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Episode9

鋭い瞳が血のように真っ赤に光り、口元から鋭い犬歯がみえる。
笑っているのか怒っているのか、僕には理解できなかった。
「そういえば、ひとつききたかった事があるんだけど」
「何だ?」
低いドスのきいた声がリビング中に響く。
すると、足元から何やらドロドロとした気持ち悪い音がきこえてくる。
「お前さ。具体的にパーティーって何をするんだよ」
もう一度同じ質問をする。
ディミトリは不気味に笑い、声をあげて僕に近づいてきた。
「あーあ。いともこう簡単にバレてしまうなんてな。君はなんて賢いんだろうなあ」
「ディミトリ・・・・・嘘はやめたほうがいいぜ」
ドロドロとした気持ち悪い音は、黒い液体となり周りを囲み玄関のドアにはりつき。
ガチャッ、とまるで鍵をかけたかのように。
ディミトリは寂しそうに笑う。
「そうだな。俺はいわゆる・・・・・・【この洋館そのもの】だ」
「何だと?」
「俺は、マヨイガと呼ばれるモンスターらしい。美味しいごちそうも、暖かい寝床も全て元からあったのさ。一体化していても過言ではないのでね」
要は最初からパーティーがあると騙してわざと僕を迷い込ませてこの洋館にたどり着く。
遭難者で神隠しにあうというのはお約束ときいたことがある。
「じゃあ僕は、招かれた客じゃなくて獲物だったのかよ」
「言い方が酷いな。俺は他のマヨイガとは違って優しいぞ」
怪異というか、もはや妖なんだよ。
でもなぜだろうか。
ハロウィンも近いからなのか、全然怖いと思う感覚がしないんだよな。
建物に憑依して、イタズラをするめーわくなやつ。
「でもよかったよ。これで君を一生可愛がられる」
監視どころか、もはやストーカーに近いなこれ。
騙されねえぞこんなのに負けていたら。
ホラー映画だとここから化け物たちがうじゃうじゃやってくるんだろうな。
「嫌だね。僕はアンタと一生を添い遂げるつもりはこれっぽっちもねえんだわ」
「なんだよ。せっかくここまで完璧に、おもてなしできていたのに。君はそれさえも侮辱するのか」
「ようやく化けの皮が剝がれたようだな! 僕はただの客じゃない。妖魔捜査官だ」
さすがにここまで正体をあかされたら僕も黙っていられないため、証明書を彼に見せつける。
ディミトリが舌打ちをすると、両手から黒い液体を流し僕に襲い掛かる。
ぬめぬめとしたスライムのような動きは、クトゥルフ神話にでてくる邪神を思い出しそうで厄介だ。
意外かもしれないが、僕はTRPGをやったことがある。
先ほどまでの貴族が今は不完全な化け物へと変貌していた。

「くそっ、ここに来て本領発揮かよ」
僕は二階へと駆け上がり、液体から逃げるように走る。
ディミトリは、寂しかった度を超えており僕をここから逃がす気はなさそうだ。
怪異たちはどこまでも、しつこい。
「待ってくれよ。俺の愛しい妃」
出たな、ここで流暢なイギリス英語。
やはり最初からディミトリは僕に憑りついて自分の状況を知ってほしかったのだろう。
ここまで来るとピンチになる。
幸い二階の寝室に隠れたのはいいものの、どこかに手かがりさえあれば助かるはずだ。
手がかり=ディミトリの弱点。マヨイガって確か、『迷い家』・・・・・。
その時、同時に聞き覚えのある声がして僕は安堵した。
「ゆな」
「ゆな」
背後には、宙に浮く少女と柄の悪い好青年。
「麗華、理久!まずいことになった。アイツは僕を逃がさないつもりなんだよ」
その時、僕のポケットからお札とロザリオネックレスが光りだし宙に浮いた。
同時に、ふたりのアンデッドは僕をゆっくりと味わう。
痛みは少々感じるが、流れる血はとまらない。
お札は、麗華の額に貼り付けられた。
ロザリオネックレスは、理久の首元に身に着けられる。
「どこにいるのかな? 隠れたって無駄だぞ」
ディミトリが僕の姿を見つけ、黒い液体が襲い掛かる。
今度こそもう終わりだ。
「みつけた」
その瞬間、僕は。
