零感霊能探偵は妖狐と共に 13

 依頼が来るまでの間ダラダラと過ごしていると、事務所のドアが乱暴にノックされた。誠が姿勢を正してから声をかけると、その女はぜぇぜぇと呼吸も荒く事務所に入ってくる。三人が顔を見合わせていると、女はドカッと椅子に座ると、三人を見つめ真剣な顔で話し始めた。

 女はとある小学校で教師をしている。学校といえば七不思議や怪談のオンパレードだが、女の勤める学校もまたその例にもれない。はじめどこにでもあるような七不思議のひとつだと思っていたソレが、実は本当なんじゃないかという噂が立ち始めた。その七不思議というのが、誰もいない校舎で階段を数えていると、普段は十二段の階段が一段増えていて、その十三段目を踏むと死者の国に連れていかれる、というものだ。ある日好奇心に駆られた生徒が、学校に忍び込みその階段を数えたところ、十三段目が現れていたのだという。その生徒は途中で引き返したため、十三段目を踏むことはなかったらしい。

「お話を聞く限りだと、どこにでもあるような、七不思議のひとつでしかないんですが……」

 誠が困ったように笑っていると、女は冷たい目で誠を見つめた。女の鬼気迫る様子に渋々依頼を受けると、女は日時と場所の書かれたメモを置いて、足早に去っていった。三人は暫く呆然と閉じられたドアを眺め、殆ど同時に深く重いため息をついた。

「それにしても、七不思議かぁ、梓ちゃんの学校にはあった?」

 誠が座っている椅子をクルクルと回しながら、梓に聞くとどうだったかなぁと梓は明後日の方を見た。誠は今も学校の七不思議ってあるんだねぇ、とどこか遠くを見ながらちらりと玉藻の様子を盗み見る。

「何か失礼なこと考えてませんか?」

 玉藻は誠の座っている椅子を掴むと、椅子に座る誠を見下ろした。いや、動く人体模型、と途中まで言って誠はハッとする、玉藻の目がぎらりと光りげんこつが降ってきた。そんな二人の様子を見て、相変わらずだなぁ、と梓がけらけらと笑っている。

「マコっちゃんの学校には、七不思議あった?」

 梓に聞かれ誠は明後日の方を見ながら、暫く記憶の糸を手繰っていたが、それもやがて放棄した。アラサーには思い出せないね、とため息をつく誠を見て、梓がいやまだまだ若いよと慌ててフォローをいれる。そう言ってくれるのは梓ちゃんくらいだよ、とまたどこか遠くを見る誠に、玉藻が私からすればまだまだ赤ちゃんですけどねと笑う。

「タマちゃんからしたら、百歳のおばあちゃんもおじいちゃんも、赤ちゃんでしょ」

 あら、また殴られたいんですか? と玉藻が見下ろすと、そんなはずないよね?! と誠が椅子から飛び降りた。拳を振り上げながら誠を追いかける玉藻と、必死な顔で逃げる誠を見て、どっちも子供っぽいけどなぁ、と梓が小さく呟いた。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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