ふと目が覚めた、ベッドから起き上がり、窓際によってカーテンを開ければ、清々しい青空が広がっている。時計に目をやると、短針は既に七時を指していた。もう両親は出かけただろうか、幸はまだ寝てるんだろうか、大きく伸びをして欠伸をひとつした。
「折角早起きしたし、散歩にでも行くか」
一通り身支度を済ませて早速散歩に出かける。久々に一人ってのもあって、なんだかしっくりこない。この頃はいつも隣に幸がいたからか、一人だけだと静かすぎてなんか落ち着かない。まだアイツと出会って一週間も経ってないのに、もうそれだけの存在になってたのか。やっぱりアイツも呼んでこようか、いや、でも寝てるとこ起こすのも悪いしな。
「まぁ、いいか」
よく言えばのんびりと、悪く言えばダラダラと散歩していると、見慣れた公園にたどり着いた。ジョギングやランニングをしてる人らと、ご老人くらいなもんで俺くらいの年の奴はいなさそうだった。少しほっとして、朝の空気を思いっきり吸い込む。
「やっぱり暑いな」
冬の冷たく澄んだ空気とは違い、どこか湿気た夏の空気に少しウンザリする。夏の青々とした木々をぼんやりと眺めながら歩くと、見知った顔を見つけ思わず駆け寄った。
「お前、どうしてここに!?」
公園の入り口で辺りを見回していた幸に声をかける。君が行くとしたらここかなって、と笑っているのを見て、思わずはぁとため息をついた。来ちゃダメだった? 不安げに顔を覗き込んでくる、別に悪くはないけど、ともごもごと口ごもった。
「よかったぁ! それにしても、まさか君が一人で行っちゃうなんて」
何で私も誘ってくれなかったの? と聞かれ、いやほら、起こすのも悪いかな、ってと頭を掻く。一人で出かけられる方がやだよぉ、と幸は頬を膨らませている。
「久しぶりに一人になれるかと思ったのに」
わざとらしく肩を落としてみせると、やっぱり私どこか行こうか? と慌てている。うそうそ、なんてニヤリと笑ったら、また頬を膨らませそっぽを向いた。しばらく公園内をぐるりと歩いた後、ベンチに座ってぼうっと公園内を眺める。
「また前みたいにどっか行かないでね!」
隣に腰掛けた幸が、じっと俺を見つめて言った。お前が余計な事言わなきゃな、とじろりと睨んだ。だ、だって! と何か言おうとしている幸に、そういうとこだぞ、と突っ込む。ふと奥の方にいつもの絵を描いてる人を見つける、幸も俺の視線に気付いたのかその人へと目をやった。
「あの人、またいる」
声、かける? 幸がすっと俺へと視線を移し聞いてきた。俺はしばらく考え込んだ後、首を振る。集中してるみたいだし、なによりも見知らぬ人に話しかけられるのは、あまりいい気がしないだろう、俺だったら声をかけられるのは嫌だ。
「それにしても、静かだね」
町中にあるとはいえ、広い公園だからな、辺りを見回している幸にそう返すと、公園って私遊具のイメージしかないなぁ、とどこか照れたように笑っている。
「公園にもいろいろあるからな、この年で遊具で遊んでたら大分やばいぞ」
子連れじゃないんだし、と付け加えると、それもそうだね、と笑っている。ベンチから立ち上がり大きく伸びをすると、ゆっくりとした足取りで公園から出ていく。朝の散歩を終えて、いったん家に戻ることにした。