ああ、終わった!今日も原稿落とさずに済んだあ!
3本打ち切りになった漫画があるから負けられないんだよなあ!
「あの、内先生。相談があるのですが・・・。」
なんだよお、チーフアシスタントの高野かよお・・・。
しゃあねえ、相談事に乗るかあ。
「どうした、高野?」
「今日も打ち切り寸前で言うのも難ですが、今回の漫画で打ち切りになったら漫画家自体の契約を切ると言うのは本当ですか?」
えっ?それ、えっ?聞いてないんだけど・・・。
「この件は、誰から聞いたのかな?」
「編集の方からの電話で盗み聞きしました。」
マジ?そんな・・・ちょ、えええ!!
あまりにも残酷な通告に動揺して困惑してますけどー!
「高野、あんまりそう言う冗談は止しといた方がいいぞ。他人に嫌われるぞ。」
「何言ってるんですか?本当ですよ。」
たかのおー!!どうしてそんなこと言うのおー!!
「何が原因だ!?教えてくれ!高野!」
「いや、内先生10週打ち切り連続3回でしょ?今回で4作目の8週目だとしたら・・・」
「もういい!!何も言わないで!!」
怖かった!高野のチーフらしからぬダメージの与え方は怖いよ!
「だって先生、内桐丸と言うペンネームでしょ。語呂やセンス悪いですって。第一内桐丸って打ち切りを連想させるじゃないですか。」
うるさい高野ぉー!!語呂やセンスはどうでもいいんじゃー!
「元々本名なんだよ!別にいいだろ!」
「だとしてもペンネーム変えるの早めた方が良かったですって。いくらなんでも打ち切りを早めるペンネームはやめといた方がいいですよ。」
「親がつけた名前に文句言うか!!」
「親がつけたってマザコンか何かですか!?大体こっちの生活もかかってるんすよ!!お前は優秀だ!こっちでやれば食いっぱぐれはない!新連載の時毎回必ず聞きましたよ!なのに、妻はこんな食いっぱぐれの漫画家の元に着くのやめろって!なのに貴方の意思にに負けてついていったらみかねて妻も出ていきましたよ!!」
お、俺が原因だと言うのかよ!
「呪いのペンネームやめといた方がいいですって!」
「呪いじゃないって!」
「呪いですって!」
「呪いじゃないって!」
「いやいや呪いですよ!」
「呪いだよ!!」
開き直ってスッキリしたよ!そりゃ俺が呪いだよと大声出すと動揺するよな!
「俺!漫画が好きだよ!でも、その本名!本当は大っ嫌いだよ!親がさあ、本名使わなかったらお前の給料全額仕送りしろって・・・!とんだやばい親に生まれたと思ったよ!説得したよ!その本名使いたくないって!でも不可抗力で脅してくるから怖かったんだよ!」
どうだ!これでもマザコン言うか!ああ!?もうお前には嫌われて当然かもな!高野!
「先生、すいませんでした。」
平謝りか!同情されても今更遅いよ!
「先生が一番苦労してるのに、好き放題言ってすいませんでした!最後まで付き合います!」
「高野・・・。」
その言葉に思わず同情しちゃったよお・・・。
ピリリリリ!
電話が鳴った!出たら担当編集者だった!
「はい!もしもし・・・えっあっ!?ちょっと待ってください!あと1回チャンスを、チャンスをください!」
粘りの交渉も虚しく編集側の電話が「決めたことなんで」と斬られた。
「高野、ごめん。ごめんなさい!」
「内桐丸先生・・・・・・・・・!」
その時目の前が真っ暗になる様に二人で泣いた。