天界の住人による救済 第三話「お金と能力」

数分後、カテリーネの指示で二人は小屋を出た。
この小屋には食糧なんてものはないらしく、長居しても飢え死にするだけだ。
二人は近くの村を目指し、歩き進めた。
イザベルの羽で飛んでしまえば楽だが、彼の前でそんな事をしたら何をされるかわからない。
彼のペースに合わせて歩くしかなかった。

だが、天界と下界では色々と違うが一番の違いは重力だ。
下界は天界より重力が重く、イザベルにかかる負荷は天界以上だ。
それに、めんどくさがりのイザベルは歩くより比較的体力消耗の少ない浮遊で天界を移動していた為脚の筋力はそんなに多いわけではない。
ゴツゴツとした小石が転がっているこの場へは体力が酷く消耗されていく。
それに比べるとカテリーネはスイスイ歩き進めていく。
彼のペースに合わせるのにイザベルは精一杯だった。

それから数時間後、二人は森を抜け、小さな村へとたどり着いた。
この村は争いの手がはいっていないからだろうか、それとも復興後なのか建物が建っており人の賑わいもある。
食糧を手に入れるにはもってこいの場所だ。

だが、二人には一つ問題があった。
それは「金」だ。
イザベルは天使なので金という概念はないが、カテリーネは故郷を一文無しで離れた事もあり持ち物は一切ない。
いきなり障壁に当たった感覚だ。

「…あっ!ちょっと待ってて!」

イザベルはあることを思い付き、カテリーネの見えない場所へと移動した。

「フォルトゥーナ様!どうすればいいの…?」

イザベルは天界にいるフォルトゥーナへ念のようなもので通話のような事を始め、どうすればいいか聞き始めた。

「どうされましたか?」

「村に着いたんだけどお金…?が無くて何も買い物出来ないの!」

「そうですか…。イザベル、一度冷静になりなさい。あなたは何が出来ますか?」

「へ?飛ぶ事と…」

「それ以外には?」

フォルトゥーナはイザベルに質問をした。

イザベルは突然の質問に深く、必死に考えるが自分に何が出来るか分からなかった。

「ごめんなさい…分からない…」

「…それでは、そこに生えている雑草を掴みなさい」

フォルトゥーナはイザベルにそう言い、イザベルはどういう事かよくわからないが、フォルトゥーナの言う事は正しいという考えに従うように近くに生えていた雑草を抜き取る。

「これで…?」

「それを「今欲しいものに変えたい」と念じなさい」

「う…?うん…」

イザベルはフォルトゥーナの言う通り、雑草を握りながら「お金が欲しい」と軽く念じた。
すると、雑草はパッとお金へと姿を変え、地面にチャリンチャリンと音を立てながら落ちた。

「フォルトゥーナ様!?これって!?」

「私達には個体差がありますが、能力が備わっています。イザベル、それを忘れていましたか?」

「あーっと…えへへ…。忘れてました…」

イザベルはフォルトゥーナの言葉を聞き、笑顔で返答した。

それを聞いたフォルトゥーナは少々呆れ気味にはぁ…とため息をついた。

「やはり…。まあ、いいでしょう。この能力を有効的に使い、目的を達成させなさい。けど、人に見つかったり、使いすぎはいけません。あなたは今「人間」という事になっているのですから。それと、雑草でさえ命はあるのです。無意味な殺生は人間と同じです」

「分かった!ありがとう!フォルトゥーナ様!」

イザベルはフォルトゥーナとの通話をやめ、金を握りしめながらカテリーネの元へ戻った。

「遅かったじゃねぇか。何やってたんだよ」

「えへへ…。実はね、これ探してたんだ!」

イザベルはカテリーネに金を見せつけた。

「おおっ!まじか!お前バカなのに使えるじゃん!」

(バカは余計な気がするけど…)

カテリーネは笑顔でイザベルに言うと、満面の笑みで金を受け取った。

これで食糧は困らない。
二人は食べ物屋へと入り、サンドイッチを購入した。
イザベルは一口食べてみるが、天界に比べて美味しいと言うわけでなく食べれなくはないが美味しくないと感じた。
だが、カテリーネは何日も食べていなかったのかがっつくように食べ進めている為、イザベルは「美味しくない」という感情を心の中に隠した。
この世界で数日かは分からないが、この食事に耐えるしかないのだ。

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柏木桜

悪そうな女の子(たまに違う)、車高低い車描いたり小説書いたりする人です。 どうもよろしくです。 たまにそれ以外もやるかもです。

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