それから2人はより一層仲良くなり、コンビネーションを深め、ミィはレフィールの指導で鎌を使えるように練習した。
「…私、女神になったらレフィともう会えなくなるのかな。だったら女神になんてならなくてもいいって思うんだけど。」
「どうなんだろうな。オレは別にお前の為なら人間をやめる選択もするが。」
「そんなあっさり人間やめないで!?」
「くっくっ…冗談じゃないからな?」
「えっ!本気?」
「お前が逆にその立場になったらどうする?」
「出来れば人間のままで一緒にいたいな。人間の感性が無くなったら、この想いが無くなると困るし。」
「それはそうだな。」
ずっとこのままでいたい。そうミィもレフィールも思っていた。
そんなミィの願いは、あっさり打ち砕かれる事になった。
レフィールが戦争の最中、自分の力を暴走させてしまったのだ。
実はレフィールは、人間と堕天使の混血。
暴走の原因は雇い主が、自身やミィを「良い実験体になりそうだ」と策を練っているのを聞いてしまったから。レフィールは、自身を兵器のように扱う人間達や、ミィを利用しようとする者達を許せなくなり「人ならざる力」に精神を奪われてしまった。
レフィールは人間に復讐し、世界を滅ぼすと宣言し、レフィールは世界の敵になってしまう。
完全にレフィールは世界を滅ぼす邪悪な魔物扱いになり、彼に立ち向かう者達は世界を守る者として皆から応援された。
それに憤ったのは、ミィただ1人。
「何で…!何で…!!」
世界はレフィールの死を望んでいる。
レフィールは世界の死を望んでいる。
「また…やれと言うの?いや、今度は、私に、やれと言うの…?」
世界を守る為に、愛する者を殺すか。
愛する者を殺す世界を滅ぼすか。
生まれ変わったのに、また同じ選択を迫られるなんて。
「…違うでしょ。そんなの。」
ミィはずっとしまっていた、黒い羽根を取り出した。今、人ならざる者の姿となったレフィールの背中には、黒い羽根が生えている。
黒い羽根が、救いを求めてミィをここに導いた。
「そう、私がここに来たのは、そんな事をする為じゃない。」
ミィは白い翼を広げて、レフィールの元に向かった。
暗い空の上、黒い翼を広げて世界を滅ぼそうとしているレフィールの前に、白い翼のミィがやって来る。
「…そこをどけ、ミィ。オレはこの世界を消す。全て…。」
「どかない。レフィ、最初に言ったよね。私は…貴方を救う為に来たの。」
「オレを救う?共に世界を滅ぼすとでも言ってくれるのか?」
「出来ればそうしてあげたいけどね…残念ながら出来ないんだ。私は…」
世界は、生きることを願っている。
「願いを叶える、星の力を…女神の力を持っているからね。」
ミィは、銀色の鎌をその手に出して男にぶつかって行った。
「でもっ…先に救いを…願いを私に届けたのは、貴方!だったら、私は…貴方の「本当の願い」を叶える!!」
「オレの本当の願いだと?そんなの…」
「ずっと一緒にいたい!!」
「…!!」
「ずっと傍にいたい!一緒に色んな場所に行って、一緒に生きたい!レフィの願いは違うの!?」
刀と鎌がぶつかり合う中、白い羽と黒い羽が舞う空で、ミィは叫んだ。
「そんなのは無理だ…」
「無理じゃない!私が無理にしない!!私が絶対に叶える!!」
鎌が薄桃色の光を纏い、翼を消したミィの足元に魔法陣が現れた。薄桃色の光が、魔法陣から溢れ出して鎌に集まる。
『光よ、永久に輝く、星となれ!
フォーカシング・ラジエーション!!』
ミィが鎌を振り下ろすと、巨大な光の波がレフィールに直撃し、全てを包み込んだ。
…それは、世界の人々から「奇跡の光」と呼ばれました。光は世界を滅ぼす邪悪な魔物を撃ち消してくれたのです。世界は守られました。
……レフィールは、生きていた。
ミィ…少女が放った光によって、レフィールの命が消えることは無かった。
ただし、レフィールは自分のいた世界では「存在が無くなった」ことになり、自分の世界に帰ることは出来なくなった。
でも、レフィールはそれを受け入れる。
それによって、レフィールは少女と共に世界を旅することが出来るようになったのだから。
「ねえ、レフィ。私、ちゃんとした女神になる。願望を叶える星の女神に…人間のままで、なるよ。」
「ああ…オレに出来ることがあるなら、何でもしよう。ミィ…いや、■■。」
「じゃあ、女神になっても一緒にいてくれる?」
「当たり前だ。オレには帰る場所が1つしか無いんだぞ?」
「そ、それは〜…。」
「責任を取って、まずはオレの女神になるんだな。」
「ちょっ…レフィ!!?」
男は少女の手の甲に、そっと唇を落とした。
終わる。or 続きを検索。