不思議図書館・番外編[スケートを体験!]

「スケート、してみたいな。」

むつぎの一言から、それは始まった。図書館の司書であるむつぎは外に出られない上、部屋をスケートリンクにするという大掛かりな改変は出来ない。

「みるちゃn「絶っ対にイヤ。」

「諦めな、むつぎ。みるは氷の上が大嫌いだから。」

「えっ、そうなの?みる?」

「サラミ…そういうことは言わなくていいのっ。」

「えー、あたしはやってみたいなぁ。クルクル〜って回るやつとか!」

みるは断固拒否、イミアは興味津々、サラミはどうでも良さそうだ。

「それなら、私の出番のようね?」

浮かび上がるようにスーッと姿を現して言ったのは、本の修理者・ユリドール…ユリィだった。

「ユリィ様!」「先生!」「ユリィさん…」「うげっ、師匠……ギャー!!」

むつぎ・イミアは驚きと喜び、サラミは困惑した表情をし、そして即座にその場から逃げようとしたみるは、ユリィにガシッ!!と掴まれる。

「この部屋を一時的に、スケートリンクに構築してあげるわ。はい。」

ユリィが指をパチンと鳴らすと、4人がいた休憩部屋はスケートリンクに早変わりした。しかも大会などで使用する大きな設備のもの。

「あっちに靴とか服とか男女の更衣室とかもあるから、好きに使ってみてちょうだい。」

「さすがは先生!!ありがとうございます!!いこっ、サラミ、みる。」

「しょうがないな~。」

「2人で行ってきて。私はここで師匠と見てるから。」

「もう、みるったら…。やってみればいいのに。」

イミアはユリィの技に感激しつつ、サラミとみるを誘うが、やはりみるは動かなかった。仕方なくイミアとサラミだけで女性用のスケート用具を見に行く。むつぎはそれを気にしつつも、特に何も言わずに男性用を見に行った。

「…やってみたら良かったのに。」

「イヤです。師匠も私の氷嫌いと寒さ嫌いは知っているでしょう?」

「ええ、もちろん。でも、それをよく知っているのは…今は私だけよ。」

「そうだけど…。」

やがて冬服に着替えた3人がスケート靴を持って戻り、靴を履いてリンクに立とうとする。

「わ!わ!…思ったよりむずかしいんだ…。」

「え?カンタンじゃん。ほーら。」

上手く氷の上に立てないイミアに対して、元ネコなサラミは流石といっていいほどのバランス感覚で、もうリンク上をスイスイ滑っていた。

「うーん、やっぱりサラミには負けるな。」

「むつぎさんだって立てているじゃない。」

「本当に立っているだけ。手を貸そうか?イミアちゃん。」

「足が冷たくないっていいなー。」

みんなが氷の上でワイワイ楽しそうにしているのを見ているだけのみるは、とても不機嫌そうにしている。

「・・・みる、ちょっと。」

ユリィが手招きしてみるを呼ぶと、何やらコソコソと耳打ちしてきた。それを聞いて、みるはハッとした表情になる。

「さすがは師匠!そういうことに関しては天才!」

「また頬っぺたをつねられたいのかしら?みる?」

「いえ!すぐに実行して来ます!!」

ユリィから悪寒がしたみるは、颯爽と更衣室へと駆けていった。

…数分後。

「やったぁ!立てた!」

「良かったね。次は滑るのを…」

「私もスケート、やるわ!!」

そこには防寒対策バッチリでスケート靴を履き、氷の上に仁王立ちをしているみるの姿が。

「みる!?あんなにイヤがっていたのに…しかももう立ってるなんて…!」

「それだけじゃないわ。」

みるは優雅にスイスイ滑り始め、華麗にターンまで決めた。

「どう?イミア、むつぎ、私のスケート。」

「すっごいよ!みる!」

「…ユリィ様?」

「いえ、私は何も。」

「…サラミ?」

「アタシは知らん。」

「ふっふーん!むつぎ〜、観念して私を褒め称えなさい。ほらほら。」

「ただ・・・なんか、みるの背中に変な気配を感じるんだけど。みる、もしかして…浮いてる?」

サラミの一言に、みるは凍りついたように固まって止まる。

「み~る~?」「みるちゃ〜ん?」

「だ、だって〜・・・う〜・・・ゴメンナサイ。」

イミアとむつぎに怒り顔をされたみるは、小さい身体を更に縮めて謝った。

するとニコニコしながら見ていたユリィが、表情を変えずにむつぎに向けて人差し指を立て、スーッと右から左へ動かす。

「うわっ!?」

その瞬間、むつぎはスッテーンと滑って転び、大きな尻餅を付いてしまった。

「あらあら。ダメじゃない、むつぎ。いくらここが「図書館の中」でもズルはいけないわ。」

「「あ・・・!!」」

3人はユリィの言葉でハッと気付く。そう、いくらユリィが作った空間でも、ここは図書館の中。つまりむつぎは自由に移動できる。みるよりも自然に浮くことだって可能だ。

「む~つ~ぎ~?」

「だ、だって…意外と滑って立てなくて…ほら、言い出した手前、転んでばかりとかイミアちゃんやユリィ様に悪いし?」

「私に悪いと思わんのかいっ!!師匠、雪!」

「はい、ほどほどにね。」

キレたみるがユリィに言うと、みるの足元に雪がドサッと現れ、みるは次々雪玉を作ってむつぎに投げ始める。ついでにサラミも投げ始めた。

「アタシも含まれなかったからやるぞ。」

「うわああ!!ちょっ…何するんだ!!」

「雪合戦よ!!」

「お、俺の読んだ雪合戦と違うんだけど!?ちょっ!飛ぶのはやめろー!!」

「これが弾幕ってヤツよ!!」

「多分ちょっと違う気がするけど…ほれほれほれー。」

スケートリンクは雪合戦会場(むつぎが的)になり、最早スケートどころではなくなってしまう。その光景をイミアとユリィは眺めているだけしかない。

「みんな台無しだよ〜…先生~。」

「うふふ、楽しそうで何より。わざわざ来た甲斐があったわ。さぁ、こたつでお茶にしましょうね?」

「せんせい~!!」

ユリィはイミアを連れて別室に行き、雪合戦は数十分後にユリィの力が消えて、スケートリンクごと無くなるまで続いたのだった。

終わる。or クリップで留める。

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メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

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