みなさん、こんにちは。声に恋する。です。
早いもので今年ももうすぐ終わりですね。皆さんはやり残したことなどありませんか?
なにかと忙しいこの時期に、ちょっとした息抜きで読める短編小説とイラストを書きました。
どうぞ、お楽しみください。

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夕暮れ時、冬の寒さが夜を連れてくる頃。
私は、部活終わりの帰路に着いていた。
「…はぁ」
ため息を一つつく。部活で疲れたからではない。
「…結局、今日も伝えられなかったなぁ」
私は自分の意気地なしさに、ため息をついたのだ。
恋をしている。相手は同じ部活の同級生。
いつ好きになったのかは覚えていない。でも、毎日顔を合わせていく毎に私の心は彼に惹かれていった。
「…もうすぐ冬休みかぁ。それに…」
私は現在高校二年生。再来年の春には、卒業だ。
進路は決めている。そして…彼と、進路は違う。
だから、今のうちにこの気持ちを伝えたかった。伝えたい…だけど。
「…私、本当に臆病だよね…。伝えて気まずくなりたくないとか、色々理由つけて…。
結局、告白する勇気がないだけなのに…」
私はまた、ため息をついた。白い空気が夕暮れの空に消えていく。
『やらない後悔より、やる後悔の方がいい』
いつかどこかで聞いた言葉だ。分かってる。そんなの、分かっている。
でも実際は…怖くて、勇気が出なくて。
ただ一言が伝えられない。
「…あ」
目の前を白いふわふわが舞い降りていった。
「…雪だ…」
静かに雪が舞い降りてくる。私は空を見上げた。
どこまでも静かに、雪は降り続ける。
「…私みたいだな」
舞い落ちる雪と自分が重なった気がした。
静かに、でも確かにそこにある想いが、どんどん溢れていく。
そして、静かに地面に消えていく雪の姿は、私が伝えられない一言と重なって。
…本当に、このまま、この想いを伝えられないままでいいのだろうか。
「…多分、違う気がする」
私は気づいたら口から出たその言葉に自分で驚いた。
そうだ。彼への想いが伝えられなくても、この想いは雪のようには消えない。
きっと、きっと、ずっと残り続ける。
大人になっても、おばあちゃんになっても、残り続ける。
後悔しなくても、想いは消えない。
きっと、これから先、他の誰かを好きになっても。
この恋は、ずっと私の中にある。
「…走ろう」
私は、帰り道と逆方向の学校へと走った。
彼はまだ居残りをしていたはずだ。
例え叶わなくても。
例えこれから先のお互いの道が違うものでも。
それでもいい。
大切なのは、自分の想いを伝えること。
『大好き』
その気持ちをくれた彼に、しっかりと伝えること。
雪が降り続ける中、私は走った。
静かな道を、白い息を切らせながら。
大丈夫。もう迷いはない。
あなたがくれたこの想いを、確かに届けに行くからね。
しんしんと降る雪だけが、一人の少女の恋を見守っていた。
終。
