私は一人で佇んでいた。
目の前は大勢の人で溢れている。
今日は年に一度の夏祭りだ。
私は仲のいいグループで来ていた。
でも途中でみんなとはぐれてしまった。
もうすぐ花火が始まる時間だから早く戻らなきゃいけないのに足が動かない。
せっかく今日の為に浴衣を着てきたのに気になるあの人とはまだ喋れていない。
なんだか急に寂しさが込み上げてきた。
一人で私は何をしているんだろう。
こんなことなら今日来なければよかった。
そんなことを思っているとドーンと遠くで花火が打ちあがる。
とうとう花火が始まったみたいだ。
わたしはただぼんやりと空を見上げた。
本当だったら今頃みんなと見ていたはずだ。
しばらく花火を見ていると「やっと見つけた」と声がした。
振り向くとそこには気になるあの人がいた。
彼は必死に探してくれていたのか息が乱れている。
「見つけられてよかった、一人で大丈夫だった?」
「うん、大丈夫だよ。探してくれてありがとう。」
「どういたしまして。」
彼は少し沈黙すると
「なぁこのまま二人で花火見ない?」
私は驚いたけど嬉しかった。
「うん・・・いいよ。」
すると彼は「こっち」と私の手首を掴んで歩き出した。
少しして辿り着いたのは人があまりいない広い河原だ。
彼がこちらを振り向いて
「歩かせてごめん、疲れてない?」
「ううん、疲れてないよ。」
彼はホッとして微笑んだ。
先程よりも花火が大きく見えた。
私が花火を見ていると
「ようやく話せるな」
「え?」
彼の方を向くと顔を少し逸らしていた。
「今日まだお前と話せてなかったから」
私はドキッとした。
彼も私と同じ気持ちだったんだと知り嬉しくなった。
何か話さなきゃと思うのに急に二人っきりだということを意識してしまい何も言えずうつむいた。
すると彼が一言
「浴衣・・・似合ってるな」
あまりの衝撃に私は思わず顔を上げた。
隣を見ると彼は腕で顔を隠しながら真っ赤になっていた。
彼のこんな表情を見るのは初めてで私は顔を逸らしてしまった。
心臓が壊れそうなくらい早くなっている。
ドキドキしながらなんとか口を開く。
「・・・ありがとう。」
二人とも黙ってうつむいていると花火が終わった。
終わった後も動けずにいると
「来年も一緒に花火見たい」
これにはさらにドキッとした。
「うん・・・私も」
顔を少し上げると彼は照れくさそうに笑っていた。
彼と二人になる前はあんなに寂しかったのに今はとても満たされた気分だ。
夏の夜空が鮮やかに私の心を照らしていた。
END
