地球に着くとエリゼはJBSL(Japan brain science laboratory)に真っ先に向かった。
「研究室の瀬良 光人(みつと)はいますでしょうか?私は娘のエリゼです。」
「少々お待ち下さい。」
暫くして、エリゼの父、光人はやって来た。
「これは珍しい人が来たもんだ。」
「お父さん、お願いがあるの。」
「これまた、珍しい、エリゼが僕にお願いがあるなんて。」
「いままでのことは謝ります。私の我が儘でした。家に戻ります。」
「どうした?どういう風の吹きまわしなんだ?」
「何と言われても、私はお父さんにしかお願い出来ないのです。」
「そんなに、難しい事なのか?」
「ブレーンの開発に携わっているお父さんにしか出来ないことなんです。」
「そうか、お前がそう言うなら私が力になろう。」
「ありがとう。このブレーンをこのオルゴールと融合させて欲しいの。」
「このブレーンを?しかし・・・。」
「お父さんの言いたいことは分かります。ブレーンを私的に利用しては成らないということ。」
「ならどうして?」
「このブレーンは戦死しているからです。つまり、登録から抹消されているということです。」
「ブレーンが死んでしまったのでは・・・。」
「このブレーンは死んでいません。しかし、このままにしていたら、確実に死でしまいます。」
「分かった。だけど、なぜ?このオルゴールと?」
「このオルゴールの曲は亡くなったお母さんが私に生前、下さったものです。」
「このオルゴールは僕がお前が生まれた時に母さんにプレゼントしたものだよ。」
「知っています。このオルゴールの曲が『エリーゼの為に』、つまり、私に向けた曲であることも・・・。」
「そうか。」
「私は2つの大事な物を一緒にしたいのです。お願いです、お父さん。私を助けて下さい。」
「大事なエリゼの頼みを断るわけにいかない。私に任せなさい。」
「ありがとう。お父さん。」
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それから1週間後、父に呼び出されたエリゼはブレーンとオルゴールが融合した小箱を手渡された。
「お父さん、ありがとう。」
「今度、お願い事が無くてもいいから一緒に食事をしよう。」
そいう父の言葉に
「お父さんが食事?珍しいわ(笑)。」
「お前だって、珍しく私に頼んだだろう?」
「そうだね。おあいこだわ。」
2人は久し振りに優しい笑顔になった。
「お父さんに聞きたい事があるの。」
「何だ?」
「オルゴールの中に有った2つの緑色したブレスレットの事なんだけど。」
「ああ、そのブレスレットの事は簡単に説明は出来ないから、今度ゆっくりと話してあげるよ。」
「分かったわ。楽しみにしている。」
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「エリゼちゃん、遊ぼうよ。」
「いいわよ。」
「へっ?」
「だからいいわよ。」
「えっっっっ!!」
「何、驚いてるの?もちろん、プラトンとアドラーも一緒よ。」
「そうか・・・↴」
「二人っきりだと思った?」
「いやー、そうだよね?それがいいよね?そうしよう。」
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智也とエリゼがお互いを大事な人だと自覚するまでに、後、数年の時間が過ぎるだろう。
だけれど、太古からの絆の糸に比べたらたいした時間の経過ではないのかもしれない。
それは形が変わった愛かもしれない。
しかし、根底には相手を思いやる気持ちが変わらずにある事を私たちは知っている。
限りない未来と共に・・・。
―― END ――