第十一話「切なき雪が告げる恋の鐘」
「はぁ~・・・・・・・・。」と浜田先生が教卓でため息をつきながら生徒のプリントをまとめていた。

「何か、珍しく渚沙先生が落ち込んでいるね。」
「何があったんだろう・・・・・・。」と茉莉華と智香は心配そうに浜田先生を見ている。
「う~ん・・・。大人の悩みは複雑かもだね~・・・。もしかしたら恋のことで悩んでいるとかあり得るよね。」と李衣紗が憶測の考察で喋った。二人はなるほどみたいな感じで頷いた。すると、後ろから浜田先生が仁王立ちして茉莉華達の目の前にいた。
「何を話していたのかな~??茉莉華さん、智香さん、李衣紗さーん?全部聞こえてたわよ?」茉莉華達は後ろを振り向いて浜田先生にびっくりしていた。
「⁉は、浜田先生・・・⁉」
「もしかして、今の会話聞いていたのですか⁉」
「駅前の新しいカフェの話をしていたのです!!駅前の新しいカフェ!!」と李衣紗も必死に誤魔化すも、先生にはお見通しだ。
「当たり前でしょ。先生なんだから、生徒が何話しているかお見通しよ。」と言い、浜田先生は無言になって俯いた。
「先生・・・・?」
「何かあったんですか?」浜田先生を見て、茉莉華達は心配している。
「ううん・・・・。ちょっと大人な恋の悩みでね・・・・・。」そんな恋の悩みで悩んでいる浜田先生。自分のクラスを持つ生徒にバレたくないのか、苦笑いして感情を隠した。
「浜田先生、先生の悩み事誰にも言わないので教えてください!」と智香は浜田先生の手をぎゅっと握って言った。
「そう。じゃあ、聞いてもらえるかな。昼休みに。」と言うとチャイムが鳴り、授業が始まる。そして12時になり昼休みになった。いつもはノエルや久彦も誘って昼を食べるが、今日は先生と茉莉華も含めて智香と李衣紗の女4人で食堂で食べた。
「本当は生徒同士で食べたいだろうに、先生も参加して食べちゃってごめんなさいね・・・・。茉莉華さん。」
「大丈夫ですよ!悩んでいる時は相談に乗りますよ!渚沙先生が生徒を励ましてくれたように。」と茉莉華が励ますと、浜田先生は自分の悩みを茉莉華達に打ち明けた。それを聞いた茉莉華達も納得し、浜田先生に彼氏がいることに驚いていた。
「せ、先生に彼氏⁉」
「どんな人ですか⁉」
「イケメンですか⁉ハンサムですか⁉」と大声で茉莉華達が驚くので、聞こえてもまずいと思って浜田先生は顔を赤らめながら「しーっ!」と言って茉莉華達を落ち着かせた。
「静かに!聞こえたら男子生徒にからかわれるから!!」
「す、すみません・・・・。」と謝り、茉莉華らは先生の恋愛事情を浜田先生に聞いた。
「それで、渚沙先生の彼氏ってどういう人ですか?」
「うーんとね・・・・・、私の彼氏は優しくて真面目で気さくな性格で、職業は東京でパティシエをしている人でね、わざわざ千葉まで遊びに来てくれるの。あ、彼は日本人じゃなくてイギリスの人なんだ。」
「そうなんですね!東京でパティシエなんて凄い・・・・!」
「海外の方でパティシエ・・・、いいじゃないですか!写真あったら見せてください!!」と李衣紗が言うと浜田先生はスマホの中にある彼氏の写真を見せた。

「うわぁっ・・・・!ハリウッド俳優みたいにイケメン!!」
「それな!めちゃカッコいい!!」
「そんな感じの人が先生の彼氏なの、羨ましいです~!」茉莉華達は、浜田先生の彼氏の顔の美貌さに驚きながら見惚れていた。先生も「フフッ」と笑いながら茉莉華達と話したが、顔は少し彼氏のことで落ち込んでいた。
「私もまさか海外のイケメンと彼氏になれるなんて、思ってもいなかったし、夢みたいだった。・・・・でもね、その彼氏パティシエの1年後の大会のためにイギリスに戻って修行するらしいの。しかも、大会の会場も海外で、フランスのパリで行われるの。だから私、彼の応援のためにも何か渡したいなと思って・・・・。」と浜田先生が事情を話す。どうやら浜田先生の彼氏がパティシエの世界大会のためにイギリスに戻るらしく、また会えるのは1年後になると言われたため不安と寂しさで落ち込んでいたという事だった。茉莉華達も浜田先生の悩みを聞いて、同情して寄り添った。
「そんな事情があったんですね・・・・。」
「好きな人が海外に行ってしまうのは寂しいですよね。」
「私達にも出来ることないかな・・・・?」自分のクラスの担任の先生が落ち込んでいるのを見て茉莉華達も心配そうな顔をしていた。特に茉莉華は何か自分達に出来ることがないかと考えていた。
「あはは、大丈夫よ。これは私の問題だから!相談乗ってくれてありがとね。」と浜田先生は笑って悩みをごまかした。そして午後のチャイムが鳴り、食堂から教室へと浜田先生と一緒に戻った。5時限目の授業になっても、茉莉華の頭は浜田先生のことでうわの空だった。それをみたノエルは、茉莉華の顔をじっと見た。
「?茉莉華??どうした?ぼーっとしてるけど。授業中だぞ?」
「あ、ううん!!なんでもないよ!ちょっと考え事!」と茉莉華はノエルに聞かれても誤魔化した。浜田先生の悩み事を秘密にしたいからだ。それでも茉莉華の目は少し逸らしていて秘密をばらすのも我慢していた。ノエルは不審に思いながらも茉莉華の顔を見た。

「ふーん・・・・。じゃあ、後で考え事のことを聞かせて?」
「う、うん・・・・・・。」どうやらノエルの前では隠し事ができないようだ。「どうすればノエルに伝わるか」と茉莉華の頭は混乱していた。そして茉莉華はノエルに、浜田先生の恋の悩み事のことを話した。すると、ノエルも納得しながら頷いていた。
「なるほどなぁ~。好きな人が遠くに行ってしまうのか~・・・・。浜田先生も彼女として寂しいだろうな。それにしても、先生にも悩んでしまうことがあるなんてな・・・・。まっ、先生といっても人間だし当然か。」
「うん。だから私、先生のために出来ることないかなって・・・・。ノエル、どうすればいいかな。」ノエルは少し考えながら答えた。
「う~ん。これは浜田先生と彼氏さんの二人だけの問題だからな・・・・。とりあえず、その当日様子を見に行くというのはどうだ?浜田先生が言うに、彼氏さんが空港に行く日が24日のイヴの日だしな。その日は確か、イベントがあったよな。街中がキラキラ光るやつ。ちょうど俺も茉莉華とデートしたいしな。」
「それいいかも!私も丁度その日、ノエルとクリスマスデートしたいし!24日はノエルも出番休みだしね!その作戦で行こう!」
「ああ!」と二人は意気投合した。
ークリスマスイヴの日ー
そして月日はクリスマスイヴの日になり、街中はクリスマスムードでカップルや家族連れなどが沢山歩いていた。店員さんもサンタやトナカイなどの格好をして仕事をしていた。茉莉華やノエルは午前と午後のクリスマスオルカショーや仕事を終えて服を着替えて街中に来ていた。
「うわぁ~!街中クリスマスだね!飾りもいっぱい!」
「そうだな!これがクリスマスというイベントか!ケーキも食べるんだろ?楽しみだな!」
「もう!ノエルったら!相変わらず食いしん坊なんだから!それじゃあ、色々見てまわろっ!」と言って、茉莉華とノエルは恋人繋ぎをしながら色んな所を見てまわった。
「このスノードーム可愛い~♡」
「この置物、中に家や木が沢山あるな・・・!」まるで芸術だぜ!」二人は雑貨屋のスノードームに夢中になっていた。すると、茉莉華は後ろのコーナーにあった大きめのマフラーに目を付けた。
(このマフラー、凄く大きい・・・!色もオフホワイトで可愛いしノエルと一緒につけて歩きたい!!)と妄想しながら大きめなマフラーを買い、ノエルと二人でマフラーを付けながら歩いた。

「このマフラー、すげぇデカいな・・・・。」
「えへへっ♡大きめなマフラーで一緒に歩きたかったんだもん♡」その後もお互いのクリスマスプレゼントを買い、外食をしたり色んなショッピングを見てまわったりした。そして時間が経ち、ページェントの点灯の時間になり、外へ向かった。通路は人々で凄く混んでいる。
「街中の木がキラキラ光ってる・・・!」
「イルミネーションって、こんなに綺麗に光るんだな!まるで、茉莉華みたいだな。」「へっ!?」ノエルの突然の言葉に茉莉華は戸惑った。ノエルはイルミネーションの光を見ながら微笑んでこう言った。
「何かイルミネーションの光を見ていると、どんなことがあっても前向きに頑張っている茉莉華みたいだなって!笑顔で前向きな茉莉華は、イルミネーションの光より最っっ高に輝いてるぜ!」
「・・・・!(照)」
「の、ノエル・・・!!うん!でも、ノエルも最っっ高に輝いてるよ!」と言って、お互い笑顔になって語り合いながらイルミネーションの光の中を歩いた。すると、奥にある広場に浜田先生と彼氏さんらしき人物が向き合いながら立っていた。
「ねぇ、ノエル。あそこにいるのって・・・・。」
「あぁ、間違いねぇ。浜田先生と彼氏さんだな。」
「何の話をしているんだろう。」茉莉華とノエルはコソコソ話しながら浜田先生の様子を立ち止まって見ていた。浜田先生は学校にいる時よりも可愛く女性らしい服装とヘアスタイルをしていた。パールのイヤリングもしているので、いつもより気合が入っている様子だ。だが、表情はどこか切なげな顔をしていた。

「ゼイール。本当に貴方海外に行ってしまうの・・・?」
「あぁ、大会のためなんだ。渚沙、ごめんな・・・。でも、向こうに行っても君を愛しているよ。いつでもオンライン通話やメールなどで話をしたりしよう。そして、1年後僕が帰ってきたら・・・・」と浜田先生の彼氏、ゼイールはコートのポケットから指輪らしきものが入っている箱を取り出し、浜田先生の前で見せた。
「ゼイール、それって・・・・!」
「結婚指輪だよ。寂しい時はこれを付けて僕のことを思い出してほしくて。」ゼイールからのまさかのサプライズに浜田先生は涙を流して、ゼイールのことを強く抱きしめた。
「⁉渚沙・・・・⁉」
「ゼイール。ありがとう・・・・!貴方が日本を去ってしまうのは寂しいけど、ずっと大好きよ・・・!私、貴方の帰りを待ってるから!いつまでも!!」
「あぁ、僕も頑張ってくるよ!」浜田先生とゼイールのプロポーズ的な展開を見た茉莉華とノエルは微笑んでいた。
「浜田先生、良かったね・・・!」
「二人のプロポーズ見て俺、感動しちゃったぜ。遠くに行っても心は一つってこういう事なんだな。なぁ、茉莉華。俺らもいつかこんな関係になれるかな。」とノエルは語りかけると茉莉華はくすっと笑った。
「ふふっ。何?今更。もうすでになってるじゃない!私もノエルのこと愛しているよ。これからも末永くよろしくね。」
「あぁ。こちらこそ。茉莉華、メリークリスマス。」と茉莉華とノエルもイルミネーションの光の中抱きしめあった。クリスマスイヴの日の空から降る雪は茉莉華とノエルの二人と浜田先生とゼイールの愛を祝福するかのように降っている。最高のクリスマスとなった。

ー続くー
