都会から離れた、小さな村。
そこに、ある女がいた。
女は原因不明の呪いのような問題を抱えていた。
過去、幾度も妊娠を経験したが、そのすべてが死産に終わっている。
さらに恐ろしいことに、生まれてくる赤子は決まって身体の一部が欠損していた。
これまで経験した死産は、計八度。
頭部の欠損が五度。右腕が一度。左脚が二度。
そして今日、九度目の死産を迎えた。
確認されたのは、やはり頭部の欠損だった。
女をはじめ、村の大人たちは「何かに憑かれているのかもしれない」と恐れ、村の神社へと向かった。
そこには古来より子孫繁栄の神が祀られており、お祓いをするにはうってつけだと誰もが考えたのだ。
お祓いを済ませてからしばらくして、十度目の出産を迎えた。
今度こそ成功すると誰もが信じて疑わなかった。
しかし、現実は非常だった。
産み落とされた赤子は、腰から上が丸ごと欠損していた。
女の精神は、すでに限界を迎えていた。
ふた月ほど経つと、女の腹が再び膨らみ始めた。
原因は誰にも分からなかったが、女にとってそんなことはどうでもよかった。
「これは奇跡の子だ。この子を産み落とすことこそが、私の使命なのだから。」
正気を失ったように語る女を、村人たちは必死に説得しようとした。
しかし女は頑なに拒み続ける。
その腹の中で、確かな胎動を感じながら。
それから三か月。
腹はさらに大きくなっていた。
だが、女は気づいていた。
腹の中の胎動が、徐々に弱まっていることに。
思考を巡らせた末、女はついに「あの欠損」の本当の意味を理解した。
「この子に、ご飯をあげなきゃいけないの」
女の言葉に、村人たちは恐れ戦いた。
「お前のような化け物を、この村に置いておくわけにはいかない」
女が村を追放されてからというもの、村の赤子たちが次々と失踪し始めた。
捜索の末に見つかる赤子は決まって全身が欠損していた。
恐ろしい献身の甲斐もあり、ついに腹の子が生まれる時がやってきた。
お腹を襲う激痛は強まるばかりで、引く気配は一切ない。
次の瞬間、腹の中にいた”何か”が内部から女の腹を食い破って飛び出してきた。
想像を絶する激痛に、女は絶叫した。
しかし、薄れゆく意識の中で、その”何か”が無事に生まれたことを歓喜しながら、女は息絶えた。
赤子の失踪により、村人たちが憔悴しきっていた時のことだ。
村の外から、女の恐ろしい叫び声が響き渡った。
村人が駆けつけると、そこにはあの女が倒れていた。
すでに呼吸も心拍も止まっている。
だが不思議なことに、その身体には傷一つなく、奇妙なほど綺麗な姿のままだった。
村人たちは、あまりの恐怖による発狂死だと断定した。
ただ一つ、不可解な点があった。
女のすぐ傍らに、”何か”が転がっていたのだ。
女から生まれた”何か”なのだろう。
だが、村人が目にした時には既に死んでいた。
それは到底、この世のものとは思えない異形だった。
それを見た村人はのちにこう語ったという。
あれは、人間の業に対する神罰の形だったのだと。
女から生まれた”何か”は、今もあの神社に眠っている。
