姿を見た瞬間笑顔になる。
「約束通り、頼まれていたものを買いに行ってきたよ。そちらは何事もなかったかな?」
「異常なし。少し掃除と見張りをしたくらいでネズミ駆除をしていたくらいか」
みろよこの、ディミトリの安心した顔。
客人として接していたがいつの間にかすっかり仲良くなったくらいだ。
探索は、彼が寝静まった時に再開することに決めた。
「ゆな、君はいつ帰宅すると言っていたかな? 客人として呼んでいるから気になって」
「今週の金曜には戻らないといけないかな。単位が取れなくなるからね」
「そうか・・・・・・」
ディミトリはすごく悲しそうな表情になり紅茶を入れる。
いくらパーティーに呼ばれたからって客人である僕を帰さないわけだろう。
さっさとこの洋館の真実を突き止めて、無事任務を終わらせる。
それが僕の妖魔捜査官としての責任だ。
「君がいなくなってしまったら俺はまた元の生活に戻るだけか」
「みたいだね。でも楽しかったですよ」
すると、ディミトリが急に僕の方を見て近づいてくる。
なにかまずいことを言ったのだろうか。
彼の表情に僕は違和感をおぼえた。
