ーそれは、余りに惨く虚しい戦いだった。
ちょっとだけ、みるに話は聞いていたけど、何故そこまで大きな争いになるか、知らなかった。
何がそこまで彼らを突き動かすのか。
どうしてそこまでして勝敗を分けたいのか。
私は、ただ…
「きのこ◯山と、たけのこ◯里を差し入れに持ってきただけだったのに…」
ちなみに、どっちもみるの好きな、イチゴチョコ味。
…タイミングが悪かった。
丁度みるは本の中で、テラスに居たのが、むつぎとレフィールだけだったから、差し入れって言って両方テーブルに出したのだ。
「ありがとう、ユリィ様。」
「イチゴ味か、これならミィも喜んで食べるな。」
「そうだね、やっぱりコレだよ。」
「たけのこ◯里。」「きのこ◯山。」
「「………は?」」
これをキッカケに、きのこ派のむつぎ、たけのこ派のレフィールの言い争いの幕が上がる。
ちなみに、本人達ではなく「どちらなら、みるが一番喜んで食べるか」の話だ。そこのところは間違えないでほしい。
本人達が何派かは、控えさせてもらう。
「きのこのビスケット部分は持ちやすくて食べやすいだろう。」
「きのこはバランスが悪い。最初の一口が全部チョコになるだろうが。たけのこは均一で、しかもクッキーだ。」
「たけのこは、チョコが熱で溶けてベトベトになるだろう。その点きのこは配慮がある。」
「ふん、幼児にチョコ部分だけ食べられて「ここ(ビスケット部分)はいらない!」と言われるクセに。」
「それはオ◯オの話だ!一緒にするな!」
いや、オ◯オを巻き込むな。ちゃんと挟んだまま食べなさいと教育しなさい。
「たけのこはチョコの量が少ない!それでもチョコ菓子か?」
「チョコかビスケットかよくわからん存在に言われたくないな。たけのこはバランスの良さが売りだ。」
「バランスしか無い癖に、これだからたけのこは。」
「ただ口だけの癖に。しかも立てもできないからな、ろくに戦争もさせられん。」
「菓子を立てて遊ぶな!」
「遊びではない、立派な戦争だ。お坊ちゃんにはわからないだろうが?」
「あ?大悪魔(バアル)の俺が何をわからないだって!?」
最早本人達の悪口になっているが、このままだとまた図書館が全壊しそう。
(マジでやめて。)
すると、救世主のように本が光って、みるが帰ってきた。
「みーるー!!助けて!!」
「どうしたの?師匠。」
「むつぎとクロハネが本気の争いをしようとしているの!!」
「何で?」
「きのこ◯山と、たけのこ◯里を差し入れに持って来たら…」
「!!…師匠…何故そんな事を…。きのこたけのこ戦争と言えば、始まった時から今だに、絶対に終止符が打たれない、日本国最大級の内戦。例えどこかで勝敗が決まったとしても、必ずどこかでまた争いが始まる…終わりの見えない、収束する気配すら無い、まさに終末大戦なのに…。」
「みる!貴女の一言さえあれば、とりあえずこの争いは収まるわ!言って!貴女はどちらが良いの!?」
むつぎ・レフィール・ユリィの視線が、みるに集中する。
みるは、困惑しながらも、答えた。
「…別にどっちでもいい…。」
「「えっ…」」
「ち、ちなみに、みるの好きなチョコ菓子は!?」
「え?うーん…5円チョ◯とか、アポ◯とか。」
「そういうチョコオンリーじゃないヤツは!?」
「チョコ◯ーんぱん。長いのならトッ◯。」
「「………。」」
「で?その、きのこ◯山とたけのこ◯里は、食べていいの?」
「え、ええ…。」
「ありがとう、師匠!いただきまーす!」
みるは躊躇うことなく両方を1つずつ手にして、ポイっと口の中に入れる。
「うーん!どっちも美味しい!」
確かに彼女は、争いを終わらせた救世主だった。
結局、むつぎとレフィールは、黙って両方交互に食べている。
恐ろしく、哀しき争い。
だが絶対にどちらも負けを認めない。
それが、きのこたけのこ戦争。
「地球の日本人って、すごいわ…。」
終われ。
※みるの意見は作者の意見です。
今考えましたが、私はどれかと言えば、エ〇ーゼが好きですね。
でもどれが好きか!?と言われると、特別コレというお菓子系はありません。
ただ、作者は「あんこ」だけは大嫌いで食べたくありません。給食の桜餅や、いちご大福や、まんじゅうに何度涙したことか…。(何故か、ずんだ系は大丈夫。)
逆に洋菓子の生クリーム系大好きですが、生クリームがダメな方も居ますよね。
自分が美味しいと思う物を食べて、それを相手に押し付けないのが一番だと思います。
4/13、メルン。