朝、一通り身支度を整え終えて、リビングでぼうっとテレビを見ていた。いつも通りの朝、いつも通り下らないバラエティー、そしていつも通りとはいかない隣に座る幸を横目で見て、はぁと深いため息をついた。
「今日はどこ行く?」
どこと言われてもね、ため息混じりに返すと、せっかくの夏休みなんだから、遊ぼうよ、とニコニコと笑い返されてしまった。個人的に、夏休みは家でゴロゴロしたい、せっかくの休みに休めないなんて嫌だ。とはいえ、始めの一週間くらい、遊びに出かけるのも悪くはない、か。ふとテレビで、夏の行楽スポットや、イベントの映像が流れる。
「そういえば、見たいと思ってた映画があったな」
俺の一言に幸がぱぁっと目を輝かせる。じゃあ見に行こ、私準備してくる! とバタバタと慌ただしく走っていった。……どうせなら、多めに財布に金を入れておこう、服とか買っとかないとだし。まだ帰ってこないのを確認してから、一度俺も自室へと向かった。
準備を終えて玄関のドアを開けて数秒で帰りたくなる、夏の暑い日差しが容赦なく照り付ける中、ショッピングモールに向かうため、最寄りの駅へと歩き出した。
「ほんと、あっついねぇ」
片手で日差しを遮りながら、すっと太陽に目をやって幸が呟いた。ほんとにな、と汗をぬぐいつつ返す。昔はもっと涼しかった気もするが、この頃いきなり暑くなってきた。しかも夏の期間も伸びてきたし、夏休みさえなかったら夏が一番嫌いかもしれない。
そうやってああでもないこうでもない、と話しているとようやく駅へと辿り着いた。幸は持ってきていたバックから財布を取り出すと、目的地であるショッピングモールへの駅を、駅にある路線図を見上げ指さし確認しながら切符を買っている。ICカードでさっさと改札を抜けると幸を待っていると、少しもたついたが改札を抜けれたようだ。
ガタゴトと揺れる車内で、ぼぉっと乗客を観察する。夏休みということもあってか、家族連れやカップル何かが多いように思える。もしかしたら、周りからしたら、俺らも友達かカップルにでも見えてるんだろうか? 人と感情の見分けなんかつかないし、きっとそう見えててもおかしくはない。なんか変に意識してしまう、平々凡々の見た目の俺と違って、幸は結構可愛い部類に入ると思うし、あまり吊り合ってるとは思えない。
「また怖い顔してるよ、ほらほら~笑って笑って!」
幸が俺の口角を人差し指で無理に引き上げる、やめろよ、と割と本気でその手を払いのけると、周りからクスクスという笑い声が聞こえてくる。はっと周りを見渡せば、俺らを見て何人かの乗客が笑っている、かぁっと顔が熱くなるのは、夏の暑さのせいだろう、きっと。