それは蓮花にとって突然の出来事だった。
「愛していないって?どういうこと?じゃあ、何で今まで私と一緒にいたの?」
「楽だからに決まっているだろう。」
「えっ?それホント?本気で言っているの?」
「ウソつくかよこんなこと。」
「こんなことって・・・じゃあ、私と別れるのね?」
「そうだよ。バイバイ。」
「最低!そんな人だとは思わなかった。」
突然、拓斗が蓮花に別れを切り出したのには訳がありました。
◆
◆
◆
さかのぼること10年前、友だち同士のコンパで知り合ったのが二人の始まりでした。
「拓斗。お前さ、イケメンなんだから、彼女の二人や三人作ったらどうなんだ?」
「二人か三人って、簡単に言わないでくれよ。」
「お前さ、告白されたことあるだろう?」
「あ、あれか?断ったよ。」
「なんでだよ。あんなにいい女はめったにいないぞ?」
「俺が彼女の条件に合わなかったということだよ。」
「条件?高学歴・高収入・高身長のほかに何があるというんだよ?」
「家柄だよ。家柄が合わなかったら、どうしようもない。」
「何?もう、結婚のことを考えているの?」
「まあ、後々はそうなるかと・・・。」
「まだ、早いって。24才だろ?」
「でもさー。」
「でもじゃないよ。今度、コンパセッティングしたから、お前も来いよ。」
「えっ?俺はいいよ。」
「そう言うなよ、数合わせに行くと思えばいいのさ。」
「そうか、ただ行くだけだぞ。」
「そうか。参加するか。今日のコンパはレベル高いというから、期待していろよ。」
いやいや参加したコンパでした。
一方、蓮花の方も
「えっ?コンパ?私が?」
「蓮花、お願いよ。蓮花がいると男子が盛り上がるの。」
最初、乗り気では無かった拓斗と蓮花でしたが、同じグループのファンということを知って、話が盛り上がりました。
「○○最高だよね?」
「ですよね、今年のサマーフェスに行きましたか?」
「ああ、俺は仕事で行けなかったんだよ。」
「そうなんですか?最高でしたよ。」
「そうか、惜しいことをしたなあ。仕事辞めようかなあ。」
「あははは!仕事を辞めちゃってはダメですよ。そこは大人として。」
「盛り上がった二人でしたが最後の最後に水を差す発言を蓮花の友だち、みむら が言ってしまいました。
「やっぱりさ、いくら条件が良くても、実家がド田舎だったら、なしでしょう?」
蓮花は本当はそう思っていませんでしたが、雰囲気的に肯定しなければならない空気でした。
「そ、そうね、そうかもね。」
その瞬間、さっと拓斗の顔に雲が陰ったのに誰も気が付きませんでした。