それから3か月が過ぎた。
後で分かった事だが、僕と夏樹は同い年だった事だ。
その影響からか君づけとちゃんづけに呼び方が変わった。
退屈な入院生活も夏樹ちゃんの影響で楽しくなった。
最初は黙々と本を読んでいようかと思ったが、最近は夏樹ちゃんと軽く会話しながら本を読むという事が多い。
僕は前に一度読もうとして挫折した三島由紀夫の金閣寺を読んでいた。
相変わらず文章が難しい。
対する夏樹ちゃんはライトノベルを読んでいた。
表紙が萌え萌えの表紙なのですぐに分かった。
「ねぇ春斗君。私達の関係と環境ってライトノベル風に書けない?」
と、夏樹ちゃんがニコニコしながら話しかけてきた。
「確かに題材はいいかもしれないね。後はどう表現するか次第じゃないかな。」
「私書いてみようかな。コンピューター持ってきて。」
「やってみればいいんじゃない?」
「うん!やってみる!」
と、夏樹はノートパソコンを家族に持ってきてもらって病室でカタカタと書き始めた。
「タイトル何にしようかな?」
「それと小説書くのなんて生まれて初めてだからどう進めていけばいいか分からないなぁ。」
「まずは何も考えないで書いてみたら?」
「タイトル決めた。余命僅かの二人。」
「そのタイトルだと分かりやすいけど直接的過ぎないかな?」
「もっとぼかした方がいいかもしれないよ?」
「そうかな?うーん・・・。」
「タイトル後回しにして文章から書くのもありじゃない?」
「それいいかも。」
「ノンフィクションの小説になっちゃうね。」
「若干脚色加えてリアリティー出すのもありじゃない?」
「私は病気を患っています。脳の病気です。とある時に同じ病で入院した男性と共同生活をしています。」
「出だしこうなったんだけど、どうかな?」
「もう~自分で考えなよ。」
「ごめーん。」
と、手を合掌し夏樹は春斗に頼りすぎたのを反省した。
それから夏樹は一人で黙々とノートパソコンで小説を書いていた。
「今どこまで進んでるの?」
と聞いても。
反応してくれない。
「ふぅ・・・」
と、夏樹は深呼吸をした。
僕は小休止でもしたのかと思ってこう話しかけた。
「どう?順調そう?」
「大方書き終わったんだけど、結末をどう表現しようか不安。」
「それに悲しいからこの通りになるのもなんだか嫌だなぁ。」
「そかそか。」
「春斗君の方は読書は順調?」
「ちょっと最近飽きてきた。」
「あはっ。そかそか。」
その4へ続く。