「【花の無い花】は花とは言わないでしょ?」
「隠花植物と言って、花が隠れていたり、花を付けない植物はあるの。」
「へー、そうしたら、繁殖できないでしょ?」
「花を持たない植物は種子では無く、胞子で繁殖するんだ。シダ類やコケ類がこの隠花植物と言えの。」
「つまり、日陰に育つ植物は花を持たないという事なの?」
「全ての日陰の植物がそうだとは言い切れないけど・・・。」
「と言う事は私たちは花を持たない日陰人間と言う事ね。」
「言えるー!!」
今年、30代を迎える桜川 リリカとマリカの双子の姉妹は仕事でも、プライベートでも行き詰っていた。
2人が務める職場では最近、次々に結婚退職をして行く同僚がおり、職場でも家でも結婚しなさいと催促をされていた。
「あなた達二人には華が無いというか、男っけがないというか・・・。」
「地味だって言いたいんでしょ?はいはい、地味ですよ。」
「誰が〇〇姉妹だって?ほっといてよ!」
「あー華の無い方の姉妹ね?」
「安い給料で激務をこなしているんだもの地味であたりまえでしょ?」
「でも、他の人だって同じ条件なのに結婚退職してるわよ?」
「ノーコメントです。」
毎日、同じ会話の繰り返し。
2人は岐路に立たされていた。
そんなある日、リリカはマリカに言った。
「リリカ、2人で企業しない?」
「マリカ?私も同じこと考えていた。」
「よかった。拒否されたらどうしようと思った。」
「一人で起業するのも不安だし、かと言って他人は信用できないし。」
「それで、何をする?」
「カフェ。」
「そうだね、2人とも良くカフェに行くものね?」
「じゃあ、いつにする?」
「2人の誕生日の頃にオープンさせる。」
「分かった」
2人の誕生日は7月23日。
その日に向けて、準備を始める2人だった。