「ふーん、あなたが噂の「M」ね…。確かに噂通り仕事出来そうだけど…地味ね」
「…」
家主はMの容姿を見て馬鹿にするような感じに言ったが、Mは少しイラついたが反論しても無駄だと感じ、無視をする。
「それはそうと、依頼品は感謝するわ。…じゃあ、今度は私から色々質問させてね」
「…質問?」
「ええ、あなたは私の姿を見てどう思う?」
家主はMに対し、自分の容姿の事を聞き始めた。
簡単に説明すると、「質問」というのは裏稼業において依頼主が相手を見定める時にする事、いわゆる「面接」だ。
相手が気に入るような事を返答するというのは普通の面接と同じだが、違うところもある。
それは、「ご機嫌を取ってばかりではダメ」という事だ。
相手の機嫌を取るためにペラペラと良いことばかり言っていたら失敗し、消される。ただし悪いことばかり言っても場合によっては同じ結果だ。
「頭いかれてるとしか思えない色のセンスと気持ち悪いほどのこだわり、「地味」な私からしたらさっぱり理解出来ねぇな?」
Mは思った事と家主に言われた言葉を使い、正直にそう言った。
「…ふーん」
家主はニヤリと笑みを浮かべ、Mの顔を見る。
すると、自分の履いていた下着をMにはらりと投げつける。
「あなた、気に入ったわ。仕事をキッチリとこなす様、その反抗的な態度。私の元で働きなさい」
「断る」
これで承諾すればどこにも所属せず、フリーで仕事を請け負っているMにとって良いことがあると思うが、人に自身の下着を投げつけるようなセンスがずれている奴の下で働きたくなかった為、どんな良い条件があったとしても家主の話は何がなんであろうと元から断る気でいた。
Mは家主にそう言い残すと部屋を出ていった。
「…ふーん……。ふ…ふふ…あーははははははは!面白い!彼女とても面白いわね!レイラ!彼女を存分に楽しませてあげなさい!やり方はなんでもいいわ!」
「かしこまりました」
家主はメイド「レイラ」に頬を染め興奮しているかのように笑いながらそう告げた。
依頼を済ませたMは腕時計を確認すると、時刻は21:30を指していた。
一時間以上もあんな屋敷にいたのかと思うとさらにイラつきを強く感じる。
珍しく依頼のないMは自宅のあるドイツへ車を走らせ、くそみたいな依頼を入れたロゼレムにクレームを入れてやろうと電話を掛ける。
「あら、あなたから電話なんて珍しいわね。観光は楽しめたかしら?」
「ああ、楽しめたさ。嫌というほどな」
「ふーんそれは残念。けど、いいもの見たでしょ?派手好きで馬鹿みたいにプライド高くて…イタリア人らしい子よね、あの子」
「そうだな。お前の依頼のお陰で今日一日でイタリアとイギリスを一気に観光した気分だよ」
「そう、ならよかったじゃない。けど気をつけなさいね。彼女の依頼やら色々断ると後が怖いらしいわよ。まあ、あなたなら大丈夫だろうけど、もし死んだら葬儀には出てあげるわ。じゃあ、私は明日早いから寝るわ…」
冗談混じりな通話を続けていると、ロゼレムはそう言い残し電話を切った。
solitario: chapter1.The Fall of the Princess「3.Troublesome Requests②」
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