#19 カンタ君逃亡劇

前回の話

いつからだろう…私の人生が壊れていってしまったのは………………

普通の裕福な家庭で、それなりに楽しく暮らしていたのに、私の人生をどん底に突き落としたのは他でもない母の行いだった……………。
それは、まだうちに父がいたときのこと…………
父は仕事で帰りが遅く母は寂しさを感じていた。私もまだ幼く、料理を手伝ったりするくらいしかできなかったけど…ある日、平和な家庭は崩壊していった………

我が家には“家のルール”は特に何もなかったのだけど、母の寂しさから家族3人週1で出かけることになっていた。父は仕事が忙しかったけど、日曜は必ずお休みで私も小学生だったからお休みで、みんな毎週日曜は、楽しみにしていて我が家でのちょっとしたイベントになっていた。
でも…ある日………………

来月からわが社の大きなプロジェクト計画に携わることになった。数か月ほど休みがない…だから、日曜に家族で出かけることもできなくなる

どういうことよ?日曜は休みだったんじゃないの???

これも仕事だ

私達、家族のイベントはどうなるのよ??

だから、休みがあるまで待っててくれって言ってるだろう?

待てないわよ!数か月っていつよ?!

わからん。連絡が入ればお前にも教えるから

なんでよ!上司に掛け合って、また日曜休みにしてもらってよ!

お前たちのためなんだぞ!!!!

父の休みがなくなって母は益々寂しさを堪えきれなくなり、働かずにあるものに夢中になっていた。それは私と一緒にスーパーに買い物に行ったときのこと。
怪しい男に一枚のチラシを配られ、内容を見ると怪しげな文面と連絡先が書かれていた。

VISUAL 歌舞伎町にあるホストクラブだった。
それから、母はそこのホストクラブに行くためにコンビニで働いてお金を貯めて
家庭の生活費などには一切使わず、ホストクラブに貯めた貯金を使い果たした。
私は、1人で家事ができるようになっていたのでお留守番にも慣れたし1人での食事にも慣れた…けれど、父も母も夜遅くまで帰ってこない。そして家族としての会話が前より一段となくなって………母が急に働いたことと夜に外出していることを怪しんだ父は母の後をつけていくようになった……。
そこで事件は起き、母と父は離婚。私をどっちが引き取るかで揉めたみたいだけれど母が私を引き取ることになって…1年が過ぎる。

家の電気は止められて、冬になるまでに生活費を払うことができなければ
アパートを追い出されることになった。母は、自分がこれまでにしてきた悪態をやっと反省し、借金を返すから私にも手伝ってほしいと言われ、必死で探して…
中学生を雇ってくれるお店なんかないと思ってたけど…
事情を聴いて週4で雇ってくれる老夫婦のお店で特別として働くことになった。
それでも貯まった貯金額は100万にも満たない。まだ40万ちょっとだった…………。母の借金額は300万。あるホストを毎回指名して、稼いだお金を使う………でも、それで家に住めなくなったら終わり。
私には関係ないけれど父もどこに住んでるのか分からないし頼れる人なんていない。これが、私の人生なんだってひしひしと感じていた…………

そんなとき、テレビで流れた大ニュースを偶然目にする。
ある少年を傷つけず、殺さず、情報をばら撒いた人のもとへ連行すれば100万の賞金が手に入るというカンタンなゲームだった。

母の借金は300万だし、上限額を埋めることにはできない。諦めてほかの策はないかと探していたら……懸賞金の額が徐々に上がっていって100万だった賞金は500万に変更されていた。
これなら、借金を返せる!!そう思って参加者にはなったけれど、対象の少年とは何の関係性もないので近づく手段を考えていなかった。
見たことのある制服だったから、うちの中学校で間違いないんだろうけど……
名前も顔もテレビで初めて知ったから同じ学校でも会ったことも話したこともない…………。そんな他人にいきなり近づいて懸賞金を強請って不審に思われないかな・・・・・・??なんとか、話しかける切欠を作らないと……
私はそう思って、少年の情報が入ったらすぐ近くの距離に行けるように情報を素早く手に入れた。でも、なかなか見つかることができなかった……。

情報収集を少し怠っていたら、駅のホーム画面にあの人が映り込んだ。内容は、ナンバーという役職があってナンバーになると少年に近づける手掛かり。イチかバチか、ナンバーに賭けてみたら天は私を応援してくれてるようで……。

1121

きた!!!
私の生年月日が発表され、私はナンバーになった。でも、ナンバーになってからのデメリットもあったけど不思議と怖くなかった。私の命がなくなっても、構わないと思ったから……。
この、“借金返済”という生き地獄からいち早く抜けたい!!借金を返せれば、あと私はどうなってもいい……。いまの暮らしを続けて贅沢も何もできないこの貧困生活から脱却したい!!!!!私には夢も目標も何もないから、借金さえ返せればやり残したことも何もなくなる……。

それからは、少年の“姫路幹汰君”を情報の通りに進んで見つけることに時間を費やした。デマの情報もあり、なかなか見つからなかったけど…。
どうやら1人ではなく仲間(?)と一緒にいるらしい……。金髪の少年とピンクの女の子がいるみたいで、どこに屯っているのか辺りを見渡して探していると情報通りの容姿の子たちがいて……何やら深刻な話をしているようだった。
いまがチャンスだと思った……。一瞬でも入れる隙を狙って…。私は思い切って話しかけてみた。ここがスタート……500万を手に入れて実りのある生活に戻るんだ!!!

500万の懸賞金を懸けられた姫路幹汰君?

お金さえ手に入ればいい、この底辺な人生から脱却するために利用できるものは利用させてもらうわ…。

第20話へ続く

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水樹

最初に絵を描き始めたのは小学生の頃でした。 それから、自分の世界観を文字におこしたり、絵にするのが趣味になっています!!

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