「フォルトゥーナ様…ありがとうございます…」
「…ついてきなさい」
フォルトゥーナの力により天界に転送されたイザベルは彼女に感謝の気持ちを伝えるが、再び無視をされ、彼女の指示通りついていく。
どことなくだが、普段のフォルトゥーナとは違うとイザベルは感じた。
「あの…フォルトゥーナ様…?なんか…怖いんですけど…」
「…あなたがそういうという事は、自分が何をしたか分かっていないようですね…」
「え…?」
「…まあいいわ…イザベル…。この鏡の前に立ちなさい」
フォルトゥーナはイザベルを鏡の前に立たせた。
そして、何も言わずにイザベルを鏡の背になるように方向を変え、鏡にピッタリくっつくように押し付ける。
「自分が何をしたのか、自分の目で見てきなさい」
フォルトゥーナはそう言い、手を離すと鏡から無数の手が生え出し、イザベルの体を掴むと物凄い力で鏡の中へと引きずり込み始める。
「いや…!嫌だ!離して…!フォルトゥーナ様助けて…!助けてください…!!!!」
「…」
イザベルは必死にフォルトゥーナに「助けて」と言いながら鏡から離れようとするが、フォルトゥーナはそれを無視し、イザベルから離れる。
鏡から生えてくる手を何度も振りほどこうとするが、別の手に掴まれたりとキリがなかった。
羽を使えば逃げれると思ったイザベルは羽を出し、飛ぼうとするが、罠に引っかかった鳥と同じような結果で羽根がボロボロと取れていくだけで体力が消耗するだけだった。
それでは終わらず、鏡から出てくる手は彼女の羽を掴むと凄まじい力で引っ張り、引きちぎろうとする。
「痛い痛い痛い痛い!!!!!!!!お願いです・・・!!!!助けて!!!!!フォルトゥーナ様!!!フォルトゥーナさまああああああ!!!!」
イザベルの体力はどんどん消耗していき、涙を流しながらの訴えも虚しく、彼女は鏡の中へと引きずり込まれた。
(はぁ…やっぱり…「真実の鏡」に引きずり込まれるのを見ているのは慣れませんね…。けど、彼女が罪なき人に何をやったかを知るには仕方のない事ですね…。はぁ…これから忙しくなりそうですわ…)
フォルトゥーナはその姿を見終えると、深くため息をつき、そう心の中で言いながら自室へと向かった。
それから数日後、フォルトゥーナは天界の王に呼び出され、一人の赤ん坊を託された。
「フォルトゥーナ、お前にその子の教育係を命ずる」
「かしこまりました」
フォルトゥーナは天界の王にそう言うと、自室へと戻り、赤ん坊を布団のぬいぐるみが沢山入っているゆりかごへ寝かせるとゆりかごをゆっくりと揺らす。
「ふふっ…可愛い子ね…。あなたの名前は…、そうね…「イザベル」にしましょう」
赤ん坊の姿は彼女が過去に教育していた天使に似ていた為、フォルトゥーナは赤ん坊にそう名付けた。
…
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