なんとかして小屋を手に入れたイザベルとカテリーネ。
この後の行動をどうするか二人で話し合うことにした。
「この後、俺らどう生きていくか…」
「どうって?」
「は?お前…。俺らそんな金あるわけじゃないのにこのまま生きていけるわけないだろうが…」
「そっか…」
イザベルはカテリーネの言葉を聞き、そういえばそうかと思った。
天界なら何をどうしようが食べ物だったり色々なものが手に入る。
だが、この世界はそうは行かない。自分で欲しいものは対価を払って手に入れるしかないのだ。
「それだったら、仕事をして手に入れるとかはどう?」
「それ、上手くいくと思うか?」
イザベルは提案をするが、カテリーネに実質的却下された。
数分前に拠点探しの時にどんな目にあったか、イザベルは忘れかけていた。
おそらく仕事探しも同じ結果だろう。
カテリーネはそう考えていた。
結局結果が決まらず、夜になり、二人は眠りにつくことにした。
カテリーネはリビングにあったソファをベッド代わりに使い、イザベルは寝室にあったベッドで寝ることにした。
だが、イザベルはどうも眠れなかった。
(私…やっていけるのかな…?)
イザベルは不安に感じていた。
憧れを持ち、初めてきた下界。
それがこんなにも過酷だとは思っていなかった。
イザベルは長時間隠していた羽を広げ、リラックスし始める。
天使にとって、羽を長時間しまっておく事はとてもストレスになる事なのだ。
しまっていた羽を思いっきり広げ、人間でいう腕を伸ばすような感覚で疲れを取っていく。
憧れであるフォルトゥーナ様もこんな事をしていたのか…と考える。
どうすればいいのか…どう楽にやれば…など考えがどんどん楽な方へと変わっていく。
だが、考えた所で結果は変わらない。過酷なのはそのままだ。
次の日
考えがまとまらなかったイザベルは仮眠程度の睡眠だったので、とても眠かった。
何気なく外へ出てみると、家の裏に荒れ放題の庭がある事に気が付いた。
「…庭なんてあったんだ…」
イザベルは眠そうにそう言い、部屋の中へと戻る。
今日の食事はパンと魚の缶詰のみだ。
できるだけ食糧を減らさないようにと料理を一度もやったことがない二人が考えるとこうなってしまう。
仕方ないと感じた二人はとりあえず食べることにした。
缶詰はしょっぱいしパンは味がしない…。
だが、これも耐えるしかなかった。
食事が終わり、再び作戦会議をすることにした。
どうにかして考えを導き出したいが、何も思い浮かばない。
「そういえば、この家の裏に庭があるの知ってた?」
「庭?そんなのあったのか?」
「うん、見てみる?」
「ああ」
イザベルはカテリーネを庭へと連れ、荒れ放題の庭を見せた。
カテリーネは庭を見るなり、土の状態を確認した。
「…うん、これならいける」
「何が?」
「何がって…農作だよ…。ここの土は硬すぎず、柔すぎない。丁度いい塩梅の土だ。これを耕して育てていけばある程度は過ごせるかもしれないし、上手くいけば売って金になる」
「へー…よくわかるね…」
「そりゃあ、俺んち農家だったからな。嫌というほど農業の事は教えられるから分かるんだよ」
「なるほど…」
イザベルはそう返事をした。
カテリーネの新たな真実を知ったような気分になった。
その後、二人で雑草を大量に抜いていった。
イザベルはこの雑草は自分の能力を使えば有効活用出来ると思い、雑草を残しておくようにとカテリーネへ伝えた。
カテリーネが休憩している間にイザベルは、抜いた雑草の山を野菜の種、農器具へと姿を変え、彼には住人から貰えたと嘘をついた。