俺はこの不思議図書館・司書のむつぎ。この図書館と中に保管している本の数々を管理している。
本と一口に言っても、種類は数多く、作られた理由も数多い。
中には禁書指定してある本も少なくは無い。
禁書指定とは、一般的に読むことを禁止されている本のこと。危険な魔導書とか、読むだけで呪われる本とか、世界に大きな損害を与えるきっかけとなった危ない思想の本とか。
俺にはあまりわからないけど、禁書を「観て来た」みるが本から出た後は顔面蒼白で、しばらくぐったりしていた。それでもたまに禁書に手を出して観るのだから、みるの行動はわからない。許可したのは俺だけど。
そんな、みるでも手を出さない禁書の1冊が、このアルバム。通称「狂気のアルバム」。
・・・何が狂気かって?
アルバム…写真入れの本って、だいたい思い出とか、時代背景とか、歴史とか、後世まで残したいから残すよね?…確かにこれも、持ち主は残したかったんだろうけどさ。
このアルバムには・・・・・あらゆる殺人現場を収めた写真が入っているんだ。
流血や惨殺なんて甘いくらいの、あらゆる殺し方をして死んだ、あるいは死ぬ直前の被害者の姿を写してある。
狂気とは名付けてあるけど、ある意味コレをキレイと言う者も居るみたいだね。真っ白い雪に流れる真っ赤な血の色とか、普段は見られない身体の部位とか、必死に生にしがみついている様とか、大切な人を助けようと動いて一緒に死んでしまったりとか。
・・・大丈夫?気分が悪いなら聞かなくてもいいよ。俺の独り言だし。
そんなヤツら、頭がおかしい?・・・そうだね、そう思うのは間違いじゃない。
でも、絶対に間違っているとも言えない。何故なら一定の支持者がいるから。彼らにはそれが正しくキレイと思うモノなのだから。…イミアが聞いたら大変なことになりそうだな、あのコは正義感が強いし、ウソを付いても顔は正直だし。
…俺にはどれが正しいかなんてわからない。図書館から外に出たことが無いから、このアルバムが絶対に禁書なのか、本当は間違いなのか、わからない。ただ保管するだけだ。
本になっている以上、本にしたいと思った者がいるのだから。アルバムに残したいと思って残したのだから。それが例え、お金や別の悪意ある目的があったとしても。
禁書は禁書専用の部屋にしっかりと保管しているし、みるが観られないなら、修理者のユリィ様に何とかしてもらうしかない。
ここに流れ着いた本は、みんなこの図書館に在るべきとされている。それを俺は守る、どんな風に生まれた本でも。…俺の考えに対しての本の真意は知らないが、その為のみるだし。
俺は狂気のアルバムを禁書専用の部屋の本棚に戻し、部屋を出てカギをしっかりと掛けた。
ーーーもし、みる達があのアルバムの写真のようになってしまったら、俺はどうなるのだろう。悲しみ、怒り、寂しさ、恐怖?そんな感情が爆発するのか?
爆発したら・・・どうなるのか・・・
『やめなさい。それは司書の貴方には、不要です。』
いつだったろうか、ユリィ様にそう言われたのは。
思い出せない。
じゃあ、コレを考えるのはやめよう。俺はこの図書館の司書でいたいから。
・・・ずっと、永遠に、このままで。
終わる。or クリップで留める。