「バアル…。」
みるはユリィから聞いた事を思い出し、なぜ自分の記憶に大悪魔の事が無かったのかを理解する。
まさか冗談で言っていた事が本当で、更に上位の存在だったとは…みるは思わず苦笑した。
そして自分が今、弱い事もわかっている。目の前の大悪魔を打ち負かすのはもちろん、捕われているイミアを助けるのすら困難だろう。
でも…
「今ある手持ちで、全力全開でやってみる!」
先程ユリィに放った光の球をまた出し、大悪魔に向けて銃撃のように放つみる。
(いや、啖呵切ったけど…武器無し、大技無し、反撃力無し、オマケに相手のフィールド内って、正直打つ手無くない!?)
「エイル!」
みるの背中に小さな白い翼が現れ、空中へと飛ぶ。
だがしかし、本棚から本が無数に飛んで来て、みるの行く手を遮ってきた。
(あー!!びゅんびゅん飛んで来んなー!!避けるのもせいいっぱいって、私弱すぎ!!)
などと、みるは思っているが…
【やっぱり女神ってやばいですわ…何で本を避けながら攻撃できているんですの…しかも途切れずに。普通とっくに魔力が無くなりますわよ…。】
魔導書グリモワール…の中にいる悪魔、ゼルルはイミアを見張りながら言う。
あ、やっぱりみるの魔力って他から見てもやばいんだ、とイミアはちょっと思ったとか。
「そろそろ飽きてきた…終わらせるか。」
小さく欠伸をした大悪魔は、左手に黒い雷を出し、1.5メートルの長さがある剣に形を変えて投げた。
みるの光の球は一撃で吹き飛び、左顔ギリギリ横の壁に突き刺さる。衝撃でみるの黒髪が何本か切れて落ちた。
「……っ!!」
(ああこれ死ぬかも。死んだらゴメン、■■■。)
「今からでも命乞いをして、俺を好きになれば止めてやってもいいが?」
「絶対にしないし、好きになんかならない!この大悪魔!!」
「…なら一回死ね。そして魂を永遠に俺の手の内に留めてやる。」
大悪魔は同じ大きさの黒い雷の剣をみるに向けて投げる。みるは両手を前に出した。
「シールド!!」
光の膜がみるを覆い、雷の剣は止まった…が、防ぎきってはいない。少しずつだが、光の膜が破れている。
「くうぅ…!」
(魔力が…保たない…!!)
剣が徐々に近付き、みるの手のひらに触れる
…ところだった。
バリン!!という音がして剣が崩れ落ちていく。
横から飛んで来て剣を崩した「それ」は、みるの手にそっと乗った。
「「黒い羽根!!」」
みるの歓喜の声と、大悪魔の忌々しそうな声が重なる。
「またか!!またジャマをするのか!!お前さえいなければ…!!」
大悪魔がまた剣を作り、今度は直接みるに向かい切り込む。だが、それをみるは黒い羽根で受け止めた。
たった一枚の羽根が、まるで鋼のように硬い。
「お前さえいなければ、永遠に俺は司書でいられて、みるも変わらずに来てくれていた!!…全部お前のせいだ…お前が俺から全てを…みる達といる司書の日々を奪った!!」
それは果たして「誰の」叫びなのだろうか。
なぜ、むつぎは過去を思い出す事を選んだのか。
「…む…つぎ…。」
目の前の大悪魔は、本当に全て大悪魔なのだろうか。
「…ずるいよ…そんなの…戦えるわけないじゃん…!私が羽根を見つけてしまって…私のせいなら…!」
みるが「みるでいた日々」を思い出し、ほんの少し、羽根を持つ手を鈍らせてしまった。
それを大悪魔は見逃さなかった。
「そこだ!!」
切り「裂く」音が 響き渡る
剣は みるの胸を 切り裂いた
・
・
・
「言った筈だ。オレの女神は誰にも渡さん、と。」
様に見えたのだが、剣が…止められていた。
スラリと光る刀を持つ、銀色の長髪を一つに纏めあげた男によって。
「あ…ああ……」
一度たりとも忘れたことなどなかった。
会いたかった。触れたかった。声を聞きたかった。一緒にいたかった。
「7つ羽根を集めたら場所がわかる…「そこに貴方本人は含まれない。」なんて、バカげた話がある?信じられないわ。クロハネ。」
「クロハネと呼ぶなと言っただろう。「ユメリィ」。」
「詐欺も同然よ!!何度でも言うわ、クロハネ!…みる、貴女からも言ってやって頂戴!」
男の背後からやって来た女性…ユリィは、その手から黒い羽根を投げる。
少女の手の羽根と、女性が持っていた羽根は、少女の胸の中に溶けていく。
羽根は、少女の持っていた「記憶と力」を少女に戻す。
「…レフィ……「レフィール」っ!!」
少女…「みる」は、ようやく「探しもの」を見つけた。
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