午前4時辺り
あの出来事から数時間が経ち、Mは紙の裏側に書いてあった地図の場所へとタクシーで移動していた。
ノイズ混じりのラジオから流れてくる自動車爆発のニュースなどに耳を傾けながら、レイラに再び会った時どう復讐してやろうかと考える。
「お客さん、着いたよ」
「ああ、ありがとう」
Mはタクシー運転手にそう言われると、タクシー料金と1万円ほどのチップを渡しタクシーを降りた。
タクシー運転手は最初そんな受け取れないとフロントウインドウから顔を出しながら断ったが、Mはいいから…と言いタクシーから離れると、運転手は仕方なさげに車を走らせる。
今いる場所はイタリアの「ノーチ」というところで、「マルティナ・フランカ」から少し近い場所に位置している。
Mは辺りを警戒しながら紙に書かれている電話番号に近くにある公衆電話で電話をかける。
「生きてたみたいね」
「…お前は何がしたいんだ?」
「ん?どうしてかしら?」
「あんなことするんなら普通はメモ書きなんて残さねぇし、親切に目的地も書いてあるから違和感を感じたんだ」
「ふーん…あなたやっぱ頭良いわね。けど、こんな形で話すのめんどくさいから直接話しましょ?右を見れば分かるわ」
Mはレイラの言う通り右側を見ると、40mほど先に路駐された見覚えのあるDBX707と服装の人がこちらに手を降っているのが見えた。
「ほら、いった…っ」
レイラが煽りながら話している途中でMは「はぁ…」と重くため息をつき、ガシャンと近くを歩く人に聞こえるぐらいの力で受話器を乱雑に置く。
「なにそんなに怒ってるのよ?」
「そりゃあ…車を爆破して殺そうとしたやつがへらへらと近くにいるからだろ…。んで、なんの用だよ…。家主の子守りはいいのか?」
「時間がないから簡単に説明するわ。家主「エルヴィーラ」様にお仕置きをしてほしいの」
「…は?」
Mはレイラに何か言い返してやろうと思っていたが、予想してなかったワードが突然出てきた為、一瞬フリーズした。
レイラの説明はMの事を無視するように続き、エルヴィーラはありとあらゆる手段を使い、数々の会社を自身の子会社化していき現在の立ち位置にまで登りつめたが、ここ最近今まで以上に彼女の強欲さが強くなり、何とか制御出来ていたレイラでさえ制御しきれなくなっていた。
そのためにレイラは何日もかけてエルヴィーラが眠っている間に良さげな人を探していたが見つからず、最終手段としてMによく依頼をするロゼレムへ手紙を書いた。
それがMの手に渡り、現在に至る。
「…ふーん…なるほどな…」
「報酬はいくらでも渡すわ」
「いらねぇよ。本人から搾り取るから…。その代わり、何やってもいいんだよな?」
「ええ、殺す以外でね」
「うっし、乗った。じゃあ早速行こうか」
Mはレイラへそう言い、車を出すように促した。
「何やってもいい」と言われたMにとって、時間を無駄にされ、馬鹿にされ、挙句の果てには仕事道具の車まで爆破された怒りを全てぶつける良い憂さ晴らしになると思った。
solitario: chapter1.The Fall of the Princess「5.Additional cumbersome requests」
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