「ハロハロー♪山崎君。元気してた?」
どうやら、彼女・・・、そう遥の最初の一文はこの様な表現らしい。
彼女は学業も運動もできる文武両道でクラスの皆からも人気があったのを覚えている。
私は彼女にずっと好意を持っていたのだが、彼女も持ってくれていたのだろうか。
しかしながら、引っ越してまでも手紙のやりとりをするということは、最低限好意は”持っていた”と判断するのが正しいだろう。
「急に引っ越す事になってごめんね。父が北海道に転勤になってしまって引っ越す事になったんだよね」
「あれは何歳の頃かな?気づいた時には私達は幼い頃からずっとずっと一緒だったよね。」
「あれは覚えている?私が駆けっこしていて、思い切り転んじゃって足に怪我した時」
「あの時山崎君。ずっと私をなだめてくれていたよね。」
「凄く助けられたんだよ。」
「それに凄く嬉しかった。」
「山崎君の優しいところ好きだよ☆」
「なんか照れるなあ^^;。」
「山崎君が良い中学校生活を送れますように。願いを込めて。」
「またお手紙書くね。」
これが一通目の手紙だった。
遥は私に好意をどの程度持っていたのか。私の事を案じてくれていた事に私は嬉しさを覚えた。
しかし、何故文通が途切れてしまったのだろう。
他に意中の男子でもできたのだろうか。
その理由を知りたくて今北海道に向かっているのだが・・・。
飛行機に乗るのは実は初体験だ。
離陸する時に身体全体に重力がかかるあの感触は忘れられない。
離陸と共に窓から景色を見ていたのだが、遥から貰った手紙が気になり一通目を読み終えた。
私はこの返信に何て書いたのだろうか。
あれから二十年近く経っている今となっては、部屋のプリンターで簡単にコピーを取る事ができるが、当時はプリンターが各家庭にある時代ではないのでコピーを取れない。
そこが今更ながら歯がゆいと感じた。
飛行機は上昇している状態から水平状態になり、航行が安定してきた。
窓から差し込む太陽の光が下に広がる雲海に当たりとても綺麗に見える。
時折、雲の合間から海が見えた。
今私がどれ程高い地点を飛んでいるのかが窺がえた。
そこで私は二通目を読むことにした。
その4へ続く。