放課後のチャイムが鳴り響く。ここは地獄の中にある名門校、私立パンデモニウム学園。通称万魔学園。その生徒会室は今日も今日とて混沌に満ち溢れていた。
生徒会長であり傲慢の悪魔ルシファーがホワイトボードの前で指示棒を振るう。
「えー、今度の学園祭の予算配分についてだが…」
「はあ!?オレ様のへるったーアカウントまた炎上とかふざけんな!センスねえバカが燃やしてるだけだろ!オレ様はただ何もいえねー腰抜けの代わりにつぶやいてやっただけだっつーの!!」
ルシファーの言葉を遮ったのはスマートフォンに向かって怒鳴りながらいわゆる「お気持ち表明」をしているのは憤怒の悪魔であるサタンだった。怒りに任せて連続投稿し、ものの数十秒で炎上。それにまたキレる、の繰り返し。
「ん~、この新作フラペチーノ激ヤバ!ヘルスタのストーリー上げよ。てか会長、お茶菓子さっきので終わり?ウチ購買でパン買ってきてもいい?お腹すいたし~」
フラペチーノを飲みながらお腹の音を響かせているのは暴食の悪魔ベルゼブブ。彼女は全員分用意されていたお茶菓子を一人で食べつくしてしまっていた。
「zzz…むにゃ…学園祭とかめんどくさい…わたしは保健室のベッドとお友達になるから適当に進めといて…」
ソファを占領して半分寝ながら答えるのは怠惰の悪魔ベルフェゴール。持参したブランケットにくるまっている姿はミノムシのようだ。
「お前たち…」
ルシファーがこめかみをぴくぴくと引きつらせたその時。
「やあ。遅れてごめんね~。廊下で僕のファンの子たちに囲まれちゃってさ。みんな僕の愛を求めてるんだね、困ったことに」
甘い香りをまき散らしながら入ってきたのは風紀委員長(存在が風紀を乱している)であり色欲の悪魔アスモデウスだった。シャツのボタンを三つほど開け、フェロモンを全開にしている。
「今朝ネクタイを締めてやったというのに…まあいい。お前の全ては私の管理下にある。ルシファー、予算の話だったか?私の会計帳簿は完璧だ。多少私の個人的な資産運用に流用しているが問題ないだろう?」
アスモデウスの後ろに立っているのは強欲の悪魔マモン。彼の手首には校則違反ギリギリの高級腕時計がついており、これ見よがしに主張していた。
「問題大ありだ!!貴様ら、ここをどこだと思っている!神聖な生徒会室だぞ!サタンはスマホを置け!ベルゼブブは食べるのをやめろ!ベルフェゴールは起きろ!アスモデウスはシャツを着崩すな!そしてマモンは横領を堂々と自白するな!」
「…うう、会長の声大きい…頭痛くなる…」
「オレ様に指図すんな!」
「え~でもお腹すいたし~」
カオスが極まる中、生徒会室の隅にいた嫉妬の悪魔レヴィアタンが叫ぶ。
「ずるい、なんでまたアスモの隣マモン先輩なの!いくら付き合ってるからっていつもいつもいつも!」
「レヴィ、そこにいたのかい?おいでよ、レヴィのことも僕は大好きだよ」
「アスモは誰にでも好きっていうから信用できない!」
「…はあ」
ルシファーは奈落より深い、深いため息をついた。学園の秩序を保つよりもこの七大罪の生徒会をまとめる方がよほど骨の折れる仕事だと痛感しながら。
「今日の会議は解散だ。私は胃薬を飲んでくる…」
哀れな生徒会長の背中を見送ることもせず、大罪を司る高校生たちの騒がしい放課後は続いていくのであった。
