不思議図書館・索「6.5:運命の黒い羽根(後編)」

それから2人はより一層仲良くなり、コンビネーションを深め、ミィはレフィールの指導で鎌を使えるように練習した。

「…私、女神になったらレフィともう会えなくなるのかな。だったら女神になんてならなくてもいいって思うんだけど。」

「どうなんだろうな。オレは別にお前の為なら人間をやめる選択もするが。」

「そんなあっさり人間やめないで!?」

「くっくっ…冗談じゃないからな?」

「えっ!本気?」

「お前が逆にその立場になったらどうする?」

「出来れば人間のままで一緒にいたいな。人間の感性が無くなったら、この想いが無くなると困るし。」

「それはそうだな。」

ずっとこのままでいたい。そうミィもレフィールも思っていた。

そんなミィの願いは、あっさり打ち砕かれる事になった。

レフィールが戦争の最中、自分の力を暴走させてしまったのだ。

実はレフィールは、人間と堕天使の混血。

暴走の原因は雇い主が、自身やミィを「良い実験体になりそうだ」と策を練っているのを聞いてしまったから。レフィールは、自身を兵器のように扱う人間達や、ミィを利用しようとする者達を許せなくなり「人ならざる力」に精神を奪われてしまった。

レフィールは人間に復讐し、世界を滅ぼすと宣言し、レフィールは世界の敵になってしまう。

完全にレフィールは世界を滅ぼす邪悪な魔物扱いになり、彼に立ち向かう者達は世界を守る者として皆から応援された。

それに憤ったのは、ミィただ1人。

「何で…!何で…!!」

世界はレフィールの死を望んでいる。

レフィールは世界の死を望んでいる。

「また…やれと言うの?いや、今度は、私に、やれと言うの…?」

世界を守る為に、愛する者を殺すか。

愛する者を殺す世界を滅ぼすか。

生まれ変わったのに、また同じ選択を迫られるなんて。

「…違うでしょ。そんなの。」

ミィはずっとしまっていた、黒い羽根を取り出した。今、人ならざる者の姿となったレフィールの背中には、黒い羽根が生えている。

黒い羽根が、救いを求めてミィをここに導いた。

「そう、私がここに来たのは、そんな事をする為じゃない。」

ミィは白い翼を広げて、レフィールの元に向かった。

暗い空の上、黒い翼を広げて世界を滅ぼそうとしているレフィールの前に、白い翼のミィがやって来る。

「…そこをどけ、ミィ。オレはこの世界を消す。全て…。」

「どかない。レフィ、最初に言ったよね。私は…貴方を救う為に来たの。」

「オレを救う?共に世界を滅ぼすとでも言ってくれるのか?」

「出来ればそうしてあげたいけどね…残念ながら出来ないんだ。私は…」

世界は、生きることを願っている。

「願いを叶える、星の力を…女神の力を持っているからね。」

ミィは、銀色の鎌をその手に出して男にぶつかって行った。

「でもっ…先に救いを…願いを私に届けたのは、貴方!だったら、私は…貴方の「本当の願い」を叶える!!」

「オレの本当の願いだと?そんなの…」

「ずっと一緒にいたい!!」

「…!!」

「ずっと傍にいたい!一緒に色んな場所に行って、一緒に生きたい!レフィの願いは違うの!?」

刀と鎌がぶつかり合う中、白い羽と黒い羽が舞う空で、ミィは叫んだ。

「そんなのは無理だ…」

「無理じゃない!私が無理にしない!!私が絶対に叶える!!」

鎌が薄桃色の光を纏い、翼を消したミィの足元に魔法陣が現れた。薄桃色の光が、魔法陣から溢れ出して鎌に集まる。

『光よ、永久に輝く、星となれ!

フォーカシング・ラジエーション!!』

ミィが鎌を振り下ろすと、巨大な光の波がレフィールに直撃し、全てを包み込んだ。

…それは、世界の人々から「奇跡の光」と呼ばれました。光は世界を滅ぼす邪悪な魔物を撃ち消してくれたのです。世界は守られました。

……レフィールは、生きていた。

ミィ…少女が放った光によって、レフィールの命が消えることは無かった。

ただし、レフィールは自分のいた世界では「存在が無くなった」ことになり、自分の世界に帰ることは出来なくなった。

でも、レフィールはそれを受け入れる。

それによって、レフィールは少女と共に世界を旅することが出来るようになったのだから。

「ねえ、レフィ。私、ちゃんとした女神になる。願望を叶える星の女神に…人間のままで、なるよ。」

「ああ…オレに出来ることがあるなら、何でもしよう。ミィ…いや、■■。」

「じゃあ、女神になっても一緒にいてくれる?」

「当たり前だ。オレには帰る場所が1つしか無いんだぞ?」

「そ、それは〜…。」

「責任を取って、まずはオレの女神になるんだな。」

「ちょっ…レフィ!!?」

男は少女の手の甲に、そっと唇を落とした。

終わる。or 続きを検索。

  • 13
  • 0
  • 0

メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

作者のページを見る

寄付について

「novalue」は、‟一人ひとりが自分らしく働ける社会”の実現を目指す、
就労継続支援B型事業所manabyCREATORSが運営するWebメディアです。

当メディアの運営は、活動に賛同してくださる寄付者様の協賛によって成り立っており、
広告記事の掲載先をお探しの企業様や寄付者様を随時、募集しております。

寄付についてのご案内