お前らの存在など道端の景観を汚す苛立たしいガラクタと変わらない。
…別に褒めてほしかったわけでも労いの言葉を期待したわけでも無かった。
ただ自分たちがこの場にいていいことや組織の為に必要な仕事を任されている、ただそれだけを承認してくれるだけで私たち「フェアリー・リリック」のメンバー達はいくらでもこの身を捧げて尽力するのに。
別に利用されていることに不満があったわけではなかった。
大多数の人間が持たない異能適性を生まれながらにして持っていた私たちは両親から拒絶され、この身ひとつで生きていくことを強いられた。
窃盗や強盗、ろくでもない物品の運び屋などをやりつつ自尊心と自分の尊厳を切り売りして食いつなぐのに必死だった。
そんな失望と絶望に食い荒らされた心を引きずって生きていたある日、転機は訪れた。
日頃から”食い扶持”を提供してくれていたコミュニティのトップが失踪し幹部たちメインの構成員達も警察に拘束されたのだ。
その手先として活動していた私たちも同罪として連行されたが、未成年ということもあり養護施設へと移送処分となる。
そこでの僅かな日常は私たちにとって夢にも見ないほどの優しい世界だった。
完全に施設の人間や関係者に依存していた私たちは自分たちも幸せになっていいんだと考えるようになっていた。
その優しさが再度地獄へ私たちを誘う罠だとも知らずに。
悠華と対峙していた「フェアリー・リリック」の構成員の少女は突如呼び起こされた始まりの記憶に戸惑い、意思の自律が難しい状態になっていた。
そして万全だった筈の有利な状況が消え失せていることに困惑している。
何が正解なのかわからないまま少女は残された僅かな理性で事態を検証していく。
…藤御堂のお嬢様の異能は「敵性意思を持った人間の精神を焼き尽くす」というモノだったはず。
だからこそ「聖女が魔女として処刑され殉死する物語」の中で自滅してくれる算段だった。
そしてその自滅のトリガーはお嬢様の「事態を解決する意思」と「他人を罰しようとする決断」だ。
そのふたつの要因が揃って私の「リリック」が成立したはず。ならどうして…
少女の意識は理解も納得もできないまま新たな脚本のシナリオに沈んでいく。
無意識に自分が解放された安堵と安らぎに身を委ねて。
