「樹くん、桜花さんの話は聞いたわ。」
「えっ?聞いたのか?」
「私はね、自分が病気だから板垣くんと別れないと言っているんじゃないのよ。」
「うん。」
「私は大丈夫だから、桜花さんのところに行ってあげて。」
「えっ?いいの?」
「大丈夫よ。私には稔くんがいるから。」
「稔?そうか・・・彼なら、さゆみ を任せられる。」
「だから、もう、いいよ。」
板垣は さゆみ から許されたものの桜花の居場所が分かりませんでした。
そこで、以前同僚だった女性に聞くことにしました。
「本のことは知っています。本来なら、桜花に確認してからだと思いますが、私は彼女の幸せを願っています。彼女は実家の仙台に帰っています。これが住所です。」
「ありがとうございます。ボクは彼女を幸せにします。」
板垣が仙台に向かったのは光のページェントの頃でした。
街の街路樹が葉を落としたころに、電球を繋げて輝きを増すイベントです。
桜花は駅前のcafeに同級生から呼び出されました。
行ってみて驚いたのは言うまでもありません。
桜花を待っていたのは板垣でした。
「板垣さん?なぜここに?」
「桜花さんがここにいるとお母さんから聞きました。」
「ああ。婚約者さんは?」
「ああ、彼女には別の相手がいるから大丈夫です。」
「そうだったんですか。」
「ですから、ボクと結婚してください。」
「えっ?」
「一緒に絵本の続編を創りませんか?」
「は・・・い。」