※最後に注意書きがあります※
ここは、あらゆる本が置いてある不思議図書館。図書館司書の「むつぎ」は、今日も、その本を手にして開く。
ー今日の本は、どんな本でしょうか?ー
…昔むかし、あるところに1つの国がありました。ある日、国の小さな村の入口に、双子の赤子が捨てられているのを村人が見つけました。
ゆらゆら揺れる揺り籠の中には、赤子2人と手紙が入っています。
【金色の髪の子が姉、銀色の髪の子が妹です。】
村人は村長にそれを伝え、不憫に思った村長は赤子の親代わりになるべく、双子を村の教会に連れて行きました。
教会では親権の手続き、そして神官から祝福を貰うことができます。祝福は子の誕生や結婚などの祝い事の時に、神官が神様に幸せを祈ること。その時ごく稀に神託を受けることがあるが、何十年に一度あるか無いかしかありません。
神官が祝福を祈ると、村長にこう告げました。
「そ、村長様、この双子の姉妹は…神に至る力を持つ子…【神娘(みこ)】です!!」
「な、な、なんじゃとーー!?」
神官からとんでもないことを告げられた村長は、驚いてギックリ腰になりました。
念の為にと村長の代わりに、神官が双子を連れて国の王都の大神殿に行き、もっと位の高い神官に祝福を祈ってもらいましたが、誰が祈っても双子は神娘である、と神託を受けるだけでした。
それから双子は、金色の髪の姉を【金神娘・ソル】、銀色の髪の妹を【銀神娘・シル】と名付けられました。双子の事は国だけではなく、隣国、そのまた隣国と世界中に広まり、人々は双子を大切に育てようと決めました。
…双子が名付けられてから7年後、双子は神娘の頭角を現し始めました。
金髪の姉・ソルは、傷を癒し、活力を与える「生」の力。
銀髪の妹・シルは、どんなものでも命と力を奪う「死」の力。
ソルは人々だけではなく、大地や植物にも生きる力を与えて、畑や果物で沢山採れるように。
シルは、嵐や吹雪などの天災や、病気の元となる病原体の力を奪い、災害や流行り病を防ぎました。
双子の神娘姉妹のおかげで、世界の人々は豊かで平和な生活をおくれました。
しかし、人々は欲深く、残酷でした。
やがて人々は双子の力を独占、悪用しようと模索し始め、幾度も失敗を重ねました。人々の募る焦りや苛立ちの矛先は、銀神娘…死の力を持つ妹のシルに向けられました。
人々にとって真っ先に脅威になり得るとされたのは、妹のシルだったからです。
ありもしないウソや罪を全てシルの力のせいにし、シルの死の力は恐怖の象徴だ、と人々は決めつけました。
シルに近寄ると、死ぬ。そう言われ、誰もがそう思うようになった頃、唯一それを否定し味方をしていた姉のソルが、人々によってずっと一緒だった妹と離されてしまいました。
それからソルの生活は一変。攻撃ができるシルから離されたことで、人々はソルを馬車馬のように働かせました。
「逆らったら、妹の身がどうなるかな。」
人々はそう言ってソルを脅し、言うことを聞かせました。
もちろん、同じことをシルにも言い、姉の身を盾にしてシルを兵器のように扱いました。
双子の姉妹を使い、人々は貪欲に、動物も自然も、そして人ならざる者さえも思い通りに支配していきました。
…双子の姉妹が名付けられてから15年後。ついにそれは起きました。
神娘は「神に至る力を持つ」という言葉通り、銀神娘…妹のシルが死を司る神に成ったのです。
シルが銀色の大鎌を振るうと、大地は裂け、海は荒れ、強風は収まらず、気温はどんどん低くなっていきました。
人々は全力でシルを倒しにかかり、戦いは7日間、昼夜問わず続きました。
そしてついに人々はシルを打ち倒しました。やっと解放され、倒れたシルに駆け寄ったソルでしたが、既にシルの息は絶えており、ソルは泣き崩れました。
そんな姉の姿など目もくれず、人々は異変に恐怖していました。
シルを倒したのに、災害が収まらないのです。
慌てふためく人々に、ソルは言いました。
「シルが死を与えたのは「この世界」です。貴方達は、この世界の力を使いすぎました。死にかけの世界に、シルは安らかなる死を与えたのです。」
困惑と怒りがソルに向けられ、元に戻せ!!と人々は怒号を飛ばします。しかしソルは首を横に振りました。
「死んだ者は生き返りません。それは「世界の理(ことわり)」。私が死者を蘇らせたことが無いように。…もし出来たのなら、こんな世界よりも真っ先に妹を生き返すでしょう。」
ソルはそう言うと、真っ白な翼を広げ、シルの亡骸を抱えて天の彼方へと飛び去っていきました。
実はソルも生を司る神に成っていたのですが、それを知っていたのは妹のシルだけ。
・・・やがて、双子がいた世界は滅びました。
金髪の姉は、妹と滅びた世界の種を持って飛んでいきました。
世界の種はどこかで芽吹き、新しい世界に生まれ変わるでしょう。
暖かい金色の太陽と、優しい銀色の月に見守られて。
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「ねぇ、シルの願い事ってなぁに?」
「…叶うなら、今度は双子じゃなくて「1人」になりたい。ソルと2人じゃなく、ソルと1人に。」
「同じ!私もシルとずっと一緒の「1人」になりたい。」
「お星さまにお願いしようか、ソル。」
「うん、お願いしよう!シル。」
双子の姉妹は、夜空の星に一緒に願いました・・・
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※この先から「不思議図書館」のキャラ達の話を主にした物語「不思議図書館・索(さく)」が展開されます!(タイトル画像にも「索」がつきます。)
普段の「不思議図書館」や「番外編」は継続しますので、ご安心ください。
キャラ達の話とか興味ないという方はブラウザバックを推奨します。
みたいという方は更に↓へ。
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むつぎは読み終えたその本をよく読み返す本の棚に戻した。もう何十、何百とこの本を読み返し、姉妹や人々や世界について考える。なぜそうするかと言うと、この本だけは、みるが「観て」くれないから。どうして、なぜ、呪いの類があるわけでもないのに。かなり問い詰めたが、みるはこう返すだけ。
「だって、もう散々「みた」もの。」
いつもそう言う、みるの表情は…哀しげだった。
終わる。or 不思議図書館・索へ行く。