最近、凛子は会社での人間関係に疲れていた。
「お前、結婚いつするんだ?」
「お前、太ったんじゃないか?」
「お前、年取ったなぁ?」
名前は覚えてくれないし、プライベートなことまで干渉する上司や同僚。
凛子はいつもの仕事の帰り電車に乗った。
ガタンゴトン、ガタンゴトン、ガタンゴトン
規則的な揺れに疲れていた凛子はついつい寝てしまった。
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凛子は駅員の声に起こされた。
「お客様、終点です。」
「あっ!すいません」
慌てて降りた駅は薄暗く、人気の無い無人駅だった。
「おかえりの里・・・。知らない町だ・・・。」
駅の時刻表には始発の記載しか無い。
「しかたがない・・・。」
凛子は駅を出ると商店街のような通りを歩いた。
何故か知らないと思っていた町に見覚えがあった。
「確かこの角を曲がったところにパン屋さんがあったはず。」
凛子はその角を曲がった。
そこには古びたパン屋があった。
「あっ、こんな感じだった。」
その瞬間、凛子の記憶は小学生だった自分に戻った。
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「りんちゃん、遊ぼうよ~。」
「うん、何して遊ぶ?」
「お手玉!」
りんは友だちとお手玉をしていた。
「えい、よっと。」
「りんちゃんそんなに欲張ったら、取れなくなっちゃうよ。」
そこからの記憶は消えていた。
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辺りは白く朝靄が立ち込めていた。
凛子は気が付いたらそのモミの木のある場所に向かって歩いていた。
街はずれのわかれ道にあったそのモミの木は雪の重さに耐えていた。
凛子はあの頃と同じように手に持っていたお手玉を広げた。
「今度はうまく出来るかなぁ。」
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りんの記憶は小学生の頃の自分に再び引き戻された。
「今度は上手くつかめるかなぁ?」
「大丈夫だよ。欲張らなければうまくいくよ。」
それから、リンは友だちに別れを告げて、自分の家?に帰った。
家には祖父がいた。
「おかえり、リン。ご飯食べて、お風呂に入りなさい」
リンはこのちょっと気難しい祖父が苦手だった。
その祖父がリンに話かけてきた。
「リン、お前は今、幸せか?」
リンは祖父から聞かれて 「幸せだ」と答えられなかった。
答えずらそうなリンの顔を見て
「そうか・・・。」
祖父は「何もかもわかったよ。」というように優しい顔をしていた。。
懐かしい味の夕飯や薪で沸かしたお風呂の柔らかい暖かさはリンを深い眠りに誘っていた。
久しぶりにゆったりとした時間を過ごしていた。
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目が覚めた凛子は電車に乗っていた。
凛子は家に帰った。
「ただいまー!」
「お帰りなさい、凛子、ニコニコしてどうしたの?」
心配したようには母は言った。
「おじいちゃんに会ってきた。」
と凛子はニコッとした。
「凛子、疲れて電車で寝て夢でも見たんでしょう?」
そう言って母もニコッとした。
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