「愛しのアクアリウム」~第十二話~

第十二話「愛しのアクアリウム」

大晦日やクリスマス、正月など沢山イベント行事のあった冬休みも終わり、青春の一大事のイベントのバレンタインも終わり、季節は春になり出会いと別れの季節になった。校庭の桜も綺麗に咲いている。茉莉華の学校は中等部3年と高等部3年の卒業式も終わり教室の空気は少し寂しそうだ。茉莉華とノエルは窓辺で桜を眺めながらお互いの未来を語り合っていた。

「ねぇ、ノエル。これから先大人になっていくにつれて、ノエルはどうしたいの?」
「あぁ。俺か?そうだな・・・・。自分の将来については何も考えてなかったからな・・・・。でも、俺は大人になっても茉莉華を守る存在でいたいな。そのためにも完全な人間の姿にならないとな。今の状態じゃ不完全だから。」「人間の・・・・姿・・・・?」ノエルの答えに茉莉華は少しぽかんとしている。
「あぁ。俺ら動物ってさ、人より成長するのも年を取るのも早いじゃん。それだと茉莉華と一緒に過ごせなくなっちゃうと思ってな・・・・。シャチをやめて人間の姿になるか考えているんだ。」ノエルは茉莉華と共に末永く過ごせるよう、シャチをやめて人間になろうと宣言していた。その目は覚悟を決めているような真剣な眼差しをしていた。突然の発言に茉莉華は驚き、悲しい顔をした。
「じゃあ、これからはショーなどには参加しないってことだよね・・・・?シャチの姿で・・・・。」
「うん。」
「でも、ピンチの時や遊びたい時くらいに戻れるようにして後は茉莉華と同じ人間として人生を過ごしたいんだ。茉莉華は俺が人間になっても受け入れてくれるか?」とノエルは茉莉華に言った。茉莉華は少し考えてからノエルに答えを出す。
「うん!もちろんだよ・・・!どんな姿になってもノエルはノエルだもん!これからもずっと好きだよ!!」茉莉華は微笑んでノエルを抱きしめた。そして時間は放課後になり、水族館に帰って仕事をした。いつものように水槽を管理して掃除し、餌やりや一緒に遊んだり練習したりなどした。周りの飼育員達も茉莉華とノエルの関係を優しく見守っていた。
「あの子、すっかり茉莉華ちゃんに懐いたわね。」

「そうね。今じゃすっかり恋仲だしね。まるで小説や漫画みたい!」
「茉莉華ちゃんも最初の時より笑顔が多くなったような気がする。きっと和也叔父さんやノエル君のおかげだろうな。」
「そうだね。これからの二人の成長がますます楽しみだよ。」

ー夜ー

「なるほどね・・・・。人の姿になりたいと・・・・。」
「お願い。和也さん!俺を茉莉華と同じ人の姿にしてくれないか!!」ノエルは必死に和也叔父さんにお願いをしていた。
「和也叔父さん、お願いです!ノエルの願いを叶えさせてください!私もリスクなどの覚悟はできています。どうか・・・、お願いします!」茉莉華もノエルを支えるようにお願いしている。二人のお願いに和也叔父さんは両腕を組みながら考えて答えた。
「う~ん・・・、そうだね・・・。二人のお願いとはいえ、生き物が人間になるということは、長所だけじゃなくて重大なリスクもあるからね。この判断は僕じゃできないから、トワさんに判断してもらおうかな。」和也叔父さんはリスク面を考えながらすぐOKは出さなかった。その答えはノエルのことを考えてのことだろう。
「ば、婆ちゃんに・・・⁉」
「よっぽど重大なことなのかな・・・。リスクって・・・・。」二人は不安ながら緊張して唾をごくりと飲んでいた。すると、水槽の中から話を聞いていたノエルの祖母のトワが人間になってプールサイドにあがってきた。
「今の話聞いたわよ。盗み聞きしてごめんなさいねぇ。ノエル、人間になりたいの?」とトワはノエルに尋ねた。

「うん。これから先も茉莉華のことを守りたくて・・・。いつも家族に迷惑かけてすまねぇ・・・・。婆ちゃんも・・・。」ノエルは心の底から申し訳ないという気持ちでいっぱいだ。それでもトワは文句も反論も言わず、ノエルの肩に優しく手を置く。
「そうなのね。そのために人間の姿になりたいのね。でも、その分和也叔父さんが言ってたように重大なリスクがあるのよ。人間になるということはシャチに戻れる期間が今までより少なくなること。そして、ショーには出られなくなるということ。まぁ、出なくなるとは言っても気持ち次第で人魚の姿になることは可能ね。私で許可するのもあれだから、シャチの姿になってお母さん達に聞いてみるわね。」と言い、トワはシャチの姿になってプールに入りノエルの両親にノエルのことについて相談した。茉莉華やノエルは許可がもらえるかと緊張しながら待っていた。そして10分後、トワが再びプールサイドに上がってきた。
「お待たせ。貴方のママなどに聞いたわ。そしたら・・・。」
「「そしたら・・・・」って、ノエルのお母さん達の返事は何と返ってきたんですか?めっちゃ気になる・・・・。」茉莉華は少しドキドキしながらノエルのことを心配している。
「覚悟があるなら人間の姿になって人生を謳歌していいそうよ。お父さんもそう言ってた。」とのトワからの返答に茉莉華とノエルは嬉し泣きしながら喜んだ。
「ノエル・・・・!良かったね!!人間になれるって!!」
「あぁっ・・・・!茉莉華が支えてくれたおかげだぜ・・・!!」喜んでいる二人を見て、和也叔父さんとトワも微笑んでいた。
「ノエル君もまだ中学生くらいの年齢とはいえ、心も成長したな。」
「そうね。ノエルはきっと茉莉華ちゃん達を通して、色んな世界を見てきたのね。人もそうだけど、動物もあっという間に大人になってしまうのは一緒ね。」そしてノエルはその後、トワから人間になる薬を渡されて飲んだ。すると身体は光り、歯の形もギザギザな歯から八重歯に変化した。

「すげぇ・・・・!本当に人になってる・・・!」
「ふふふ。人間の体になったから以上限られることもあるけど、ピンチなことがある時などは人魚形態になるから安心してね。」とトワはノエルにアドバイスをした。ノエルはあまりの嬉しさに涙ぐむ。
「ありがとう・・・。母ちゃん、父ちゃん・・・、婆ちゃん達や弟や妹、茉莉華、和也叔父さんなどの水族館の飼育員達・・・!俺、人の姿になっても頑張る!」

ー9年後ー
こうしてノエルは人間になり、学年が進みながらも茉莉華と共に過ごした。そして時は過ぎ、茉莉華とノエルは22歳の大人になっていた。日付は桜満開の春の4月。今日は茉莉華とノエルが結婚する日だ。来客には水族館の飼育員や中高の時の同級生や後輩や先輩、和也叔父さん達や浜田先生、大学時代の友人などが来ていた。茉莉華もノエルも久々の再会の智香達と会話をした。智香達もそれぞれの仕事で頑張っているようだ。智香は小説家になり、ベストセラーの本を出していて、久彦と交際している。久彦も漁師になり、父親と共に大量に魚を獲っているそうだ。李衣紗は、20歳の時に結婚し、妊娠していて仕事は原宿にあるコスメショップでコスメアドバイザーとして働いている。そして時間は式の時間になり、茉莉華とノエルが登場するまで席に着いた。すると、パイプオルガンの前で牧師が合図する。
「新郎新婦、入場。」とアナウンスすると扉が開き、ウエディング姿の茉莉華とノエルが入場した。席に座っているみんなは祝福の言葉を拍手と共に送った。
「茉莉華ちゃん、ノエル君おめでとう!!」
「永遠にお幸せにな!今度俺の店に来てくれよ!新鮮な魚用意してやるから!!」
「まりかっち、ノエル!素敵だよ~!!」
「二人共おめでとう!先生も嬉しいよ。」茉莉華とノエルは赤いカーペットの上を歩きながら歓迎している親戚や同級生などの人達に笑顔で手を振った。道を歩いて牧師のいるパイプオルガンの前に着いた。牧師は冷静な目で茉莉華とノエルを見て言う。
「茉莉華、ノエル。汝らは健やかなるときも病める時もどんな時もお互い愛し、敬い、永遠の愛を誓いますか?」茉莉華とノエルも牧師の言葉に合わせて凛とした顔で答える。

「はい、誓います。」
「それでは、誓いのキスをー」茉莉華とノエルはお互い向き合い、誓いのキスをした。その後も会場は大盛り上がりだった。

ー4年後ー

結婚式から4年後、茉莉華とノエルは26歳。二人の間には2人の子供が生まれて現在2歳。どちらも茉莉華とノエルそっくりの男の子と女の子だ。名前は男の子のほうが海斗、女の子の方が美波。2人の名前も海系な感じ。海斗は茉莉華のように優しく大人しい性格で、美波はノエルのようなやんちゃっぽい明るい性格。2人の遺伝も引き継いでいるみたい。

「ねぇ、ママ!見てみて!」
「はーい!ちょっと待ってね。今お皿とか洗ったらそっちに行くからね~。」
「こら~!待て~!美波~!!」
「父ちゃんには負けないもんね~!!ww」大きくなってもいつも通り賑やかに日常を過ごしていた。現在も茉莉華とノエルは水族館の飼育員として働いていて、時々子供も手伝いをしているそうだ。ちなみに茉莉華は飼育員でもあるが、和也叔父さんの後を継いで館長として水族館を見守っている。
「なぁ、茉莉華。」
「何?」
「この水族館で出会ったこと覚えているか?」ノエルは茉莉華に出会った頃の事を話し始めた。
「うん。中学の時の話でしょ?覚えているよ。今、思えば「あの時から初恋なんだな」って・・・・私、ノエルに出会えてよかった。ノエルと一緒になれたことも、和也叔父さんが家族の一員として毒親環境だった私を歓迎してくれたこと・・・・・。ノエルにも和也叔父さんにも感謝しないとね。・・・・っ!あっ、思い出したらつい涙が出ちゃった・・・・。」茉莉華は語りながらも嬉し涙みたいなものが目から零れ落ちた。それでも茉莉華は子供の前で泣くのを見せたくないため、笑った顔で誤魔化す。海斗は茉莉華の前に来て問いかけてきた。
「ママ、何で泣いているの?」
「ううん、何も泣いてないよ!ほら、いつも通り元気だよ!!」
すると、ノエルが茉莉華の涙をそっと指ですくいあげた。
「ハハハ、茉莉華は本当に泣き虫だな。」
「だって、あの頃ノエルと会えたことが誰よりも嬉しくて・・・・。つい・・・・。」
「・・・・・そうか。茉莉華、これからもよろしくな。二人で美波や海斗の成長を見守ろうな。」
「うん。こちらこそ、末永くよろしくお願いしますっ・・・・!」
こうして茉莉華とノエルは二人の子供と共に家族の絆を深めながら過ごしていくのであった。
茉莉華にとって、浦海水族館は人生を変えてくれた大切な場所。新たな出会いや希望、絆など大切なことを教えてくれた大きな宝物。茉莉華はこれからも館長としてこの水族館を見守り続け、その後はテレビに出るほど有名になり、自分の人生を書いた書籍を出版した。タイトルは、「愛しのアクアリウム」と、そう名付けた。
彼女のとても大切な宝物は今日も心の中で輝き続けるのであった。

ー終わりー

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ましゅまろまかろん

アニメやゲーム、歴史などが大好きです!歴史は特に戦国時代が大好きです! 特技は絵を描くことと、卓球です。漫画やイラストなど、将来のために色々頑張ります!

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