不思議図書館・索「10:索り、そして求める」

ー青い空に白い雲、沢山の緑が風に揺れる。

みるは、むつぎと共に新しく図書館に作られたテラス席で、魔法に関する本を読んでいた。

「…みるちゃん。」

「ん?」

ふと、むつぎが声をかけてくる。

「…ごめん。俺、ずっとみるちゃんに助けられていたのに、全然気付いていなかった。」

「それは…私も、ごめん、だよ。ちゃんと魔力の事を言わなかったし…。」

「ヘンにみるちゃんの気持ちを索(さぐ)って、無理に迫って、本当にデリカシーのカケラも無かったと思う。」

「…逆に、それでいいと思う。」

謝り続けるむつぎに、みるは苦笑しながら言った。

「ハッキリ言い合い出来る仲って、男女問わず大事なんだよ。…恋愛じゃなくて悪いけど…私は、キッパリ切るんじゃなく、何だろう…悪友?そんな仲のままで良いと思う。むつぎは、やっぱり嫌だ?」

そう聞かれたむつぎは、首を横に振る。

「ルゥの…みるちゃんの愛する気持ちが手に入らないのはモヤモヤするけど、今の関係が壊れるのは…もっと嫌だよ。だから…悪友でもいい。今まで通りで、いてほしい。」

「ほんっとに、それでいい?」

「良い。……あ、1個だけ許してほしい事がある。」

「何?」

むつぎは少々間を置いてから、ちょっと恥ずかしそうに言った。

「……「みる」って、呼びたい。公共の場所でも、どこでも。流石に「ルゥ」はちょっと…と言うか、たまにベルフェリオの気持ちに寄ると、そう言っちゃうし。」

「なぁんだ。どうぞどうぞ。師匠やイミアやサラミも「みる」呼びなんだし。かえって記憶を取り戻したせいか「みるちゃん」なんて呼ばれるとトリハダ立つわー。」

「そっかー。」

すごくニコニコしている2人だが、その頭上に黒い雷の刃と桃色の魔力球が浮かび出し…

「ふっ!」「ぐはっ!」

みるは雷の刃を防御魔法で防ぎ、むつぎは避けた球がUターンしてパコン!と頭に当たった。

「はい、勝ちー。」

「うぐぐ…また負けた…。」

「今度いちごプリン2個、むつぎの奢りね。…いやなら「何でもひとつだけ言う事を聞く」でも良いよ?」

「それは絶対にイヤだ!!」

「ちぇー、良い的が出来たと思ったのに。」

頭を振って心底嫌がる、むつぎ。「アレ」は相当にこたえたらしい。

「的は冗談としても、魔法戦の練習はした方がいいよ?」

「嫌だ。俺は司書だよ?何で魔法戦の必要があるの?」

「レフィに斬り◯されるか、師匠に魔術でなぶり◯されそうだから。」

にっこり笑って言う、みる。むつぎは、あながち冗談では無い可能性があるのが怖いと思う。

「それに自己防衛は出来て損しないよ?もう師匠は図書館の防護を弱めてるし。」

図書館の防護は、ユリィがみるを図書館に連れて来た時から行ってきたらしい。それまでは迷い人もあったのに、パッタリと無くなったから不思議に思っていた、むつぎ。ほぼユリィやレフィールに仕組まれていたと後から聞かされて、だいぶ衝撃を受けた。

「…それを考えると、魔法の練習はした方がいいかも…な。」

レフィールのような両刀やユリィのような魔術使いには及ばずとも、ユリィの術がわかるようにはしたい…とむつぎは考える。

「そうしたら!俺を見直すか!?ルゥ…ぁ痛っ!!」

突然立ち上がり、目をキラキラ輝かせて、顔をみるに近づけるむつぎに、みるは容赦なく、銀の鎌の下先で頭を叩いた。

「ベルフェは、ナナメ45度の角度で叩かないと直らないかな?」

「直った!直ったから!!昔の日本の家電製品みたいにするな!!」

「おー、むつぎは、ツッコミの技を覚えたー!」

「俺は育成ゲームのキャラか!!」

頭を抑えるむつぎだが、立ち上がった時に一瞬だけ、角のように髪が立っていたのが、叩かれて戻った事には「まだ」気付いていない。

しばらくはまたベルフェリオが出そうだな〜と危機感無く思う、みる。

それでいい。だって…

自分は「ミィ・ルティナリス・セブンス」、「みる」で

彼は「むつぎ・ベルフェリオ・バアル」、「むつぎ」なのだから。

金髪ツインテの「ミィ」も、桃色髪の「ルゥ」も、黒髪の「みる」も、自分。

何度も夢に見た双子の女神・ソルとシルの生まれ変わりも、全部、自分。

今までの図書館での日々も「索り(さぐり)」ながらではあったが、全部大事な自分の出来事に変わりは無いのだから。

「よっしゃー!むつぎー、魔法の練習しよー!むつぎが的で!」

「的は嫌だって言っただろう!!」

「じゃあ、やめて本を「観て」くる。」

「何で俺が的前提な魔法練習なんだ!!」

「なら、私を的にしてみなよ?ほれほれ。」

「…言ったな?」

不思議図書館の日々は、これからも続いていく。

「また髪が切れても文句無しだぞ?」

「手数で私に勝てると思ってんの?この大悪魔の司書。」

「それはどうかな?人間の身体の女神。」

これからは「索」りではなく、きっと追い求めるだろう。

大切なものを…願いを胸に抱いて。

追い求めたその先を「みる」、それを「つむぎ」繋がっていく。

ーさあ、次の話は…どんな話でしょうか。

不思議図書館・索、終わり。or・・・??。

(※作者・メルンから。)

祝!不思議図書館・索、完結!!

お疲れ様でした&ありがとうございました!!

まだ「ここはどういう意味?」とか「◯◯って何?」という部分があるかも知れませんが、そこはユリィ先生が教えてくれる機会があると思います。

それでも「結局〜〜って何だ?」「説明不足!」とかあれば、そこは自分もそこまで考えていないか、これから出て来るかも知れません。

正直、私は今まで「短編として読める話」を主に書いて投稿してきたので、長編を書くと決めた時は不安でした。(でも冬でコロナで普段のネタ探しもままならない状態だったので…。)

設定や、読書にわかりやすいような文章、表現、話の切り方、何と言ってもバトルシーンの文章と挿絵は本当に本当に苦労しました!!それでも判り辛かった点もあったと思います。それは私の勉強不足です。申し訳ありません。

…個人的には、むつぎをこういう形にした反応が怖いです(3月30日現在)。

次作の案は既にありますが、まだ「索」の小話が残っているので、それを出しつつ、また普段の不思議図書館の話も書きつつ…その後になると思います。多分。

これを皆様が読んでいる時、どうなっているのでしょうね??今の段階ではまだゼルルもレフィールも出ていませんから、私はドキドキしつつ、でもネタバレになるから何も言えず辛いです。

挿絵も、初ペンタブから約3ヶ月が経過しました。

描きたかった絵しか描いていません(笑)

描きながら「誰だコイツ」「何だコイツ」「やべーぞコイツ」「手の形難しい」「首痛い」とずっと嘆いていました。でもおかげで生き生きした、みる達を描くことが出来て嬉しいです。私の長年の夢が叶いました。ずっと文章専門だった者として、自分のキャラを自分で自由に描けるのは本当に嬉しく、ありがたく思います。

最後になりますが、読書の皆様、マナビースタッフの皆様、ノーバリュー管理の皆様、イイネをくれる皆様、そしてファンアートや感想をくれる皆様!!本当にありがとうございました!!

そして、これからも不思議図書館とキャラ達をよろしくお願いします!(土下座)

3月30日文章完成、4月28日挿絵完成。 作者、メルン。

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メルン

小説を書くのが好きな、アニメ・ゲーム・読書が趣味の人です! 目についたものや不思議なことを小説にしたり、絵にも挑戦したいです。 ほのぼの、ほんわか、ちょっと謎な話もあるかも…?

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