二人は食事を終え、今晩泊まるための宿や拠点探しをした。
だが、村に唯一の宿は満室で住人の家に泊めてもらうしかなかった。
「今晩だけでも…!」
「だめだ!帰れ!」
複数の家を尋ねるが、返答はどれも同じだった。
二人は子供と言えど、どこの誰だか分からない奴を泊めるなんて争いが絶えないこの世界では命知らずな行動だ。
敵対同士の関係なら私達だけでなく住人も村八分、下手したら処刑だ。
それを考えれば誰だって私たちを受け入れるわけがない。
「どうすっか…」
カテリーネはめんどくさげに考え始めた。
イザベルはなんとなくだが、カテリーネがあの小さな小屋に隠れるようにいた理由が分かった気がしてきた。
能力を使って小屋を出現させればいいが、そんな事をしたらどうやってもカテリーネに見つかってしまう。
どうすればいいだろう…とイザベルは考えた。
(どうしよう…能力を使っても…ん?能力?)
イザベルは深く考えた後、フォルトゥーナのある言葉を思い出した。
……ーー私達には個体差がありますが、能力が備わっています…。ーー……
(そう能力…フォルトゥーナ様は能力が一つだけって言ってなかった!ってなると私にはもう一つ能力があるはず!)
イザベルは閃き、自分には他にどういった能力があるのか考える事にした。
カラン…
イザベルは自身の足に当たった空き缶に目が止まった。
「…。」
足元に転がった空き缶をジッと見つめ続ける。
自分に何が出来るのか、この空き缶はどうなるか…。考え続けた…。
カッ…。
「!?」
イザベルがジッと見続けた空き缶を自身の足にコツっと当ててみると、パッと姿を消した。
(これなら…!)
「ちょっと待ってて!」
イザベルはある事を思い付き、カテリーネにそう告げると再び彼の元から離れた。
それから数分後、イザベルはカテリーネの元へ戻り、ある事を伝えた。
「カテリーネ!一か所「いいよ!」って言ってくれる場所があった!」
「まじか!教えろよ!」
カテリーネはイザベルへついていき、ある小屋へとたどり着いた。
中へ入ると、家具や食糧、寝具や衣類など揃っていた。
「すげぇ!ここの住人はなんて言ってたんだよ?!」
「えーっと…。一人暮らしだったらしいけど、戦場に駆り出されたからその間使っていいよって言ってくれたの!」
「そっか!お前の事バカって言ってたけど訂正するわ!」
「なんて呼んでくれるの?」
「普通!」
「あー…うんありがとう!」(それ変わったのかな…?)
イザベルは少し疑問に思ったが、カテリーネの喜んでる姿を見て「まあいっか」と思った。
そして、彼には住民の本当の事を、何をしたのかを隠そうと思った。