夏休みの朝早く、小学3年生の僕と猫は家出をした。
自転車の前カゴに猫を乗せ、ひたすら川沿いを走った。
「どこに行く?」
「にやーん。」
とにかく、川沿いを走った。
僕たちに道は永遠に続く気がした。
「何をする?」
「にやーん。」
家族とケンカをしたわけじゃない。
ただ、家出をしたかった。
「水飲むか?」
「にやーん。」
自転車を降りて地べたにすわる。
ゲートボール場のお年寄りが見える。
「今、何時かなぁ?」
「にやーん。」
「腹減ったか?」
「にやーん。」
「僕も腹減った。」
「にやーん。」
「帰るか?」
「にやーん。」
僕は走る。
家に向かって・・・。
今日の家出はおしまいだ。
「今度はもっと遠くに行こうか?」
「にやーん。」