カラ吉の春夏秋冬

弘前城が見える電線の上に、カラスのカラ吉はとまっていた。仲間と楽しくふざけあいながら、夕暮れ時に「ギャアギャア」、「カアカア」鳴くのが楽しいのである。

カラ吉は生まれも育ちも弘前。ほかの旅カラスから聞いたところによると、弘前は寒いところらしい。

でも見どころはたくさんあるとカラ吉は思う。

特にカラ吉が暮らす弘前城周辺では、いろんなイベントがあるのだ。

例えば、桜祭り。
桜祭りで人間たちは浮かれ騒ぐ。それはカラスたちだって一緒だ。
弘前城の桜は天下一品。
しかもカラスは天守閣のあるエリアも無料で入れるし、人間たちは屋台で食べ物を買って、ボロボロ落とすからカラ吉もおこぼれがもらえる。桜はきれいだし、夜桜なんか酔っぱらいそうなほど、うっとりとした心地になる。(まあ、カラスはお酒を飲む機会がないから、酔っぱらわない。屋台でお酒を飲んだり、花見でお酒を飲んだりしている人間を観察しているからそういう表現を使ってみた)
また、花筏という、お堀の水にたまった桜の花びらを観るのも乙なもんだとカラ吉は思う。

例えば、ねぶた祭。
「やーやどー」の掛け声とともに、たくさんの人間が大きな山車を引っ張って練り歩くのが見れる。
これは「ねぷた祭」というお祭りらしい。扇形の大きな山車には勇ましい武者やきれいな女性が迫力のあるタッチで描かれている。太鼓の音もドンドン響いて胸が高鳴る。弘前城の前の通りにもやってくるのだから、カラ吉はいつも電柱の上から見ている。
ちなみにこのとき、実は密かにカラ吉も「やーやどー」と言っている。(うまく発音できなくて「カーカカア」になってしまうのだが)

例えば、菊人形祭。
きれいな菊が弘前城のある公園内にたくさん飾られる。紫、白、ピンク、黄色…いろんな色の菊があって楽しい。
まるで着物のように鮮やかな菊は、真っ黒なカラ吉にとって憧れの花だ。できればいつか、カラフルな袴姿になってみたいと夢見ている。仲間のカラスたちは大半、自分の黒い色を誇りに思っているため、カラ吉の話を笑ってくる。でも時々、カラ吉の気持ちをわかってくれるカラスもいて、そのカラスとは親友である。

例えば、雪祭。
弘前はたくさん雪が降る。人間は大変そうだけど、カラ吉は雪が好きだ。雪の上でスキップをして遊ぶこともある。ふかふかで気持ちがいい。誰も踏んでいない雪の上をチョンチョン跳ねるのは、とっても快感。「一番乗り!」と言ってはしゃいでしまう。
弘前城の天守閣エリアで、たくさんの雪で小さな像を作ったりしているのをたまに見る。弘前城はいつだってかっこいいのだが、雪に囲まれている姿は幻想的だ。人間は雪がすごい時にはあまり来ない。だから、カラ吉は自由に弘前城の公園も天守閣エリアも闊歩できる。

こういうわけで、カラ吉は弘前が大好きなのだ。人間たちはカラスを怖がったり、嫌がったりすることもあるけれども。

今日も弘前城を見ながら、黄昏時にみんなで合唱する。
春夏秋冬、カラ吉は弘前城で暮らしているから、良かったら会いに来てほしい。

夕暮れ時に「ギャアギャア」「カアカア」鳴いているカラ吉を、弘前城の近くで見られるかもしれない。

終わり

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テオ

はじめまして。テオと申します。自閉症スペクトラム障害(ASD)です。主に物語とエッセイを書きます。よろしくお願いします。

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