かつての蒼い日記帳53-適切な評価と不適正な審査論-

私が望む現実の形を今こそ作り上げていきたいと思う。

彼は聴衆に向けて一切の保険をかけない言葉で話を切り出した。

講堂に集まった聴衆たちはあまりにも抽象的な切り出しで話が始まったことに動揺し、お互いに顔を見合わせている。

ざわつきが収まらない様子の聴衆に向けて彼は努めて冷静に一言語りかけた。

「私の考えるこの計画にはすでに多くの賛同が得られており、一定の実務的評価もされている。この現状を見て尚私の言葉が疑わしいと判断された方は現時点での利益分をお支払いするので速やかにこの場を退出してもらいたい。」

彼の一方的通達に対してより騒がしくなった講堂内の熱量は一気に跳ね上がって暴動さながらの激情が吹き上がっている。

気分を害した一部の投資家たちはあまりにも不躾な彼の言いぐさに対して激高し、この場を荒れた足音とともに立ち去っていく。

その様子を見て聴衆たちはどの行動が正解になるのか現状の最適解がどこにあるのか検討し始めているように見えた。

壇上の彼は地獄そのもののような欲望と敵意が渦巻くこの講堂の現状を何とも嬉しそうな表情で見下ろしている。

自分こそがこの穢れたこの世界に理想的な希望を打ち立てられるという確信の元に。

「それでプレゼンの反応が良かったと満足そうにしていたのね。ふむわりとガチな説教が必要なようだね我がチーフは。」

沙耶は得られた賛同と買ってしまった喧嘩や不評を天秤にかけて眉をひそめる。

報告を届けた部下の男はその不穏な空気を読み取って居心地の悪さに身を竦めていた。

部署の中もこれからどのような無茶ぶりが指示されるのか気が気でない様子で、淀んだ雰囲気が皆の業務効率を下げているのが目に見えてわかるレベルに達している。

それでも意思決定が下されなければ最低限の権利すらこれから保障されない見通しだ。

毎回のその暗黙の了解はこの場の誰もがわかっていることではあるが慣れることができる類のモノではない。

何とか許容できる範囲内の段取りにしてくれればいいな…

部署内の空気に刻印されているその願いを汲んでもらえることはまず無いことを誰もが知っていながら皆それを願わずにはいられない。

地獄行軍をしなくていいならそれに越したことはないからだ。

その思いが届いているかどうか怪しい沙耶は今回の段取りを決定して通達する。

「まずは賛同してもらったところからフォローしていくけど買った喧嘩も放ってはおけないわ。淡々と宣戦布告を済ました後は殲滅戦よ…終わった後のバカンスは用意しておくから今回も頑張りましょう!」

今回も願いを無下にされた部署メンバーは毎度の失望と落胆を刻み込まれながらも非常事態体制に切り替え、各々が自らの役目に準じていく。

いつか心安らかな日常にたどり着けることを夢見て。

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しなちー

アニメやライトノベルを1990年代から没頭している古参オタクです。 様々な作品から感じた事や個人的創作論、私なりの世界観を舞台としたショートストーリーなどを発信していきたいと思います! よろしくお願いします!

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