狼の恋は実るのか

虹色王国のわたがし村に、ピピという女の子がいます。ピピは村でも有名なかわいい子で、お母さんに作ってもらった赤い頭巾をいつもかぶっています。そのため、ピピのあだ名は「赤ずきん」でした。

ピピには魔女のおばあさんがいます。おばあさんはわたがし村の近くにある森の中で暮らしていました。ピピはときどきお母さんにワインとケーキを持たせてもらって、おばあさんのおうちに通っているのです。

森の動物たちは、ピピと仲良しです。特に狼さんはピピが来ると、すぐに森の入り口まで走って行って、ピピと一緒におばあさんのおうちまで行くのです。

実は狼さんは、ピピに恋をしています。ピピを一目見たときから、「かわいいなあ」と思って、話しかける機会をずっと待っていたものでした。

狼さんがピピと話すきっかけになった出来事があります。
それはピピが森に来て3回目のときのことです。

乱暴者のクマさんが、ピピをびっくりさせようと襲い掛かったのでした。ピピはすっかり怖がって、その場にへたり込んでしまいました。
そこへ、陰からピピを見守っていた狼さんがさっそうと現れ、クマさんに怒って追い払ったのです。

ピピは狼さんに感激してお礼を言い、こうして狼さんとピピはお友達になったのでした。

「また、クマさんが驚かせにくるかもしれないから」と狼さんは言って、ピピのボディーガードになりました。
とは言ってもこれはやっぱり口実で、狼さんができるだけピピと一緒にいたかったからということはお分かりになりますよね。

おばあさんのおうちに行く道すがら、狼さんはピピとたくさんお話をしました。

「おやおや、ピピのボーイフレンドかい?」
おばあさんの家に着くと、おばあさんがそう言って二人をからかったものです。

狼さんはピピをどうしても喜ばせたくて、ある日、森の中にあるお花畑にピピを連れて行きました。

赤、青、白、ピンク、黄色、紫…たくさんの色とりどりの花が咲き乱れています。ピピは驚いて、そして喜び、お花を摘み始めました。

「おばあさんが喜ぶわ。狼さん、ありがとう」
そう言ってピピが微笑むと、狼さんは嬉しくて天に昇りそうな気持ちになりました。

ピピがせっせと花を摘んでいる傍ら、狼さんは、じっとピピのことを見つめていました。狼さんはお花よりもピピの方がかわいいと思っていました。もうピピに夢中なのです。

しばらく時間が経つと、ピピは摘んだ花の半分を持っているバスケットに入れ、もう半分で花冠を作り始めました。

「お花は摘んだのに、花冠も作るのかい?」
狼さんが気になって尋ねますが、ピピは「秘密よ」と言って笑うだけで答えません。

狼さんは少しもやもやしましたが、「まあ、どうせおばあさんにあげるんだろう」と思い直して、じっとその場でピピを見ていました。

花冠が完成すると、ピピは狼さんをじっと見つめ返しました。狼さんはドキッとして目をそらしました。心臓がドキドキするのを感じます。見られていたのがわかったのでしょうか?

「これ、狼さんにあげるわ!」とピピは狼さんの頭の上にふわりと花冠を乗せました。

狼さんはびっくりして、目をパチクリさせました。
信じられない!ピピにプレゼントをもらえるなんて…。

「ぼくに?いいの?」

「もちろんよ。いつもありがとう」

狼さんは舞い上がりそうなほどに嬉しくなって、ワォーンと大きく吠えました。

この日の狼さんの雄たけびで、森の動物たちは何が起こったのか悟りました。

実は森の動物たちは狼さんのピピに対する気持ちを知っていました。だから、陰ながら応援していたのです。

ピピと狼さんが仲良くなったきっかけにも仕掛けがあります。
なかなかピピに話しかけられない狼さんに業を煮やしたクマさんが、芝居で乱暴にふるまい、ピピを驚かせたのでした。(ピピと仲良くなれた日、狼さんはことの真相を知ってクマさんに泣いて感謝をしたのはここだけの話です)

狼さんとピピが一緒に歩いているときは、邪魔をしないように森の動物たちが誰も道を遮らないようにしました。二人を邪魔しないように木の陰から、そっと見守っているのです。


ちなみに、花畑の話を狼さんに教えたのは、おしゃれ好きなウサギさんです。
狼さんはあまりおしゃれやかわいいものに疎いので、アドバイスが必要でした。

また、ピピのおばあさんもピピと狼さんがお似合いだと思い、お節介を焼こうとしていました。

さらに「狼さんとピピをくっつける会」を森の仲間たちとピピのおばあさんは先日発足しました(ピピのおばあさんは会長)。

ピピと狼さんをいい雰囲気にするために、ピピのおばあさんはお菓子の家を作っています。

「二人が来たら、お茶でも出しておやつをたらふく食べさせよう。お菓子の家なら話題作りにもなるわよね」とおばあさんはニヤニヤ笑うのでした。

そうとも知らず、ピピは狼さんと楽しくしながら花畑でお話をしています。

花畑の近くの木々の裏では、狼さんに向かって「もっと時間をもたせろ」とサインを出しているキツネさんやシカさんがいます。「お菓子の家ができるまでもうすこしかかる!」
でも舞い上がっている狼さんに見えているのかは定かではない様子です。

お菓子の家ができるまであと、3分。

ピピと狼さんが花畑を出発するまで、あと何分でしょうか。

この恋の行方はどうなるのでしょう。

虹色王国は、今日も平和です。

終わり

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テオ

はじめまして。テオと申します。自閉症スペクトラム障害(ASD)です。主に物語とエッセイを書きます。よろしくお願いします。

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