2人に最大の危機が襲ったのはお店のオープンしてすぐのことだった。
オープンしたての頃はやる気に満ちていたし、自分たちの力だけでもやって行けると思っていた。
オープンして2ヶ月経って、常連さんも出来て来た頃、カフェのオープン準備をしていた時のことだった。
ガチャーン!という大きな音と共にドスンという音が聞こえた。
リリカが音のする方を見ると、マリカが倒れていた。
「マリカか!?」
何が起きたのかリリカには分からなかった。
ただ、救急車を呼ばなくてはと言う事だけだった。
総合病院に運ばれたマリカは直ぐにICUに入院した。
事が重大だという事がリリカには分かった。
暫く、カフェは当分、お休みにした。
リリカが一人でお店をやって行くという事に自信は無かったし、マリカが今後、どうなるかの方が心配だった。
医師からリリカが絶望的なマリカの診断を聞いたのはそれから1ヶ月後の事だった。
「マリカさんの病名は脳梗塞です。退院しても左半身にマヒが残ります。」
「先生、じゃあ仕事は?」
「両手が必要となる作業は困難になります。日常生活にも苦労を伴うでしょう。」
「そんな・・・あんなに元気だったのに・・・。」
「こればっかりはなんとも・・・。」
「マリカ・・。」
リリカはこれからどうしたらいいのか、まったく、分からなかった。
マリカが生活に困るという事はリリカも生活に困るという事だった。
カフェを閉店しなければならないだろうと漠然と考えていた。
何をどう考えても一人では無理な問題だらけのように思えた。
「私も、マリカのように強くならなければ・・・一番、辛いのはマリカ本人だから・・・。」