私、唯と彼、真人と出会ったのは17歳の春、1歳下の真人は部活の後輩だっ
た。
私が毎日、お弁当を手作りしていると知った真人は
「先輩!俺に弁当を作って下さいよー。毎日、購買のパンで飽きたよー!」
「しょうがないなぁ。」
私はそれから、真人のお弁当を作るようになった。
毎日、お昼休みを一緒に過ごしているうちに色々なことを話すようになり、いつ
からか、周りからカップルと言われるようになった。
「カップルじゃないよ。付き合ってもいないし。」
照れくさそうに真人は言った。
私は
「そうだよねぇ。」
と複雑な気持ちだった。
翌年、一足先に東京の大学に行くことになった私は
「来年の光のページェントの季節に帰省するから、また、会おうね。」
と言って真人と故郷を離れた。
真人は
「先輩必ず帰ってきてくださいね?俺、プレゼント買って待っていますから。」
と言って新幹線に乗る私に手を振った。
私は翌年の光のページェントの季節に約束通り帰って来た。
街はカップルで溢れていた。
私は久しぶりに真人に連絡しようと電話を掛けた。
「もしもし、佐藤さんのお宅ですか?」
「はい、そうです。」
「私は遠藤と申しますが真人さんはいらっしゃいますか?」
「真人・・・。」
「はい、真人さんです。」
「遠藤さんですよね?」
「はい、遠藤唯と申します。」
「真人は今・・・、電話に出ることが出来ません。私は真人の姉ですが、一度、お会いすることは出来ませんか?」
「はい、わかりました。」
私は何もわからないまま、真人のお姉さんに会うことになった。
週末の街は親子連れの人々でにぎやかだった。
駅前のカフェで待ち合わせをした私たちだったが
「ちょっと、歩かない?」
そう、お姉さんに言われて、一緒に街を歩きだした。
ちょうど、光のページェントが行われている通りに来ると
「真人はね、先月、亡くなったの・・・。」
お姉さんは突然、私に言った。
「・・・。」
私は何も言うことが出来なかった。
「真人はね、癌だったの。見つかった時にはもう、末期で・・。」
「真人が癌・・・?」
「そう、あの元気だった真人は癌で亡くなってしまったの。」
唖然として、涙も出ない私にお姉さんは
「これをあなたに・・・、真人から預かったわ。」
真人のお姉さんは小箱を私に差し出した。
すこし、通りを歩くとお姉さんは
「今日は来てくれて、ありがとう。あなたには幸せになって欲しいわ。」
そう言ってお姉さんは街の中に消えていった。
お姉さんと別れた私はまだ、真人の死が受け入れられず、しばらく光のページェントを見つめていた。
そして、真人の言葉を思い出した。
「そう言えば、真人と約束したんだっけ。」
私は小箱開けてみると中にはスノードームが入っていた。
「真人のプレゼントってこれだったのね?」
まるで、私の心に降り積もる雪の様にスノードームに雪が静かに降り積もってい
た。
あれから10年、私は結婚し子供が出来た今もその時のスノードームが部屋に飾っている。
「お母さん、このガラスの玉、綺麗だね?」
「そうだね。」
「本当に雪が降っているみたいだね?」