お正月を迎えた後の学校生活は再び暗い方向に傾いた。あれから友達とは遊ばず、暇さえあれば図書室にある小学校全学年の国語や算数、理科と社会の教科書を読み漁っていた。とんだ秀才になってしまった。
「おいつむぎ、今度のテストに出る勉強を教えてくれよ。」
義兄のたくとが今度のテストに出る科目を教えて欲しがっていた。
だけどこの頃たくとは勉強をサボったり教室から出たりと、あまりにも素行に問題がありすぎてそのことが原因で家族と大喧嘩が絶えなくなっていった。どうやら勉強が苦手みたいで最近は全科目テストの成績低下とかでストレスになり、勉強に厳しいじいちゃんとは関係が悪くなる一方だった。
できることなら勉強が苦手な奴に教えたくない。
「・・・いいけど、上級生の勉強は独学で覚えたものばかりだからあまり期待できないぞ。」
そう、僕は誰とも関わらずに勉強していた。
暇さえあれば上級生の勉強もこなそうとドリルを解いたりとかで秀才になっていった。
あおいとは疎遠になった事で心にぽっかり空いた穴を埋めようとしていた。
「あっそ。だったらやめとく。弟のお前に教えられても嫌な気分になるし。」
たくとはあっさり教室から出て行った。僕に勉強を教えてもらう気がないなら自力で何とかしろ!との暴言を吐きたかったんだけど、流石に騒ぎを起こすわけに行かないので黙っていった。
たくとが図書室から退室した途端、まやが入れ替わりで入った。
「・・・つむぎくん、・・・また寂しく勉強してるの?」
「どこで勉強してもいいじゃないか。」
まやが酷く心配してたのはわかってた。心を塞ぎこんじゃった僕を心配してたんだろう。
「あの子に会いに行かなくていいの?」
「あの子って誰の事?」
あの子についてはわかっていた。座敷童のあおいだろう。
「あおいくんの事よ。このまま仲良くしていたあの子も君も関係こじれちゃっていいの?」
僕は机の音を響かせるように立ち上がった。
「くっ・・・!!さっきからうるせえな!僕があいつとどうかかわろうが関係ないだろう!あいつも僕がいなくて清々してるんだよ!」
「それじゃあだめよ!!あの子、唯一の理解者なんでしょ!?友達なんでしょ!?あおいくんはそんな気持ちで関係を切ったわけじゃないのよ!?」
わかっている・・・あいつは本心では言ってないって。
「んなもんわかってるんだよ!!」
「いいや、わかってない!つむぎくんが、あおいくんとだけ関わらせる訳にいかなかった。だからあおいくんは酷い事まで言って離れさせようとしたのに君は何もわかってないじゃない!!」
・・・・・・「あおいとだけ関わらせるわけにはいかなかった。」その言葉が響いた。僕は結局いつまで経っても変わろうとしなかったんだな。
恐らく今の僕にとっては当たりなんだろう。
「・・・・・・一緒に仲直りしに行こう。」
「・・・できるのか。・・・今の僕に。」
「できるよ。あたしも手伝うよ。」
「じゃあ、放課後に玄関で・・・。」
そう告げた後、放課後まで授業を受けた。いつもより授業に集中できなかったが、全学年の教科書を読んでいる僕にとっては問題なかった。
せっかくまやが仲直りできるチャンスを設けてくれたんだ。
無駄にはしない!
そして放課後・・・、学校玄関でまやが待っていた。
「・・・待ってたよ。つむぎくん行こう!」
「ああ、行こう!」
僕たちはあおいが棲む古くてボロボロの屋敷にもう一度行くことにした。
あおいが言ってたことが少しだけわかった気がする。友達なのはあおいだけじゃない。まやとか色々な人がいる。
全ての人と友達になれるわけじゃないけど色んな人が僕を導いてくれる。あおいはそう言いたかったんだろう。
まやが心を打たれるような言葉を言ってくれなかったら僕は間違いに気づかないままだっただろう。
古くてボロボロの屋敷に着いたら意外な人物が待ち伏せしていた。