零感霊能探偵は妖狐と共に 3

 依頼を終えて暫くのんびりとした日々を過ごしていると、また誰かが控えめに事務所のドアをノックした。三人は顔を見合わせたあと、いつも通り誠の気の抜けた返事が依頼者を招いた。その青年はキョロキョロと辺りを見回し、どこか落ち着かない様子で椅子に座る。不安げな表情の青年に、玉藻がお茶を出したところで、青年が口を開いた。

 青年はオカルト同好会に所属しており、幼馴染の三人とよく心霊スポットを見て回っているそうだ。とあるお化けトンネルに行った際、普段とは違う雰囲気を四人は感じ取った。いつも通りスマホで写真や動画を撮りながら、トンネルを歩いているとふと何かに足を取られ青年は転んだ。見れば白い手が幾重にも絡みつき、ずるずると引きずられてしまった。他の三人に助けられ、なんとかこうして無事ではいるが、それからというもの、足が痛んで仕方ない上に、その日出来たあざが日に日に悪化している、ということだ。

「神社やお寺に行こうかとも思ったんですが、心霊スポットに自分で行ったと言ったら、怒られそうな気がして……。それで、ネットでここを見つけて」

 興味深げに聞いていた誠が、痣、というのは? と問いかけると、青年は、これです、と裾をめくり青黒くなっている痣を見せた。しげしげと眺めた後、病院には? と誠が問いかける。青年は小さく頷いた。病院でレントゲンなども撮ってもらったが、骨に異常があるわけでもないし、かと言って捻挫しているわけでもない、原因がわからない、と言われたそうだ。痛々しい痣を眺めていると、梓が小さくうめいた。

「どうしたの? またなんか見えた?」

 誠が痣から梓へと目をやると、真っ青な顔をして梓が頷いた。梓の目には痛々しい痣を覆うように、悲鳴を上げる人の顔のようなものが見えている。一つ一つが苦し気に叫び声をあげ、時折もぞもぞと虫が這うように蠢いていた。

「依頼の内容としては、その痣を消せばいい、んですよね?」

 青年は何度も首を縦に振る、三人は顔を見合わせると、また青年の足へと視線を移した。青年が不安げな顔で三人を見回すと、誠が少しだけ待っていてください、と言って二人を連れ立って青年から少し離れた場所へと移動する。

「どう、タマちゃん、なんか憑いてる?」

 玉藻は一度青年を振り返った後頷く、誠がまぁあれはそうだろうねと頷き返すと、おずおずと梓が今さっき見えたものを、青年に聞こえないくらいの声で二人に伝えた。誠は目を見開き青年を振り返ると、不安げな視線で青年がこちらを見ている。

「一度そのトンネル、行ってみた方がいいよね?」

 誠の一言に梓の顔が引きつった、玉藻はそれを横目で見ながら、よほど危険な時は私が止めますから、行くだけ行ってみますか、と誠の提案を受ける。誠はなるべく平静を装いながら青年を振り返ると、お話だけでは原因を特定できないので、と前置きしてから青年の行ったトンネルへの行き方をたずねる。青年がトンネルへの道筋のメモを手渡した後、スマホの地図アプリを開くと、画面に映った地図を指さした。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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