「まったく、おめえホントに気がよえーな。顔もなよなよしてるしさあ・・・。」
気絶から覚めた時はたくとと話をしているが、横にはあおいっていう座敷童も話を聞いていた。
やはり自分の責任で気絶させた事で看病してくれたんだろうか・・・。
「うるさいなあ・・・。もう顔の事は良いだろう。・・・でも、ホントに居たんだ・・・。」
「えっ?何?ここに居るの?・・・ここに!?」
たくとの顔はまるで僕よりも精神的に幼くなって無邪気に喜ぶ顔だった。
・・・・・・でも、あおいは姿が見えることについては伏せてほしいような顔で落ち込んでいた。
僕はあおいの表情を読み取れなかったが「いや、居なかったよ。」と、たくとに嘘を付いてあおいを安心させることにした。
あおいはそれを聞いたせいか安堵の表情を浮かべた。どうやら当たってたみたい。
「そうかあ・・・。居なかったのか・・・。残念だなあ。せっかく叶えたいことがあるのに・・・。」
たくとはなんか訳アリの表情で残念がった。・・・でもこれでいいんだと思う。何故僕はこれでいいのかはわからないけど僕にしか見えない秘密にしておこうと心に留めた。
でもたくとの叶えたい願いって何だろう?
座敷童って願いを叶える妖怪っていうより、幸せを運んでくれる妖怪だって聞いたけど・・・。
「願い事があるみたいだけど、どうして座敷童にこだわるの?願いを叶える妖怪じゃないんでしょ?」
「俺の叶えたい願いっていうのは最も幸せになることが願いだ。他の誰よりもずっとずーっとだ!」
たくとは高らかな表情で願いを述べた。
他の誰よりもって事は「他人よりも自分が一番になりたい」って事だろうか?
お互いに生活するのは初めてだからたくとの事はあまり知らないけど、過去に何かあったのかな・・・?
いくつかの疑問が頭をよぎったけど、どうして他の誰よりも幸せになりたいのかという事については一切聞かなかった。
あくまで僕自身が座敷童が見えているのに「居ない」と嘘をついた上に、疑問に思ったことを聞くのは反則だと思ったからだ。
「ていうかもう夜じゃないか。早く帰らねえと父ちゃんに怒られる!」
「本当だ!そうだね!早く家に帰ろう!」
さっさと帰ろうとするとあおいが「またね。」と告げた。
僕も「また会おうね。」と呟いたら、あおいがニコッと笑ってくれた。
たくとが「何してんだよお!つむぎ早くしろよー!」と叫んでいた。これ以上待たせるのは良くないと思い急いで家に帰った。
「つむぎくんか・・・。鈴が鳴るような優しい子だったな・・・。」
あおいは僕の名前を胸に留めるように笑った。
その後は伯父さんとじいちゃんに叱られたのは言うまでもない。
田舎の学校に通って半年が経った。