「あと一時間で着くぞ~。」先生のお知らせがバスの中に響く。今日は校外
学習で博物館に行く予定だ。「これだけ回るのには時間が足りないな。」隣の
席のキツネの様な耳、上顎の歯を丸出しにしている友達が博物館のマップを
見ながら呟いた。「異種族が多いからねぇ。仕方ないよ。」後ろの席にいる
フシオ君がマップを覗いてきた。「人間族の歴史とか初めてだからワクワク
するな。」僕としてはナナシ族の歴史が一番の楽しみだ。

「だけど歴史と言ってもどの時代だろう?」「種の起源から現代までやるらしい
から相当気が遠くなるな。」一時間後、目的地の博物館に着いた。「今日は歴史
研究会の有名な博士、ノネー博士に来てもらったぞ。」どうやらノネー博士は
友達と同じナナシ族のようだ。「あれ?あいつじゃねぇか。」友達は
頭を傾げた。「知り合い?」「フシオ、あいつは私のいとこだ。」こちらに
気づいたのかノネー博士がやってきた。「よぉ。まさかこんなところで会う
なんてな。おばさんは元気か?」「元気にゲーム開発しているよ。私もお前に
会うとは思わなかった。」

「ノネー博士、こいつと違って下顎の歯が丸出しなんですね。」フシオ君が
思わず呟いた。言われてみれば確かにノネー博士は姿こそ友達に似ているが
友達は逆に下顎の歯が丸出しだ。「そうだね。ナナシ族の男はみんな下顎の歯を
出しているんだ。」ノネー博士は気前良く答えつつ僕達生徒に博物館を
案内してれた。「ナナシ族の歴史はここだね。順番に説明しよう。」

「ナナシ族は1万年前は獣に近い姿で10匹ほどの群れで狩りをしながら
生活をしていたんだ。だが人間みたいに結束力があまりなかったのか獲物を
横取りして群れから追放されたり追放された同族を新しく群れに加入したりを
繰り返していたんだ。」展示されている3つのナナシ族の模型のうちの1つが獣に
近い姿をしたナナシ族の模型があるのでおそらくコレだろう。「そこから人間の
様に二足歩行に進化、道具を扱う様になったんだ。結束力のほうは相変わらず、
ではなくここから少しずつ強くなっていったんだ。」「ここらで結束力が強く
なっていったのか。」ノネー博士の説明の関心する友達。フシオ君はあまり興味が
ないのか聞いているフリをしながら博物館のマップを見ている。
「こうやって進化して現代に至るって訳。それじゃそろそろ休憩時間だし一旦
授業を切り上げるよ。」こうして僕達生徒は早めの休憩時間に入った。
「そこのナナシ族は個人的に話があるから残ってね。」おそらく友達のこと
だろう。僕は好奇心にこっそりつけた。友達はノネー博士に顎を撫でられて
牙を見せつけるほど不服そうだった。

「相変わらず可愛いななぁお前は。」「私をもう子供扱いするのは辞めろ。」
友達がここまで怒る姿も珍しかった。珍しいものを見れた僕はその場を
後にした。
