零感霊能探偵は妖狐と共に 15

 誠と玉藻の二人がのんびりと話していると、梓が勢いよく事務所のドアを開いた。目を見開く二人をよそに、梓は何か興奮気味に自分のスマホを指さしている。二人は梓に落ち着くように言うと、依頼者用の椅子を指さした。

「ご、ごめん、つい、ね」

 呼吸を整えてから梓は話し始めた。最近ある動画サイトに投稿されている、見たら呪われるとある動画のことだ。梓が大学で授業を受けていたところ、友人の一人がその呪われた動画のことを話していたらしい。とはいえ、誰もが見れるわけではなく、とあるSNSのURLからとばないと、その動画を見ることができない。ある日その友達からメッセージが送られてきて、URLにとんだところその友人が、ある森へと入っていく動画を見てしまった。そして、その数日後、友人が行方不明になってしまった、ということらしい。

「助けてほしいの」

 一息で話し終えた梓は、二人の顔を見比べた。二人は顔を見合わせたあと、梓に件の動画を見せてもらえないかと頼む。すると梓は首を横に振った、その動画は友人が行方不明になった時に、どこかへと消えてしまったという。何度探しても、動画が見当たらないどころか、その送られてきたメッセージすら見つからないと涙ぐんでいる。

「いくら梓ちゃんの頼みでも、何も証拠がないんじゃなぁ」

 そう誠が唸っていると、梓のスマホが鳴った。梓は恐る恐るスマホを見ると、小さく悲鳴を上げた。慌てて二人が梓のスマホを覗き込む、見れば梓らしき人物が森へと消えていく動画がループして流れていた。梓が言うには、友人が行方不明になる前の動画も、これと似たようなものが映っていたらしい。と、なると、数日後に梓は何かしらに巻き込まれて、行方不明になってしまうのではないだろうか、不安げな梓を見ながら誠と玉藻は同じ不安を胸に抱いた。

「とりあえず、この森がどこか、場所を突き止めよう」

 誠の一言をきっかけに、三人はそれぞれ森について調べ始めた。動画に映っている数少ない手がかりから、この森が有名な心霊スポットの一つである、とある森じゃないかという結論に辿り着く。二人がさっそく森へと向かおうとすると、梓が青い顔をしてついてこようとした。梓を止める二人に、一人にしないで、と梓がまた涙ぐんだ。

「絶対に離れないでね、でも、危なくなったら、自分の身を一番に守って逃げてね、いいかい?」

 誠が真剣な顔でそういうと、梓は力なく頷いた。三人は誠の運転する車に乗って、早速森へと向かう。道中不安げな梓を二人で励まし、三人は何か不穏なものを覚えながら、ただ相手の安全を祈って車を走らせた。

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猫人

はじめまして、猫人と申します。映画鑑賞、小説を書く事、絵を描く事、ゲームするのが好きです。見たり読んだりするのはオカルト関連ですが、執筆するのはSFと言うなんとも不思議な事がよく起こっています。ダークだったり、毒のある作品が大好きです。

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