不思議図書館・索「7:星に願った先(前編)」

少女を背中に守るように立つ銀髪の男。その腰に少女…みるは抱きついた。

「レフィ!レフィ!…レフィー!!」

「…危ないから離れていろ、ミィ。」

男…レフィールに頭をぽむぽむ撫でられ、嬉し涙を流しながら頷いたみるは、そっと離れる。

レフィールは、みるが離れたのを確認して微笑んだ後、鋭い目つきで大悪魔を睨みつけた。

「ふん、随分見ないうちに大人しくなったかと思ったが…相変わらずの執念深さだな。ベルフェリオ。」

「お前こそ、コソコソ逃げ回って女に苦労させる鬼畜じゃないか、レフィール。…まあ、おかげで女神の力は戻っただろうが…」

「確かに力と記憶はミィに返したが、全て返したとは言っていないぞ。」

「…何?」

「お前がミィに無理矢理迫り、ミィの心を引き裂いた時、確かにオレは女神の力と記憶を持ち、お前をグリモワールに封じて隠れた。…が、本格的に隠れる前に、ユメリィ…ユリドールに記憶と、少し力を分けてから去った。」

「だから言ったでしょう、私は「今は一時的に神霊になっている」と。いくら悪魔の小娘が身代わりに本に封印されても、悪霊の私の力だけで貴方を出せるわけ無いじゃない。」

「そこまでして女神を守りたかったなら…何故ゼルルとの契約に応じた?」

大悪魔の疑問に、ユリィもレフィールもやや苦笑する。そして、呆れた口調でユリィが答えた。

「だって、貴方は強く「願った」じゃないの。ここから出たいって。それをみるが無視すると思って?」

大悪魔はハッと気付き、みるを見つめる。

「でも、さっきまでの魔法使いの端くれな、無防備のみるに何かあったら…私がクロハネ…レフィールに斬り殺されるもの。だからあんな契約にしたのよ。下手に「好き」や「怒り」を知られて、むつぎから大悪魔にしない為にもね。女神というか、みる本人の意志の強さには私も手を焼いたわ。」

「は…?意味がわからない…だって俺は女神が欲しくて…嫌がるのも構わず迫ったんだぞ?心を壊してまで…なのに、それなのに…俺の願いを叶えたのか?俺は全ての元凶なのに?」

「あら、貴方がそれを言うの?いつも無茶なお使いを頼んで、お節介に呆れていた「貴方」が?」

そうだ、と大悪魔は思う。いつも少女は何だかんだ言いながらも、お使いをしてくれた。「お願い」を叶えてくれた。ちょっとした事にも付き合ってくれた。

それが、少女「みる」。

そして、初めて好きになった「女神」。

「……ルゥ…。」

「私は、ミ……いや、ルティナリス!女神の力を使う人間よ!」

「ふーん…ルティナリス…長いな。ルゥって呼ぶ。」

「あまりに短すぎない!?貴方だってベルフェリオなんだから、ベルじゃん!いやでしょ?」

「…イヤだな。」

「じゃあベルフェって呼ぶから、貴方もルティナって…」

「それもイヤだ、ルゥがいい。」

「何で!?」

「面倒だから。」

女神の力を使う少女をかつて自分は、そう呼んだ。

ルティナリス、を縮めて「ルゥ」。魔法で髪色を桃色にして2つに結び、服装も変えているらしい。

ただ、頭の大きな白いリボンと、黒猫のバッグが印象的。

ルゥと大悪魔の自分は敵対していたが、殺し合いなどはしなかった。

ルゥは初めて興味を持って、惹かれた者だったから。やり過ぎると本人やレフィールから手痛い仕打ちをされたが、それでもルゥを諦めなかった。

「お兄さまは、ルティナリスが好きなのではありませんの?」

ゼルルに言われて気付いた。自分がルゥを好きだと。

だが、ルゥはレフィールの事が好きで、俺とはそういう仲にはなれないと言った。

どうして、何故。

疑問と怒りのままにルゥに迫った。ヤツと俺で何の差があるのか。ヤツは人間から外れ、悪魔や魔物にもなりきれなかった堕天使の混血なのに。

ルゥは、俺を見て言った。

「…私だって、人間の身体で女神になろうとしている、外れ者よ。」

今まで辛い思いをしてきたルゥの事を俺は全く考えていなかった。

「なら俺のものになって、力を分ければいい!!それなのに、何で…何で俺を好きにならない!!」

「離して!!この大悪魔!!…いや!…やめて…じゃないと私は…ベルフェ…っ!!」

ルゥの身体は魔力を抑える限界を越えていたのに、俺が気付かずにいたせいで、ルゥは大き過ぎる魔力を「心」で抑えて…気を失った。魔力を外に出して、俺に被害が及ばないようにしてくれていたのに。

そこにレフィールが駆けつけて、レフィールが魔力を肩代わりし、そのまま俺は激怒したレフィールによって、グリモワールに封印された。

それなのに。それなのに。

ここから出たい、という「ベルフェリオ・バアル」の願いを叶えたのは「ミィ・ルティナリス」で、

グリモワールを届けてほしい、という「むつぎ」の願いを叶えたのも「みる」だなんて。

「今更…遅すぎるんだよ!!!」

大悪魔の叫びで室内に嵐が吹き荒れ、無数の本が舞った。

中編に続く。

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メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

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